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 小田原法務司法書士事務所   (簡裁訴訟代理関係業務法務大臣認定司法書士)
   
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  当事務所は借金の整理(債務整理)を積極的に扱っている司法書士事務所です。

          


       よくある質問(Q&A)   


      ここでは、「借金の整理を考えている人」や「過払い金の返還請求を考えている人」の中から、よく質
     問される点について、「一問一答(Q&A)」の形式でお答えします。
         
      なお、この「一問一答(Q&A)」に記載されていないものに関してご質問がお有りの方は、当事務所

     のを御利用下さい。



            1、「自己破産についてよくある質問(Q&A)」
    
            2、「個人民事再生についてよくある質問(Q&A)」

            3、「任意整理についてよくある質問(Q&A)」

            4、「過払い金についてよくある質問(Q&A)」



                    


 1、「自己破産に対するよくある質問(Q&A)」


        
 Q1 自己破産はどのような場合にできるのですか?
    
 Q2 自己破産をすると、全ての財産を失うことになるのですか?
  
 Q3 自己破産をすると、全ての借金の支払責任が免除されるのですか?
   
 Q4 自己破産をすると、いつから借金を返済しなくてよくなるのですか?
   
 Q5 自己破産の手続は、失敗することはないのですか?
   
 Q6 自己破産の手続は、どのくらいの期間がかかるのですか?
     
 Q7 自己破産をすると、戸籍・住民票・免許書などに記載されるのですか? 
    
 Q8 自己破産をすると、選挙権がなくなるのですか?
     
 Q9 自己破産をすると、資格が制限されるのですか?
     
 Q10 自己破産をすると、住所を移転したり、海外旅行をすることができなくなるのですか?
     
 Q11 自己破産をすると、現在住んでいる賃貸マンションや賃貸アパートから出て行かなければならない
     のですか?
      
  Q12 自己破産をしたことは家族や世間一般の人に知られてしまいますか?
     
  Q13 自己破産をしたことは会社に知られてしまいますか?
     
 Q14 自己破産をしたことを理由に会社は従業員を解雇できるのですか?
      
 Q15 自己破産をすると、代わりに家族が支払わなければならないのですか?
  
 Q16 自己破産をしたことが子供の進学・就職・結婚に影響しますか?
    
 Q17 自己破産をすると、家族も借り入れができなくなるのですか?
    
 Q18 ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費によ
     る借金がある場合(「免責不許可事由」がある場合)でも自己破産はできますか?
    
 Q19 住宅を所有しているのですが、自己破産をすると処分しなければならないのですか?
      
 Q20 自動車を所有しているのですが、自己破産をすると処分しなければならないのですか?
     
 Q21 生命保険は自己破産をすると解約しなければいけないのですか?
      
 Q22 退職金は自己破産をするともらえなくなるのでしょうか?
      
 Q23 年金は自己破産をすると受給できなくなるのですか?
      
 Q24 携帯電話は自己破産をすると使えなくなるのでしょうか?
     
 Q25 自己破産をした後は、永久に借り入れができなくなるのですか?
      
 Q26 自己破産をすると、保証人にはどのような影響が及ぶのですか?
      
 Q27 自己破産をした後に、貸金業者が嫌がらせをしてきたり、しつこく請求してきたりすることはない
     のですか?
      
 Q28 自己破産をする前に、家族や友人に対する借金だけを返済することはできますか?
  
 Q29 自己破産は、自分一人でできますか?      
  
 Q30 自己破産をするための費用はどのくらいかかるのですか?      
  

        

Q1  自己破産はどのような場合にできるのですか?
 
 自己破産をすることを裁判所に認めてもらうための主な条件は以下のとおりです。
(1)申立人が「支払不能」の状態に陥っていること
(2)申立人に「免責不許可事由」がないこと、又は、「裁量免責」されること

 この2つの条件を簡単に説明しますと、
(1)申立人が現在負担している借金を返済できるだけの資力がなく、また、近く入手できる見込みがないこと
(2)ギャンブルや浪費による借金などの借り入れた理由に問題があったり、裁判所に対して事実に反することを報告するなどの法が定める「自己破産をしても借金の支払責任を免除することが許可されない事由(免責許可事由)」が申立人にないこと、又は、それらの「免責不許可事由」があっても裁判所の裁量によって借金の支払責任を免除してもらう決定(裁量免責)を下してもらうこと
 ということになります。
 
 なお、この2つの条件の詳細については
「自己破産・4、自己破産が認められるための条件」を参照して下さい。

     
Q2  自己破産をすると、全ての財産を失うことになるのですか?

 自己破産をしても、全ての財産を失うことにはなりません。
 以下の「@〜E」などの財産は、原則として自己破産をしても失うことはなく、そのまま所有することができます。

 @ 日常生活を維持していく上で必要な家財道具(テレビ、冷蔵庫、衣料品等。但し、高額なものは除く。)
 A 金20万円以下の財産(金額は時価額で算出)
 B 金99万円に満つるまでの現金
 C 退職金の4分の3以上(場合によっては、退職金の全額)
 D「@〜C」以外の財産で、生活上不可欠なものであることなどの理由により、そのまま所有することを裁
  判所が特に認めた財産
 E 自己破産の手続が開始された後に申立人が取得した給料・財産
 
 
つまり、自己破産をしても、日常生活に支障が生じるまでに財産を失うことはないということです。

    
Q3  自己破産をすると、全ての借金の支払責任が免除されるのですか?

 自己破産をすると、貸金業者に対する借金などの全ての支払責任が原則として免除されることになります。
 但し、以下の「@〜F」などについては、自己破産をしても、支払責任を免れることはできません。

 @ 税金等の公租公課
 A 破産者が悪意をもって加えた不法行為に基づく損害賠償債務
 B 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償義務
 C 養育費・婚姻費用・扶養義務等
 D 従業員に対する給料の支払義務等
 E 破産者が故意に裁判所に届け出なかった借金等
 F 罰金等

 
    
Q4  自己破産をすると、いつから借金を返済しなくてよくなるのですか?

 「貸金業の規制等に関する法律」は、本人が自己破産の申立て(裁判所に申立書を提出すること。)をして、その旨の「通知」が裁判所から貸金業者になされると、それ以降は貸金業者が自己破産をした本人に対して正当な理由もなく電話・FAX・訪問等による直接的な取立行為をすることを原則として禁止しています。
 また、「貸金業の規制等に関する法律」は、本人が司法書士や弁護士に借金の整理を依頼した場合には、自己破産の申立てを待つまでもなく、司法書士や弁護士からの「介入通知(依頼を受けた旨の通知)」が貸金業者になされた時点から、貸金業者が本人に対して正当な理由もなく電話・FAX・訪問等による直接的な取立行為をすることも原則として禁止しています。
 なお、「貸金業の規制等に関する法律」は、貸金業者が裁判所からの「通知」や司法書士などからの「介入通知」を無視して正当な理由もなく借主に電話・FAX・訪問等による直接的な取立行為を続けた場合には、「1年以内の業務停止の処分」又は「登録の取り消しの処分」という「行政処分」や「2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」という「刑事罰」の対象となることを定めています。
 
以上のことから、自己破産の手続が成功して終了することを待つまでもなく、裁判所からの「通知」や司法書士などからの「介入通知」が貸金業者へなされた時点から貸金業者からの取り立ては通常止まりますので、その時点から「事実上」借金の返済をしなくてよくなります。

(注)「十日で一割、十日で三割」などと違法に高額な利息を徴収したり、「脅迫」めいた取り立てをしている未登録の貸金業者(いわゆる「ヤミ金融」と呼ばれるもの)は、そもそも法律を守って営業を行う意思がないため、裁判所からの「通知」などを平然と無視して「違法」に取り立てを続けることがしばしばあります。よって、そのような「ヤミ金融」から借り入れがある場合には、司法書士や弁護士などの専門家に依頼したり、警察に相談して、取り立てを止めさせるための法的手段を別にとる必要があります。

 
    
Q5  自己破産の手続は、失敗することはないのですか?

 自己破産の手続も「裁判手続」である以上、最終的には裁判所が判断することであり、絶対に成功する手続とはいえません。よって、事案によっては失敗することがないわけではありません。
 但し、自己破産という制度は、返済不可能なほどに借金を抱えてしまった人を救済し、人生の再出発をするための機会を与えようとする制度です。
 また、仮に、自己破産が認められなかった場合、その認められなかった人は、依然として返済不可能なほどに借金を抱えて生活をしなければならず、結局のところ、夜逃げをするか自殺をするしかなくなってしまいます。
 
そこで、多くの裁判所は、自己破産という制度の意義を尊重して、広く自己破産を成功させる方向で審理をして判断を下しています。
(なお、平成15年に自己破産の申立てがなされた事件の中で「免責許可の決定」が下されなかったのは、全体の0.1%未満です。つまり、99.9%以上の確率で自己破産の手続は成功しているということです。)
 
 
なお、裁判所に自己破産することを認めてもらう上で最も重要なことは、自分が返済不可能なほどに借金を抱えてしまったこれまでの「生活態度」等を真剣に反省して、そして、裁判官を含めた周りの人たちに対して最後まで誠実な態度をとり続けることといえるでしょう。
  
    
Q6  自己破産の手続は、どのくらいの期間がかかるのですか?

 自己破産の手続が終了するまでの期間については、各裁判所の方針や個別的な事案によって異なりますが、一般的には、
@ 「管財事件」の場合には、裁判所に申立てをしてから「約6ヶ月〜約1年」の期間、
A 「同時破産廃止事件」の場合には、裁判所に申立てをしてから「約4ヶ月〜約6ヶ月」の期間
を要するといえるでしょう。

 なお、「管財事件」と「同時破産廃止事件」の詳細については、
「自己破産・3、自己破産の手続の流れ・期間」を参照して下さい。
 
      
Q7  自己破産をすると、戸籍・住民票・免許書などに記載されるのですか? 
 
 そのようなことは全くありません。そのような心配をする必要は全くありません。
 世間一般では「自己破産」をした場合のデメリットに関して誤解されていることが多く、このような誤解はその典型的な例の一つといえるでしょう。

     
Q8  自己破産をすると、選挙権がなくなるのですか?
 
 そのようなことは全くありません。そのような心配をする必要は全くありません。
 世間一般では「自己破産」をした場合のデメリットに関して誤解されていることが多く、このような誤解はその典型的な例の一つといえるでしょう。
 
      
Q9  自己破産をすると、資格が制限されるのですか?

 
自己破産の手続中は一定の資格や法律上の地位に就くことが制限されることになります。
 制限される資格や法律上の地位としては、弁護士・司法書士・税理士などの士業、宅地建物取引主任者、生命保険募集人、旅行業務取扱主任者、警備員、後見人、補佐人、後見監督人などがあります。
 但し、自己破産の手続が問題なく終了し「免責決定」が確定した場合には、これらの制限はなくなることになります。

 なお、医者や看護士、特別な職種を除く公務員については、自己破産をしても制限されることはありません。

      
Q10  自己破産をすると、住所を移転したり、海外旅行をすることができなくなるのですか?

 「管財事件」の場合には、居住地を変更したり、長期間に渡る海外旅行をする場合には、裁判所の許可を要することになります。
 (但し、この制限は、破産手続の期間中(破産手続開始決定から破産手続の終了までの間)に限ります。)
 
 「同時破産廃止事件」の場合には、以上のような制限はありません。

 なお、「管財事件」と「同時破産廃止事件」の詳細については、「自己破産・3、自己破産の手続の流れ・期間」を参照して下さい。


      
Q11  自己破産をすると、現在住んでいる賃貸マンションや賃貸アパートから出て行かなければならないのですか?

 自己破産したことだけを理由として、家主が不動産賃貸借契約を解除し借主に立ち退きを求めることは法律上許されていません。
 従って、自己破産をしても、
家賃を滞納しているなどの特段の事情がない限り、現在住んでいる賃貸マンションや賃貸アパートにそのまま住み続けることができます
 
 なお、自己破産をすれば家賃の支払責任も他の借金の支払責任と共に免除することができますが、家主から賃料の不払いを理由として不動産賃貸借契約を解除され借主に立ち退きを求めることは法律上認められています。
 よって、自己破産をした後も
現在住んでいる賃貸マンションや賃貸アパートにそのまま住み続けたいならば、不動産賃貸借契約が解除されないようにきちんと家賃を支払い続ける必要があります。
 
       
Q12  自己破産をしたことは家族や世間一般の人に知られてしまいますか?

 自己破産をしたことが世間一般の人に知られる可能性は基本的にはないと考えてよいとおもいます。
 強いて、可能性があるものを挙げるとすれば、「官報」(国が情報を公開するために発行している新聞のようなもの)というものの存在が一応は挙げられます。
 この点について具体的に説明しますと、自己破産をした場合、手続に関する情報が「官報」に掲載されることになります。
 しかし、世間一般の人が「官報」を見ることは「通常」考えられませんし、また、そもそも、世間一般の人は「官報」というものの存在すら知らないのが「通常」であるとおもわれます。
(なお、 「官報」は随時発行されているものですし、1回の「官報」には何人もの自己破産をした人の情報が同時に掲載され、また、自己破産に関する情報は「官報」の掲載内容の一部分に過ぎません。)
 よって、「官報」をとおして自己破産をしたことが世間一般の人に知られてしまう可能性も「通常」考えられないといっていいでしょう。

 但し、自己破産をする場合、裁判所に提出する書面として、毎月の家計表や同居の家族の収入等を明らかにする書面など、家族の協力を得られないと提出することが困難なものがあります。また、自宅に裁判所や貸金業者から自己破産をしたことに関する通知などが届くこともありえます。
 よって、同居している家族に知られずに自己破産をすることは不可能というわけではありませんが、長期間に渡って相当の困難を伴うことが予想されます。

 
裁判所に自己破産をすることを認めてもらう上で最も重要なことは、自分が返済不可能なほどに借金を抱えてしまったこれまでの「生活態度」等を真剣に反省して、そして、裁判官を含めた周りの人たちに対して最後まで誠実な態度をとり続けることです。
 そのことを実践する始めの一歩として、自己破産をすることをきちんと家族に説明し、協力してもらうことをお勧めします。


      
Q13  自己破産をしたことは会社に知られてしまいますか?

 まず、自己破産をしたことが会社に知られてしまう可能性については、「世間一般の人に知られる可能性」(「Q12」参照)と同様に考えてよく、基本的にはないと考えていいと思います。
 但し、自己破産の申し立てをする際には、申立人は全ての債権者(借入先等)の名称・所在地等を裁判所に伝えなければならず、そして、裁判所は自己破産の手続が適正に行われているかなどを確認するための機会を債権者(借入先等)に与えるために、全ての債権者(借入先等)へ自己破産の手続が開始されたことなどの通知書を送付します。
 従って、会社から借り入れがある場合には、裁判所から会社へ通知書が送付されることになりますので、自己破産をしたことが会社に知られてしまうことになります。

 なお、会社から借り入れがあるが、どうしても会社に自己破産をすることを知られたくない場合には、会社からの借金を申立人の親族や知人などの「第3者」に返済してもらうことによって、借入先を会社から申立人の親族や知人などの「第3者」に変更させる方法があります。
 但し、原則として自己破産をするような状態の人が一部の借入先だけに返済することは法律上許されていませんので、「申立人自身」が会社からの借金だけを返済することは原則として許されませんので、その点はくれぐれも注意して下さい。


(会社から借り入れがあるが、どうしても会社に自己破産をすることを知られたくない場合には、事前に専門家に相談することをお勧めします。)
 
      
Q14  自己破産をしたことを理由に会社は従業員を解雇できるのですか?

 法律上、特段の事情がない限り、自己破産をしたことだけを理由に従業員を解雇することは許されていません。
 よって、自己破産をしても、特段の事情がない限り、他に解雇されるような事由がなければ、そのまま働き続けることができます。

       
Q15  自己破産をすると、代わりに家族が支払わなければならないのですか?

 借主本人が自己破産をしても、保証人になっているなどの特段の事情がない限り、本人の家族が代わりに本人の借金を支払う必要は全くありません。
 つまり、本人が自己破産をしたことだけを理由に、本人の家族に支払責任が生じるということは全くありません。
 本人の家族が本人が自己破産をする前に本人の借金に関して何も支払責任を負担していないのであれば、全く心配する必要はありません。

       
Q16  自己破産をしたことが子供の進学・就職・結婚に影響しますか?

 まず、親が自己破産をしたことによって、子供の
進学・就職・結婚に関して法律上において不利益に扱われるということは全くありません。
 よって、その点に関しては、全く心配する必要はありません。
 
 次に、進学・就職・結婚というものは、相手方の自由な裁量・判断によるところがありますので、その相手方が親が自己破産をしたことを気にする可能性があるという事実上の影響が一応は考えられます。
 しかし、「Q12」で説明したように自己破産をしたことが世間一般の人に知られる可能性は基本的にはありません。また、そのことを相手方が積極的に調査することも「通常」考えられません。よって、事実上の影響も心配する必要はないとおもわれます。
(仮に、万が一に相手方に親が自己破産をしていることを知られ、かつ、相手方が親が自己破産をしていることを気に掛けたとしても、そのことから直ちに断られるということにはならないとおもわれます。また、進学・就職・結婚の相手方は無限に存在するわけです。よって、これらの意味においても事実上の影響を心配する必要はないとおもわれます。)

 
自己破産をしたことによる子供の人生に対する影響を気になさるのでしたら、一日でも早く借金の整理をして経済的な再起更生を実現し、親の借金で子供に不安感を抱かせないような平穏な生活を子供に約束することが、今後の子供の人格形成にとって大切なことではないでしょうか。
 
     
Q17  自己破産をすると、家族も借り入れができなくなるのですか

 まず、借主本人が自己破産をしたことによって、法律上において借主本人の家族が借り入れができなくなるということは全くありません。
 よって、その点に関しては、全く心配する必要はありません。

 次に、借り入れができるか否かという問題は、そもそも貸主側の自由な裁量・判断によるものですので、
貸主側が融資の可否を判断する際に、家族が自己破産をしていることを気にする可能性があるという事実上の影響が一応は考えられます。
 実務上は、貸金業者が信用情報機関に問い合わせるなどして融資の可否の審査をする際に「同居の家族」が自己破産をしていることが判明した場合には、そのことを融資の可否の判断材料として考慮する場合があり、クレジットカードを作ることができなかったという前例がないわけではありません。(なお、全ての貸金業者がこのような扱いをしているわけではありません。)
 しかし、完全に独立して生活をしている場合には、家族が自己破産をしていることだけを理由に借り入れができなくなるということは通常見うけられません。
 以上のとおりであり、家族が自己破産をしても、本人が独立して生活をして返済できるだけの資力を有している限り、借り入れができなくなるということは通常はないと考えてよいとおもわれます。
(仮に、一部の貸金業者から家族が自己破産をしていることだけを理由に融資を断られたとしても、銀行やクレジット会社などの貸金業者は無限に存在するわけですから、本人が返済できるだけの資力を有している限り、全ての貸金業者から家族が自己破産をしていることだけを理由に融資を断られることは通常考えられず、この意味においても事実上の影響を心配する必要はないとおもわれます。)
 
     
Q18  ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費による借金がある場合(「免責不許可事由」がある場合)でも自己破産はできますか?

 自己破産することを裁判所に認めてもらうための主な条件の一つとして、「申立人に「免責不許可事由」がないこと」が挙げられます。
 この「免責許可事由」というものを簡単に説明しますと、「自己破産をしても借金の支払責任を免除することが許可されない事由」をいいます。
 裁判所は申立人に「免責不許可事由」がある場合、原則として、申立人の借金の支払責任を免除する決定(「免責許可の決定」)を下すことができません。
 そして、申立人に「ギャンブルや浪費による借金があること」は「免責不許可事由」に該当します。
 よって、
ギャンブルや浪費による借金がある場合は、原則として、自己破産の申し立てをしても、借金の支払責任を免除されないことになります。
 但し、この点については、例外があります。
 
自己破産の申立てをした人に「免責不許可事由」があった場合でも、「申立人の反省の有無・程度」「免責不許可事由の内容・程度」「申立人の今後の更正の見込み」等を総合的に考慮して相当と判断される場合には、裁判所は自ずからの裁量で申立人の借金の支払責任を免除する決定(「免責許可の決定」)下すことができます。(これを「裁量免責」といいます。)
 そもそも、自己破産という制度は、返済不可能なほどに借金を抱えてしまった人を救済し、人生の再出発をするための機会を与えるための制度です。また、自己破産の申立てをした多くの人に内容・程度の差はもちろんありますが「浪費」などの「免責不許可事由」があるのが現実です。従って、「免責不許可事由」があるからといってそのことから直ちに免責を許可しないという扱いをした場合、自己破産の申立てをした多くの人は人生の再出発をする機会を得られず、夜逃げをするか自殺をするしかなくなってしまいます。つまり、このような扱いが放置された場合、自己破産という制度の意義がなくなってしまいかねません。
 そこで、「浪費」などの「免責不許可事由」のある人でも、これまでの生活態度を強く反省している場合には、裁判所は広く「裁量免責」を用いて「免責許可の決定」を下しています。
(なお、平成15年に自己破産の申立てがなされた事件の中で「免責許可の決定」が下されなかったのは、全体の0.1%未満です。つまり、99.9%以上の確率で「免責許可の決定」が下されています。)

 
以上のとおり、ギャンブルや浪費による借金がある場合(「免責不許可事由」がある場合)でも、本人が返済不可能なほどに借金を抱えてしまったことを真剣に反省し、そして、本人に更生の見込みがある場合には、裁判所の裁量により借金の支払責任を免除する決定(「免責許可の決定」)を下してもらえる可能性は充分にあるといえます。
 
     
Q19  住宅を所有しているのですが、自己破産をすると処分しなければならないのですか?

 自己破産とは、自ずからの収入・財産では返済が不可能な程に借金などの支払責任を抱えている人が裁判所に申立てることによって、
現在有している全ての財産を放棄し、その全ての財産を現金化して借金などの返済に充て、それでもなお残存する借金などの全ての支払責任を免除してもらう裁判上の手続をいいます。
 よって、自己破産の申し立てをした人が所有している住宅などの不動産は、売却されて現金化して借金などの返済にあてられることになります。
 どうしても住宅を所有しながら借金を整理したい場合には、「個人民事再生」の手続によって借金を整理できるか検討してみて下さい。

 なお、自己破産の申し立てをした後、直ちに住宅から引っ越さなければならなくなるわけではありません。実際にどのくらいの期間住み続けることができるかは、事案にもよりますが、住宅が売却されるまでの間(概ね、自己破産の申し立て後、半年〜1年間ぐらい)はそのまま住み続けることができます。

       
Q20  自動車を所有しているのですが、自己破産をすると処分しなければならないのですか?

 まず、自己破産とは、自ずからの収入・財産では返済が不可能な程に借金などの支払責任を抱えている人が裁判所に申立てることによって、
現在有している全ての財産を放棄し、その全ての財産を現金化して借金などの返済に充て、れでもなお残存する借金などの全ての支払責任を免除してもらう裁判上の手続をいいます。
 よって、自己破産の申し立てをした人が所有している自動車などは、原則として、売却されて現金化して借金などの返済にあてられることになります。
 但し、この点については例外があり、以下のような場合にはそのまま自動車を所有することができます。
@ 自動車の時価が金20万円以下である場合
A 生活上不可欠なものであるなどの理由により裁判所が特にそのまま所持することを認めた場合
 (但し、この「A」については、あくまでも例外的な処理であり、簡単には裁判所は認めてくれません。)
B 裁判所(管財人)の同意の下で、自己破産の手続が開始された後に申立人が得た給料等の財産で自動車の時価相
 当額を裁判所(管財人)に提供した場合

 次に、自動車のローンが残っている場合には、ローンが完済されるまでローン会社に自動車の所有権が留保されており、そもそも申立人が所有していないのが通常です。
 よって、自己破産をした場合、ローン会社はローンが完済できなくなったことを理由として所有権に基づいて自動車の引き渡し請求を申立人に対して行うのが通常であり、申立人はこれに応じなければなりません。
(なお、このローン会社の引き渡しの請求に対しては自動車の時価が金20万円以下であっても応じなければなりません。)
 但し、自動車のローンが残っている場合で、どうしても自動車をそのまま使用し続けたい場合には、ローン会社と交渉することによって、親族や知人などの「第3者」にローン会社から自動車を買い取ってもらい所有者をローン会社から親族や知人などの「第3者」に変更させて、その「第3者」の同意の下で申立人がそのまま使用し続けるなどの方法が考えられます。
 なお、原則として自己破産をするような状態の人が一部の借入先だけに返済することは法律上許されていませんので、申立人自身が自己破産の申し立てをする前にローン会社に対してだけ返済をすることは原則として許されませんので、その点はくれぐれも注意して下さい。

 
       
Q21  生命保険は自己破産をすると解約しなければいけないのですか

 自己破産とは、自ずからの収入・財産では返済が不可能な程に借金などの支払責任を抱えている人が裁判所に申立てることによって、
現在有している全ての財産を放棄し、その全ての財産を現金化して借金などの返済に充て、それでもなお残存する借金などの全ての支払責任を免除してもらう裁判上の手続をいいます。
 よって、自己破産の申し立てをした人に生命保険の解約返戻金がある場合には、原則として、生命保険を解約して現金化して借金などの返済にあてられることになります。

 但し、この点については例外があり、以下のような場合には解約をせずに済ますことができます。
@ 掛け捨ての保険で、そもそも解約返戻金がない場合
A 積立型の保険であっても、解約返戻金が金20万円以下の場合
B 生活上不可欠なものであるなどの理由により裁判所が特にそのまま解約しなくてよいことを認めた場合
 (但し、この「B」については、あくまでも例外的な処理であり、簡単には裁判所は認めてくれません。)

C 裁判所(管財人)の同意の下で、自己破産の手続が開始された後に申立人が得た給料等の財産で解約したくない
 生命保険の解約返戻金相当額を裁判所(管財人)に提供した場合

 
       
Q22  退職金は自己破産をするともらえなくなるのでしょうか

 自己破産とは、自ずからの収入・財産では返済が不可能な程に借金などの支払責任を抱えている人が裁判所に申立てることによって、
現在有している全ての財産を放棄し、その全ての財産を現金化して借金などの返済に充て、それでもなお残存する借金などの全ての支払責任を免除してもらう裁判上の手続をいいます。
 よって、自己破産の申し立てをした人が会社から退職金の支払いを受けられる場合には、原則として、その退職金は借金などの返済にあてられることになります。

 但し、退職金については、他の財産がある場合と異なって、数多くの裁判所が以下のような扱いをしています。
@ 実際に申立人が放棄しなければならないのは退職金支払見込額の全額ではなく、退職金支払見込額の8分の1の
 金額
(退職金支払見込額の8分の1の金額が金20万円以下である場合には、退職金支払見込額の全額を放棄しなくてよ
い。)
A 退職金の支払いを受けるために会社を辞める必要はなく、そのまま勤務を継続することができる。
(勤務を継続する場合には、自己破産の手続が開始された後に申立人が得た給料等の財産などで退職金支払見込額の
8分の1の金額を裁判所(管財人)に提供しなければならない。)
B 申立人が勤務を継続したいが退職金支払見込額の8分の1の金額をどうしても提供できない場合には、生活上不
 可欠なものであるなどの理由により裁判所が特にそのまま退職金を放棄しなくてよいと認められることがある。
(但し、この「B」については、あくまでも例外的な処理であり、簡単には裁判所は認めてくれません。)
 なお、「@」に関しては、破産手続中に現実に申立人が退職する場合には、横浜地方裁判所の方針では退職金の4分の1の金額を基準としています。
 また、自己破産の手続が開始される前に申立人が退職金の支払いを受けていた場合には、退職金としてではなく、現金として扱われます。つまり、その場合には、金99万円を超える部分については放棄しなければならなくなります。

 
       
Q23  年金は自己破産をすると受給できなくなるのですか
 
 自己破産したことが理由となり、年金の支給が打ち切れられるということはありません。
 世間一般では「自己破産」をした場合のデメリットに関して誤解されていることが多く、このような誤解はその典型的な例の一つといえるでしょう。

       
Q24  携帯電話は自己破産をすると使えなくなるのでしょうか

 自己破産をしても、通話料金を滞納しているなどの特段の事情がない限り、そのまま携帯電話を使用することができます。
 
 なお、自己破産をすれば携帯電話の通話料金の支払責任も他の借金の支払責任と共に免除することができますが、携帯電話会社から通話料金の不払いを理由として契約を解除されることがありえます。
 よって、自己破産をした後も携帯電話をそのまま使用したいならば、通話料金をきちんと支払い続ける必要があります。


      
Q25  自己破産をした後は、永久に借り入れができなくなるのですか

 自己破産をしたことに限らず、専門家に依頼をしたり、裁判所を通して借金の整理をすると信用情報機関に「事故情報」として登録されることになります。
 また、貸金業者が融資の可否の審査をする場合、必ず信用情報機関に問い合わせて融資の申込人に関して「事故情報」が登録されていないかを確認しますので、「事故情報」が登録されている間は、通常、融資を受けることができなくなります。
 但し、この「事故情報」は永久に登録されるというわけでは必ずしもなく、借金を整理した方法や各信用情報機関によって異なりますが、概ね「5年〜10年間」とされています。
 よって、自己破産をしても「5年〜10年間」が経過して「事故情報」の登録が抹消された後であれば、
その時に本人が返済できるだけの資力を有している限り、融資を受けられる可能性は充分にあるといえます。

(なお、融資の可否の問題は、そもそも貸主側の自由な裁量・判断によるものですので、実際に申し込んでみないと融資の可否はわからないことになります。
 しかし、仮に事故情報の登録が抹消された後に過去自己破産をしていることが融資の申し込みをしている際に何らかの形で発覚した場合でも、銀行やクレジット会社などの貸金業者は無限に存在するわけですから、その時に本人が返済できるだけの資力を有している限り、一部の貸金業者から過去自己破産をしていることだけを理由に融資を断られることはあっても、世の中の全ての貸金業者が過去自己破産をしていることだけを理由に融資を断ることは考え難く、この意味においても、自己破産をした後は永久に借り入れができなくなるわけではないことが分かると思います。)


       
Q26  自己破産をすると、保証人にはどのような影響が及ぶのですか
 
 自己破産をした場合、自己破産をした本人の支払責任は免除されますが、保証人の支払責任は全く免除されません。
 従って、貸金業者は、本人が自己破産をすると、保証人に対して保証した借金の全額の支払いを請求するようになります。
 また、この場合、通常、保証人は「分割」ではなく保証した借金の全額を「一括」で支払わなければならなくなります。
 以上のことから、保証人が保証した借金の全額を「一括」で支払うことができない場合には、保証人自身も自己破産や民事再生や任意整理をするなど、何らかの法的な手段をとる必要があります。
 

 いずれにしても保証人になってもらった方には大きな負担を掛けることになりますので、自己破産をする前に保証人になってもらった方にきちんと現在の状況を説明しておいたほうがよいでしょう。

       
Q27  自己破産をした後に、貸金業者が嫌がらせをしてきたり、しつこく請求してきたりすることはないのですか

 「貸金業の規制等に関する法律」は、本人が自己破産の申立て(裁判所に申立書を提出すること。)をして、その旨の「通知」が裁判所から貸金業者になされると、それ以降は貸金業者が自己破産をした本人に対して正当な理由もなく電話・FAX・訪問等による直接的な取立行為をすることを原則として禁止しています。
 また、「貸金業の規制等に関する法律」は、本人が司法書士や弁護士に借金の整理を依頼した場合には、自己破産の申立てを待つまでもなく、司法書士や弁護士からの「介入通知(依頼を受けた旨の通知)」が貸金業者になされた時点から、貸金業者が本人に対して正当な理由もなく電話・FAX・訪問等による直接的な取立行為をすることも原則として禁止しています。
 なお、「貸金業の規制等に関する法律」は、貸金業者が裁判所からの「通知」や司法書士などからの「介入通知」を無視して正当な理由もなく借主に電話・FAX・訪問等による直接的な取立行為を続けた場合には、「1年以内の業務停止の処分」又は「登録の取り消しの処分」という「行政処分」や「2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」という「刑事罰」の対象となることを定めています。
 
以上のことから、自己破産をした後に、貸金業者が「行政処分」や「刑事罰」が課されることを覚悟して、自己破産をした本人に対して嫌がらせをしてきたり、しつこく請求してきたりすることは、まず考えられないといっていいでしょう。

(注)「十日で一割、十日で三割」などと違法に高額な利息を徴収したり、「脅迫」めいた取り立てをしている未登録の貸金業者(いわゆる「闇金融」と呼ばれるもの)などは、そもそも法律を守って営業を行う意思がないため、「違法」に取り立てを続けることがしばしばありますので、そのような「闇金融」から借り入れがある場合には、自己破産をするだけではなく、司法書士や弁護士などの専門家に依頼したり、警察に相談して、取り立てを止めさせるための法的手段を別にとる必要があります。

       
Q28  自己破産をする前に、家族や友人に対する借金だけを返済することはできますか
 
 債務者(借主)が自己破産をするほどに無資力状態に陥った場合には、一部の債権者(貸主等)が他の債権者に抜け駆けて債務者から返済を受けることは原則として許されません。この場合、全ての債権者は、各債権額(借金などの金額)に応じて各債権者と平等に債務者から返済を受けなければならないことが法律上定められています。(これを「債権者平等の原則」といいます。)
 
いいかえると、原則として自己破産をするような無資力状態の人が一部の債権者(貸主等)だけに返済をすることは法律上許されていません。
 
仮に、自己破産をするような無資力状態の人が正当な理由もなく一部の債権者(貸主等)だけに返済をした場合、原則として、その後に自己破産をしても裁判所から借金の支払責任を免除する決定を下してもらえなくなります。
 
 以上のとおりであり、自己破産をする前に、家族や友人に対する借金であったとしても、一部の借入先だけに返済をすることは原則として許されませんのでくれぐれも注意してください。

 なお、自己破産の手続が無事に成功した後(免責決定確定後)であれば、特段の事情がない限り、家族や友人に対する借金を返済することは可能となります。
 
       
Q29  自己破産は、自分一人でできますか

 「自己破産を自分一人でできるか、否か
。」は、簡単にいいますと、本人の「意思」と「能力」と「覚悟」と「事案」次第であるとおもわれます。
 具体的に「自己破産を自分一人で行うか、否か。」の判断は、以下の点を参考にしてみて下さい。

@ 自己破産の申し立てを専門家に依頼をせずに自分で行うことは法律上は可能です。
A 専門家に依頼をすれば報酬を支払うことになります。
B 専門家に依頼をせずに自分一人で申し立てて自己破産の手続を成功させることができた人がいるのも事実です。

C 専門家に依頼をせずに自分一人で申し立てて自己破産の手続を成功させることができた人も、実際には、司法書士会や市役所などの公的な機関が行っている「無料法律相談」等を利用して専門家と何度も相談をしながら手続を進めていた人が多いことも事実です。(つまり、専門家に「依頼」はしていないが、「相談」は何度もしていたということです。)
D 専門家に依頼をせずに自分一人で申し立てを行おうとしたが、一人で行うには多くの時間と労力を消耗することになることに気づき、途中で挫折して、最終的には専門家に依頼をして自己破産をした人が多いことも事実です。
E ギャンブルや浪費による借金があるなどの「免責不許可事由」がある場合や必要な財産である故にどうしてもその財産を所有し続けたい場合など、本人の主張を裁判所(または、管財人)に認めてもらえるようにするためには、どのように手続を進めるべきかを専門家でも即断できないような解決困難な事案は数多く存在します。そのような解決困難な事案の場合には、専門家に依頼をせずに申し立てがなされると、それによって起こりうる様々な不都合性を申立人に説明した上で、専門家に依頼することを裁判所が勧める場合もあります。
F
司法書士や弁護士に借金の整理を依頼した場合、依頼を受けた司法書士や弁護士は「介入通知」を貸金業者へ速やかに行って貸金業者の本人に対する直接的な取立行為をすぐに止めさせ、本人は貸金業者からの取り立てや毎月の返済に悩まされることのない平安な日常生活をすぐに取り戻すことができるようになれます。つまり、専門家に依頼をした場合、本人は冷静な頭で今後の生活や借金の整理の方法を専門家と一緒になって考えることができる機会と時間をすぐに得られ、とりたてて不安を感じることなく手続を進めることができるようになれます。

 以上の点を参考にしてみて下さい。

 
       
Q30  自己破産をするための費用はどのくらいかかるのですか
 
 まず、個人が自己破産の申し立てをする際に「裁判所に納める諸費用」は以下のとおりです。

(なお、以下の例は横浜地方裁判所の場合を参考にしており、各裁判所によって異なることがあります。)


  
「同時破産廃止事件」の場合  合計・約1万3000円
 官報公告費用(現金)  1万0290円
 申立書貼用印紙(収入印紙)  1500円
 予納郵券(切手)  80円×債権者(貸金業者等)の数分
 80円×5組 10円×1組
 
「管財事件」の場合  合計・約21万7000円〜約51万7000円
 管財人の報酬(現金)  約20万円〜約50万円
(但し、このお金は必ずしも申立て時に用意できなくてもよく、一定期間内に分割払いで支払うこともできる。)
 官報公告費用(現金)
 1万3450円
 申立書貼用印紙(収入印紙)  1500円
 予納郵券(切手)  80円×債権者(貸金業者等)の数分
 80円×13組 10円×10組


 次に、専門家に依頼をする場合には「裁判所に納める諸費用」とは別に専門家に支払う「報酬」が掛かることになります。
 そして、専門家の「報酬」については、現在、自由化されており、各専門家の事務所によって異なります。
 
 ところで、専門家の「報酬」は「一括」で支払うことが原則ですが、どうしても「一括」で用意できない場合には、誠意をもって依頼者側が御願いすれば、専門家の方でも自己破産を考えている人がお金が無いことは分かっていることですので、分割払い等に応じてくれる専門家も少なくないと思われます。よって、どうしても「報酬」を「一括」で用意できない場合には誠意をもって専門家に相談してみて下さい。

 



                                              
 


 2、「個人民事再生についてよくある質問(Q&A)」


 

 Q1 個人民事再生とは、どのような手続なのですか?
   
 Q2 個人民事再生と自己破産とでは、どのような違いがあるのですか?
     
 Q3 個人民事再生と任意整理とでは、どのような違いがあるのですか? 
     
 Q4 個人民事再生は、どのような人が利用できるのですか?
     
 Q5 個人民事再生をすると、どのくらい借金が減額されるのですか?
     
 Q6 個人民事再生の手続が終了するまでには、どのくらいの期間がかかるのですか?
     
 Q7 個人民事再生をすると、所有している財産は処分されてしまうのですか?
     
 Q8 個人民事再生をすると、「住宅」の所有を維持しながら借金を整理することができるのですか?
     
 Q9 個人民事再生をすると、その後の日常生活にどのような影響が及ぶのですか?
     
 Q10 個人民事再生をすると、保証人にはどのような影響が及ぶのですか? 
     
 Q11 ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費によ
     る借金がある場合でも、個人民事再生はできますか?
     
 Q12 小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続とでは、どのような違いがあるのですか? 
     
 Q13 個人民事再生は、自分一人でできますか?
     
 Q14 個人民事再生をするための費用はどのくらいかかるのですか?
  




Q1  個人民事再生とは、どのような手続なのですか
 
「個人民事再生」とは、継続的にまたは反復して収入を得られる見込みはあるが、自ずからの収入・財産では返済が不可能な程に借金などの支払責任を抱えるおそれのある人が裁判所に申立てることによって、原則として現在有している財産を処分することなく、残存する借金などの支払責任を軽減してもらう裁判上の手続をいいます。
(簡単にいえば、「個人民事再生」とは、「継続または反復して収入のある人が、今ある財産を処分せずに、借金の支払責任を軽減してもらう裁判上の手続」をいいます。)
 
 この「個人民事再生」の手続は、平成12年の民事再生法の改正によって「通常の民事再生手続」とは異なる「特則上の民事再生手続」として設けられた制度です。(具体的には、利用者を個人に限定して設けられた制度です。)

 
そして、この「個人民事再生」の手続は「小規模個人再生手続」「給与所得者等再生手続」という2つの手続に分かれます。
(つまり、「個人民事再生」とは、「小規模個人再生手続」と「給与所得者等再生手続」という「2つの特則上の民事再生手続」の「総称」をいいます。)
 
 
また、「住宅ローン」が残っている人が民事再生手続によって借金を整理する場合、「住宅資金特別条項」という制度を利用すれば、一方では「住宅ローン」については支払方法を変更して今後も分割でその全額を支払うことにより「住宅」の所有を維持することができ、他方では「住宅ローン」以外の借金(消費者金融会社やクレジット会社に対する借金など)については減額させた上で分割で支払うことができます。

    
Q2  個人民事再生と自己破産とでは、どのような違いがあるのですか?

 個人民事再生と自己破産の主な違いは、以下の6点です。


  個人民事再生 自己破産
@  原則として、手続終了後の3年間に渡って、一定の金額を分割で支払い続けなければならない。  原則として、全ての借金の支払責任が免除されることになる。
A  原則として、「住宅」などの財産を手放すことなく、借金を整理することができる。  原則として、全ての財産を失うことになる。
B 「将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込み」がある人でなければ利用することができない。  現在及び将来において収入が全く無い人でも利用することができる。 
C  小規模個人再生手続の場合、今後の返済計画案について、一定数の債権者(貸金業者等)の同意が必要となる。(但し、全ての債権者の同意は必要としない。)  基本的に債権者(貸金業者等)の同意を必要としない。
D  借金を増大させた理由が「ギャンブル」や「浪費」によるものであっても手続を成功させることができる。   借金を増大させた理由が「ギャンブル」や「浪費」による場合、「免責不許可事由」にあたり、原則として、借金の支払責任が免除されないことになる。 
E  一定の資格や法律上の地位に就くことを制限されない。    手続が成功するまでの間、一定の資格や法律上の地位に就くことを制限される。
    
      
Q3  個人民事再生と任意整理とでは、どのような違いがあるのですか? 
 
 個人民事再生と任意整理の主な違いは、以下の5点です。

  個人民事再生 任意整理
@  通常、利息制限法に引き直し計算をして減額された後の借金の残額を、さらに減額した上で「分割」で支払うことになる。
 通常、利息制限法に引き直し計算をして減額された後の借金の残額を「分割」又は「一括」で支払うことになる。
A 「将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込み」がある人でなければ利用することができない。  返済資金を用意できる限り、現在及び将来において収入が全く無い人でも利用することができる。
B  給与所得者等再生手続の場合、今後の返済計画案について、債権者(貸金業者等)の同意を必要としない 。(但し、小規模個人再生手続の場合、一定数の債権者(貸金業者等)の同意は必要。)  今後の返済計画案について、全ての債権者(貸金業者等)の同意を必要とする
C  裁判上の手続である。従って、借主本人は裁判所に出頭しなければならない。  裁判上の手続ではない。従って、特段の事情がない限り、借主本人は裁判所に出頭する必要はない。
D  手続が終了するまでの期間ついては、裁判所に申立書を提出してから概ね「約7ヶ月〜約8ヶ月」。  手続が終了するまでの期間については、必ずしも事前に予測をつけることができない。
   
      
Q4  個人民事再生は、どのような人が利用できるのですか?

 個人民事再生を利用するためには、申立人が以下の条件を満たしている必要があります。

 @ 申立人が「個人」であること。
 A 申立人に 「破産の原因たる事実の生ずるおそれ」があること

 B 申立人に将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること
 C 申立人に「最低弁済額」を返済できるほどの収入を得る見込みがあること
 D 申立人の債務(借金等)の総額が金5000万円以下であること(但し、「住宅ローン」等の債務を除く。)

(なお、これらの条件の詳細については
個人民事再生・5、個人民事再生が認められるための条件を御覧下さい。)
  

      
Q5  個人民事再生をすると、どのくらい借金が減額されるのですか?
 
 個人民事再生の手続が成功した場合には、手続終了後の3年間(特別な事情がある場合には5年間まで延長が可能)で、法律が定める「最低弁済額」以上の金額を分割で返済することにより、原則として、全ての債務(借金等)の支払責任が免除されることになります。
 つまり、個人民事再生の場合、法律が定める「最低弁済額」まで債務(借金等)を減額することが可能となります。

 ところで、「最低弁済額」の判断基準を簡単に説明しますと、概ね、以下のとおりになります。
(T)「債務(借金等)の総額」が100万円未満の場合、「債務の総額」の100%
(U)「債務(借金等)の総額」が100万円以上500万円以下の場合、100万円
(V)「債務(借金等)の総額」が500万円を超え1500万円未満の場合、「債務の総額」の20%
(W)「債務(借金等)の総額」が1500万円以上3000万円以下の場合は、300万円
(X)「債務(借金等)の総額」が3000万円を超え5000万円以下の場合は、「債務の総額」の10%
(Y)但し、「債務(借金等)の総額」には「住宅ローン」「担保権が行使されることによって返済されることになる債務」及び「罰金」などは含まれません。
(Z)そして、民事再生手続においては、自己破産をした場合より多くの金額を債権者(貸金業者等)に返済しなければならないという原則(これを「精算価値保障の原則」といいます。)があります。よって、原則として、(T)〜(Y)の基準によって算出された「最低弁済額」の金額と申立人が所有しいる財産の評価額(担保権がついている財産は、担保権が行使されても残存する評価額)の合計金額を比べていずれか多い金額が最終的に判断される「最低弁済額」となります。
([)また、住宅の所有を維持するために「住宅資金特別条項」を利用する場合には、「最低弁済額」に加えて「住宅ローン」については「全額」を支払わなければなりません。
(\)さらに、「給与所得者等再生手続」における「最低弁済額」の基準については、「最低弁済額は、法律で定められた可処分所得の2年分の合計額以上であること」という点が加重されることになります。この「法律で定められた可処分所得の2年分の合計額」の意味を簡単に説明しますと、「申立人の収入から所得税・住民税・社会保険料及び政令が定めた最低限の生活を維持するための費用を引いた金額の2年分」を意味します。

(注)以上の「最低弁済額」の基準は申立人に「住宅ローン」が無い場合、又は、申立人に「住宅ローン」があり「住宅資金特別条項」を利用する場合を前提にしています。申立人に「住宅ローン」があるが「住宅」の所有を諦めて「住宅資金特別条項」を利用しない場合には、以上の基準とは若干異なってきます。 

  
      
Q6  個人民事再生の手続が終了するまでには、どのくらいの期間がかかるのですか?

 個人民事再生の手続が終了するまでの期間については、一般的には、裁判所に申立書を提出してから「約7ヶ月〜約8ヶ月」の期間によって終了します。
 但し、 個人民事再生の手続の具体的な流れや期間は、各裁判所の方針や個別的な事案によって異なることがあります。

      
Q7  個人民事再生をすると、所有している財産は処分されてしまうのですか?
 
 個人民事再生の場合は、自己破産の場合とは異なり、「申立人の財産を処分し現金化して借金の返済に充てる。」というようなことは手続上行われません。
 従って、個人民事再生の手続が無事に成功した場合には、担保権が付いているものを除いては、そのまま財産を所有し続けることができます。
(但し、民事再生手続においては、自己破産をした場合より多くの金額を債権者(貸金業者等)に返済しなければならないという原則(これを「精算価値保障の原則」といいます。)があります。そのため、原則として、申立人が手続終了後に各債権者(貸金業者)に支払う総額は申立人が所有しいる財産の評価額の合計額以上でなければなりません。)

 なお、
「住宅資金特別条項」を利用して手続に成功すれば、「住宅ローン」については支払方法を変更して今後も分割でその全額を支払うことにより「住宅」の所有を維持することができます。

      
Q8  個人民事再生をすると、「住宅」の所有を維持しながら借金を整理することができるのですか?
 
 まず、「住宅ローン」がなく、「住宅」に抵当権等が設定されていない場合について説明します。
 個人民事再生の場合は、自己破産の場合とは異なり、「申立人の財産を処分し現金化して借金の返済に充てる。」というようなことは手続上行われません。
 従って、個人民事再生の手続が無事に成功した場合には、そのまま住宅を所有し続けることができます。
(但し、民事再生手続においては、自己破産をした場合より多くの金額を債権者(貸金業者等)に返済しなければならないという原則(これを「精算価値保障の原則」といいます。)があります。そのため、原則として、申立人が手続終了後に各債権者(貸金業者)に支払う総額は申立人が所有しいる財産の評価額の合計額以上でなければなりません。)

 次に、「住宅ローン」が残っており、「住宅」に「住宅ローン」の抵当権等が設定されている場合について説明します。

 この場合には、「住宅資金特別条項」を併せて利用して手続に成功すれば、一方では「住宅ローン」については支払方法を変更して今後も分割でその全額を支払うことにより「住宅」の所有を維持することができ、他方では「住宅ローン」以外の借金(消費者金融会社やクレジット会社に対する借金など)については減額させた上で分割で支払うことができます。

 なお、「住宅資金特別条項」を利用するための主な条件は以下のとおりです。
@ 申立人が「住宅」を所有していること。(共有でも可。)
A「住宅」が申立人自身の居住の用に供する建物であること。(建物の床面積の2分の1以上が専ら申立人の居住の
 用に供されていれば可。)
B「住宅」に「住宅ローン」の抵当権等が設定されていること。(住宅ローンの保証会社の求償権に関して抵当権等
 が設定されている場合も可。)
C「住宅」に「住宅ローン」以外の抵当権等が設定されていないこと。
D「住宅」以外の不動産にも「住宅」と共同して「住宅ローン」の抵当権等が設定されている場合には、「住宅」以
 外の不動産について「住宅ローン」の抵当権より後順位の抵当権等が設定されていないこと。
E 保証会社が「住宅ローン」について既に代位弁済をしていた場合には、代位弁済がなされた日から「6ヶ月」を
 経過する日までの間に「申立て」をしていること。

(注)「住宅」に「住宅ローン」以外の抵当権が設定されている場合には、「住宅資金特別条項」を利用できないことから、特段の事情がない限り、個人民事再生をしても「住宅」の所有を維持することができません。それでも、「住宅」の所有を維持するために「住宅資金特別条項」を利用したい場合には、その抵当権者に対する借金の全額を支払うなどして抵当権を消滅させることが必要となります。但し、そのような場合には、専門的な知識が要求され一人で判断することは危険ですので、必ず事前に専門家に相談することを強くお勧めします。

      
Q9  個人民事再生をすると、その後の日常生活にどのような影響が及ぶのですか?
 
 個人民事再生の場合は、自己破産の場合とは異なり、「申立人の財産を処分し現金化して借金の返済に充てる。」というようなことは手続上行われません。よって、担保権が付いているものを除いては、そのまま財産を所有し続けることができます。
 また、個人民事再生の場合には、
自己破産の場合とは異なり、申立人に一定の資格や法律上の地位に就くことを制限されることもありません。
 従って、基本的には、個人民事再生をしても、それまでと変わらない日常生活を送ることができます。

 但し、個人民事再生をするなど裁判所を通して借金の整理をした場合には、信用情報機関に「事故情報」として登録されることになります。
 そして、金融機関が融資の可否の審査をする場合、必ず信用情報機関に問い合わせて融資の申込人に関して「事故情報」が登録されていないかを確認しますので、「事故情報」が登録されている間は、通常、金融機関から融資を受けることができなくなります。
 従って、個人民事再生をした場合、その後は、通常、金融機関から融資を受けることができなくなります。

 なお、この信用情報機関に「事故情報」として登録されるデメリットは、「個人民事再生」の場合に限らず、「自己破産」や「任意整理」などの借金の整理(債務整理)を行った場合に共通するデメリットです。
 また、この「事故情報」は永久に登録されるというわけでは必ずしもなく、借金を整理した方法や各信用情報機関によって異なりますが、概ね「5年〜10年間」とされています。
 よって、個人民事再生をしても、「5年〜10年間」が経過して「事故情報」の登録が抹消された後であれば、その時に本人が返済できるだけの資力を有している限り、金融機関から融資を受けられる可能性は充分にあります。

      
Q10  個人民事再生をすると、保証人にはどのような影響が及ぶのですか? 
 
 まず、「住宅ローン」以外の借金の保証人に対する影響について説明します。
 個人民事再生をした場合、個人民事再生をした本人の支払責任は軽減されますが、保証人の支払責任は全く軽減されません。
 従って、貸金業者は、本人が個人民事再生をすると、保証人に対して保証した借金の全額の支払いを請求するようになります。
 また、この場合、通常、保証人は「分割」ではなく保証した借金の全額を「一括」で支払わなければならなくなります。
 以上のことから、保証人が保証した借金の全額を「一括」で支払うことができない場合には、保証人自身も自己破産や民事再生や任意整理をするなど、何らかの法的な手段をとる必要があります。
 
よって、保証人になってもらった方には大きな負担を掛けることになりますので、個人民事再生をする前に保証人になってもらった方にきちんと現在の状況を説明しておいたほうがよいでしょう。

 
次に、「住宅ローン」の保証人に対する影響について説明します。
 「住宅ローン」が残っている人が個人民事再生の手続によって借金を整理する場合、「住宅資金特別条項」を併せて利用すれば、「住宅ローン」については支払方法を変更して今後も分割でその「全額」を支払うことにより、「住宅」の所有を維持することができるようになります。
 そして、この効力は、「住宅ローン」の保証人にも及ぶとされています。
 従って、個人民事再生の手続が無事に成功し、その後、本人が「住宅ローン」を延滞せずにきちんと支払っている限り、保証人が「住宅ローン」について請求されることはありません。

 
よって「住宅資金特別条項」を利用し手続に成功すれば、「住宅ローン」の保証人になってもらった方に迷惑を掛けなくて済むようになります。
但し「住宅資金特別条項」を利用しなかった場合には、基本的には、前述の「住宅ローン」以外の借金の保証人に対するものと同様の影響が「住宅ローン」の保証人に及ぶことになります。)

      
Q11  ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費による借金がある場合でも、個人民事再生はできますか?
 
 自己破産の場合には、裁判所は申立人に「免責不許可事由」がある場合、原則として、申立人の借金の支払責任を免除する決定(「免責許可の決定」)を下すことができません。そして、申立人に「ギャンブルや浪費による借金があること」は「免責不許可事由」に該当するため、
原則として、自己破産をしても借金の支払責任が免除されないことになります。
 これに対して、個人民事再生の場合には、「申立人にギャンブルや浪費による借金があること」は問題にされずに手続は進められます。

 従って、ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費による借金がある場合でも、個人民事再生の手続を成功させることができます。

      
Q12  小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続とでは、どのような違いがあるのですか? 
 
小規模個人再生手続給与所得者等再生手続の主な違いは、以下の3点です。

  小規模個人再生手続 給与所得者等再生手続
@  申立人に「継続的にまたは反復して収入を得る見込み」があれば利用できる。  申立人に「継続的にまたは反復して収入を得る見込み」があるだけでは足りず、「給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、その収入の金額の変動の幅が小さいと見込まれること」が利用するには必要となる。
A  各債権者(貸金業者等)に今後の返済計画案(これを「再生計画案」といいます。)について反対する機会が与えられる。
 そして、手続を成功させるためには、「再生計画案」について、一定数の債権者(貸金業者等)から反対されないことが必要となる。
 各債権者(貸金業者等)に「再生計画案」について反対する機会は与られない。
 つまり、手続を成功させる上で「再生計画案」について「債権者から反対されるか、否か。」は問題とならない。
B 「最低弁済額」を算出する際の基準について、「可処分所得の2年分の合計額以上であること」という点が全く問題とならない。
 つまり、手続終了後の各債権者に対する「返済総額」を低く押さえることができる。
「最低弁済額」を算出する際の基準について、「可処分所得の2年分の合計額以上であること」という点が加重されている。
 つまり、手続終了後の各債権者に対する「返済総額」が高額になりやすくなっている。
  
(なお、以上の「@〜B」の詳細については「個人民事再生・1、個人民事再生とは?・(4)「小規模個人再生手続」と「給与所得者等再生手続」の違いは?を御覧下さい。)

      
Q13  個人民事再生は、自分一人でできますか
 
 「個人民事再生を自分一人でできるか、否か。」は、簡単にいいますと、法律上は可能であるが、現実には困難であるとおもわれます。
 自己破産の場合、申立人に財産がなくて「免責不許可自由」も特に無いことにより「同時破産廃止事件」として処理される場合には、比較的簡単に手続が進められることになります。よって、そのような場合には、専門家に依頼をせずに自分一人で自己破産の手続を成功させることができた人も少なくありません。
(もちろん、そのような場合でも「成功できるか、否か。」は、本人の「意思」と「能力」と「覚悟」にもよります。)
 これに対して個人民事再生の場合には、自己破産の場合とは異なり、手続が終了した後に各債権者(貸金業者等)に一定額を返済していくことを前提とする手続ですから、「申立人が誰にいくら借金があるのか。今後、誰にいくら返済をしていくのか。」などを必ず手続上確定しなければならないため、手続が極めて複雑なものになっています。(とくに、
「住宅資金特別条項」を併せて利用する場合には、より一層に手続が複雑なものになっています。)
 
従って、専門家に依頼をせずに自分一人で個人民事再生の手続を成功させることは困難といわざるをえません。

 自分一人で個人民事再生の手続を成功させることが絶対に不可能ということはありませんが、確実に手続を成功させたいのであれば、専門家に依頼することをお勧めします。
(とくに、「住宅資金特別条項」を併せて利用する場合には、手続が失敗に終わると「住宅」を失うことにもなりかねませんので、専門家に依頼することを強くお勧めします。)

 なお、専門家の中でも、個人民事再生の手続をよく理解していない人が少なくありません。
 実際には、自己破産の依頼は受けるが、個人民事再生の依頼は受けないという不勉強な専門家が少なくありません。
 また、それ以上にひどい専門家になると、依頼者に個人民事再生という手続の存在を説明せず、依頼者に個人民事再生を選択する機会を与えず、自己破産をすることを強く進める専門家もいます。
(そのような専門家に相談した後で当事務所に相談に来て初めて個人民事再生の手続を知った人も数多くいます。)
 よって、個人民事再生を専門家に依頼する場合には、当該専門家の資質・能力にも充分に気をつけて下さい。
(とくに、「住宅資金特別条項」を併せて利用する場合には、手続が失敗に終わると「住宅」を失うことにもなりかねませんので、専門家を選ぶ際にはより一層に慎重になってください。)

      
Q14  個人民事再生をするための費用はどのくらいかかるのですか
 
 まず、本人が個人民事再生の申し立てをする際に「裁判所に納める諸費用」は以下のとおりです。

(なお、以下の例は「横浜地方裁判所」の場合を参考にしており、各裁判所によって異なることがあります。)


  
 合計・約20万5000円
 再生委員の報酬・官報公告費用(現金)   19万1928円
 申立書貼用印紙(収入印紙)  1万円
 予納郵券(切手)  10円×10組
 20円×債権者(貸金業者等)の数分
 80円×10組
 120円×債権者(貸金業者等)の数分
 140円×債権者(貸金業者等)の数分
 420円×3組 
 
 
 次に、専門家に依頼をする場合には「裁判所に納める諸費用」とは別に専門家に支払う「報酬」が掛かることになります。
 そして、専門家の「報酬」については、現在、自由化されており、各専門家の事務所によって異なります。
 
 ところで、専門家の「報酬」は「一括」で支払うことが原則ですが、どうしても「一括」で用意できない場合には、誠意をもって依頼者側が御願いすれば、専門家の方でも個人民事再生を考えている人がお金が無いことは分かっていることですので、「分割払い」等に応じてくれる専門家も少なくないと思われます。よって、どうしても「報酬」を「一括」で用意できない場合には誠意をもって専門家に相談してみて下さい。

 




                                               


 3、「任意整理についてよくある質問(Q&A)」



 Q1 任意整理とは、どのような手続なのですか?
     
 Q2 任意整理と自己破産とでは、どのような違いがあるのですか?
     
 Q3 任意整理と個人民事再生とでは、どのような違いがあるのですか? 
     
 Q4 どのような場合に、自己破産や個人民事再生ではなく、任意整理によって借金を整理すればよいで
    すか
   
 Q5 任意整理は、どのような人が利用できるのですか?
    
 Q6 任意整理を成功させるためには、依頼者は何をする必要がありますか
    
 Q7 任意整理をすると、どのくらい借金が減額されるのですか?
   
 Q8 任意整理をすると、遅延損害金や将来利息はどのように扱われるのですか?
   
 Q9 任意整理をすると、和解金の返済期間はどのくらいまで貸金業者は応じてくれるのですか?
   
 Q10 任意整理の手続が終了するまでには、どのくらいの期間がかかるのですか?
   
 Q11 任意整理をすると、所有している財産は処分されてしまうのですか?
   
 Q12 任意整理をすると、その後の日常生活にはどのような影響が及ぶのですか?
    
 Q13 任意整理をすると、保証人にはどのような影響が及ぶのですか? 
    
 Q14 ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費によ
     る借金がある場合でも、任意整理はできますか?
   
 Q15 利息制限法の制限利率の範囲内の金利で営業をしている一部の貸金業者や銀行などに対する借金に
     ついて任意整理をした場合、借金を減額させることはできるのですか?
    
 Q16 一部の借入先である貸金業者に対してだけ任意整理をすることはできますか?
   
 Q17 任意整理は、自分一人でできますか?
    
 Q18 任意整理をするための費用はどのくらいかかるのですか?
  



Q1  任意整理とは、どのような手続なのですか
 
「任意整理」とは、裁判所などの公的機関を利用せずに、司法書士などの専門家が本人に代わって貸金業者と交渉して、今後の債務(借金等)の返済方法について和解をする債務(借金等)の整理方法をいいます。
(簡単にいえば、「任意整理」とは、「今後の借金の返済方法について、専門家が代理人として和解交渉をする。」ということです。)


 なお、司法書士などの専門家が「任意整理」をする場合には、以下の手順を踏むことになります。

@ 貸金業者に対して「借金の整理の依頼を受けたこと」及び「今後、依頼者に対して直接的な取立行為を厳に慎む
 こと」を通告する。
A 貸金業者に対して依頼者に関する「取引履歴」(依頼者と貸金業者との間の取引の経過の記録)を開示するよう
 に請求する。
B 開示された「取引履歴」を利息制限法の制限利率に引き直して元本充当計算を行い、借金の残額(元金の残額)
 を確定させる。
C 確定させた借金の残額(元金の残額)以下の金額を和解金額(今後の返済総額)とする和解案を貸金業者に提示
 して和解交渉を開始する。
D 和解成立後、貸金業者との間で和解契約書を作成する。
E 和解金額を貸金業者が指定する銀行口座に振込送金する。

      
Q2  任意整理と自己破産とでは、どのような違いがあるのですか?

 任意整理と自己破産の主な違いは、以下の8点です。


  任意整理 自己破産
@  通常、利息制限法の制限利率に引き直し計算をして減額された後の借金の残額を支払うことになる。  原則として、全ての借金の支払責任が免除されることになる。
A  特段の事情がない限り、財産をそのまま所有することができる。  原則として、全ての財産を失うことになる。
B  和解金を支払うための資金を用意しなければならない。  財産が全く無い人でも利用することができる。
C  今後の返済計画案について、全ての債権者(貸金業者等)の同意を必要とする。   基本的に債権者(貸金業者等)の同意を必要としない 。
D  裁判上の手続ではない。従って、特段の事情がない限り、借主本人は裁判所に出頭する必要はない。   裁判上の手続である。従って、借主本人は裁判所に出頭しなければならない。
E  借金を増大させた理由がギャンブルや浪費によるものであっても手続を成功させることができる。  借金を増大させた理由がギャンブルや浪費による場合、「免責不許可事由」にあたり、原則として、借金の支払責任が免除されないことになる。
F  手続中においても、一定の資格や法律上の地位に就くことを制限されない。   手続が成功するまでの間、一定の資格や法律上の地位に就くことを制限される。
G  手続が終了するまでの期間については、必ずしも事前に予測をつけることができない  手続が終了するまでの期間については、通常、
(T)「同時破産廃止事件」の場合には、裁判所に
申立書を提出してから「約4ヶ月〜約6ヶ月間」、
(U)「管財事件」の場合には、裁判所に申立書を
提出してから「約6ヶ月〜約1年間」。
 
 
      
Q3  任意整理と個人民事再生とでは、どのような違いがあるのですか? 
 
 任意整理と個人民事再生の主な違いは、以下の5点です。

  任意整理 個人民事再生
@  通常、利息制限法に引き直し計算をして減額された後の借金の残額を「分割」又は「一括」で支払うことになる。  通常、利息制限法に引き直し計算をして減額された後の借金の残額を、さらに減額した上で「分割」で支払うことになる。
A  返済資金を用意できる限り、現在及び将来において収入が全く無い人でも利用することができる。 「将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込み」がある人でなければ利用することができない。 
B  今後の返済計画案について、全ての債権者(貸金業者等)の同意を必要とする。  給与所得者等再生手続の場合、今後の返済計画案について、債権者(貸金業者等)の同意を必要としない 。(但し、小規模個人再生手続の場合、一定数の債権者(貸金業者等)の同意は必要。)
C  裁判上の手続ではない。従って、特段の事情がない限り、借主本人は裁判所に出頭する必要はない。  裁判上の手続である。従って、借主本人は裁判所に出頭しなければならない。 
D  手続が終了するまでの期間については、必ずしも事前に予測をつけることができない。  手続が終了するまでの期間ついては、裁判所に申立書を提出してから概ね「約7ヶ月〜約8ヶ月」。 

      
Q4  どのような場合に、自己破産や個人民事再生ではなく、任意整理によって借金を整理すればよいですか
 
 一般的に、任意整理によって借金を整理する事案を挙げますと、主なものは以下のとおりです。

@ 依頼者と貸金業者との間の取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して計算をすると大幅に借金が減額され
 る状態で、あえて個人民事再生を利用する必要が無い場合
A 一部の貸金業者から回収できた過払金で残存する全ての借金を完済できる場合

B 将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがなく個人民事再生を利用できないが、住宅などの手放
 したくない財産があることなどが理由となり、自己破産をすることを避けたい場合
C 保証人が付いている借金があり保証人にどうしても迷惑をかけたくなくて、自己破産や個人民事再生をすること
 を避けたい場合
D 個人民事再生によっても任意整理による場合と貸金業者に対する返済総額がほとんど変わらず、個人民事再生を
 利用した場合の「裁判所に納める諸費用(約20万円)」などを考慮すると、任意整理によった方が依頼者に掛か
 る経済的負担を軽く済ませる場合
(具体的には、借金の総額が100万円強だったり、高額な財産を有しているた
 め精算価値が高い場合など)


 なお、専門家がいかなる手続によって借金を整理すべきかについて判断を下す場合には、事案によっては、依頼者と何度も面談を重ねて事実関係を完全に把握した上で、依頼者の希望も含めて様々な点を考慮しながら最終的な判断を下すことが少なくありません。
 
これは、自己破産・個人民事再生・任意整理という3つの手続には、その性質上、様々な違いがあり、それぞれの手続にメリット・デメリットがあることによります。
 よって、いかなる手続によって借金を整理すべきかについては、必ずしも即断できるものではなく、また、必ずしも明確な基準を立てて形式的に判断できるものではありません。
 自分がどの手続を利用して借金を整理するかを最終的に判断をする際には、必ず一度は専門家に相談することをお勧めします。


    
Q5  任意整理は、どのような人が利用できるのですか?

 「任意整理」とは裁判所などの公的機関を利用せずに専門家が本人に代わって貸金業者と和解交渉をすることですので、自己破産や個人民事再生のような裁判上の手続の場合とは異なり、手続を成功させるために依頼者に求められる絶対的な条件はとくにありません。
 よって、基本的には、誰でも「任意整理」を利用することができます。

     
Q6  任意整理を成功させるためには、依頼者は何をする必要がありますか

 任意整理は、裁判上の手続ではなく私的な和解交渉であり、また、専門家が手続の全てを代理して行うため、手続を遂行していく上で依頼者が行わなければならないことは基本的にはありません。
 また、自己破産や個人民事再生のような裁判上の手続の場合には依頼者は裁判所に出席し裁判官などと面接する必要がありますが、任意整理の場合には特段の事情がない限り依頼者が裁判所に出席する必要もありません。

 但し、「任意整理」を成功させるための「実質的な条件」として、以下の2点が挙げられます。

 (1)依頼者側が和解金を支払うための資金を用意できること
 具体的には、依頼者が各貸金業者に対して負担している正確な借金の総額(依頼者と各貸金業者との間の取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した「借金の総額(元金の総額)」)を向こう「3年間〜5年間」に渡る分割払いで完済するだけの資力を依頼者側が有していることが必要となります。但し、返済資金については、依頼者自身が用意できなくてもよく、依頼者の親族や友人などの援助によって用意する形でも構いません。(現実には、このような形が少なくありません。) 

 
(2)依頼者が貸金業者との間の取引の経過に関する事実を明らかにする努力を行い続けること
 貸金業者から開示されてきた取引履歴(依頼者と貸金業者との間の取引経過の記録)の内容の正確性を検証するために、依頼者は以下の2点を行う必要があります。
@ 各貸金業者との間の取引経過に関する事実(「取引開始日」「借入額」及び「返済額」などの事実)を具体的に
 思い出すこと。
A 各貸金業者との間の取引経過に関する事実を証明する証拠(「契約書」「領収書」など)を探すこと。


(なお、この「(1)〜(2)」の条件の詳細については
任意整理・4、任意整理を成功させるための条件を御覧下さい。)

     
Q7  任意整理をすると、どのくらい借金が減額されるのですか?
 
 専門家が任意整理を行う際には、依頼がなされる前に依頼者が貸金業者から請求されていた金額ではなく、依頼者が貸金業者に対して負担している正確な借金の金額(依頼者と貸金業者との間の取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した「借金の残額(元金の残額)」)を基準として和解金額(今後の返済総額)を定めて、貸金業者に対して和解案を提示します。

 そして、返済期間が5年を超えるような分割払いの和解案を提示するなどの特段の事情がない限り、多くの貸金業者が最終的には専門家から提示された和解案に応じているのが任意整理の現状です。(但し、全ての貸金業者が全く抵抗することもなく応じているわけではありません。)
 従って、利息制限法の制限利率を超える金利で営業している貸金業者に対して長期間に渡って返済を行い続けている場合には、それだけ多くの利息制限法の制限利率を超える利息を支払っていたことになりますので、任意整理をすると大幅な借金の減額を期待できることになります。
 また、場合によっては、借金の全額を「完済」している可能性もあり、さらには、「過払金」が発生している可能性もありえることになります。
(なお、事案(取引の内容や約定利率)にもよりますが、計算上においては、貸金業者との間で取引が絶え間なく「約6年間」継続している場合には、借金の全額を「完済」している可能性が高く、また、「過払金」が発生している可能性もありえます。
 具体例を挙げますと、仮に年率29.2%の約定利率で金50万円を借り入れて、その後、毎月、「約定の利息分」だけを返済し続けた場合には「5年5ヶ月間」で借金の全額が完済されていることになります。)


(注)貸金業者との間の取引期間が短い場合には、利息制限法の制限利率を超える利息を過度に支払っていたことにはなりませんので、大幅な借金の減額は期待できないことになります。また、利息制限法の制限利率の範囲内の金利で営業している一部の貸金業者や銀行などに対する借金については、そもそも利息制限法の制限利率を超える利息を支払っていたことにはなりませんので、借金の減額は必ずしも期待できないことになります。さらに、商品を分割払いで買ったときなどに生じるクレジット会社に立て替えてもらった代金についても、法律上は「借金」ではなく「立替金」となるため、利息制限法の適用がなく減額されることは必ずしも期待できないことになります。
 但し、和解金額を一括で返済することを前提に借主が無資力状態であることを繰り返し説明して粘り強く交渉すると、貸金業者によっては大幅な借金の減額(元本の減額)に応じてくることもあります。
 
 
    
Q8  任意整理をすると、遅延損害金や将来利息はどのように扱われるのですか?

 任意整理に関しては、「日本司法書士会連合会」などが以下のような「任意整理統一基準」を定めています。
 従って、専門家が任意整理を行う際には、以下の基準を守って職務を遂行することになります。
 
なお、以下の基準の趣旨を簡単に説明しますと、「利息制限法の制限利率(年率18%前後)を超える利息の支払を認めず、元本充当計算を徹底して借金を減額させて、さらには遅延損害金及び将来利息を付けないことにより、依頼者にとって返済可能な和解案を提示する。」ということです。

 ところで、「任意整理統一基準」に基づく和解案が提示された場合、現実に貸金業者がこれに応じるのかが問題となります。
 この点については、
(T)「任意整理統一基準」に反するような返済計画を立てても資力の乏しい依頼者が遂行することは困難であるため、「任意整理統一基準」に基づく和解案を拒否した場合には依頼者が「自己破産」をする可能性があり、その場合には全く返済されなくなってしまうリスクがあること
(U)「任意整理統一基準の存在」及び「任意整理統一基準に従って専門家が職務を遂行しなければならないこと」は、ほとんどの貸金業者に知れ渡っていること
 などの理由により、返済期間が5年を超えるような分割払いの和解案を提示するなどの特段の事情がない限り、多くの貸金業者が最終的には「任意整理統一基準」に基づく和解案に応じています。

 従って、特段の事情がない限り、遅延損害金や将来利息を付けずに貸金業者との間で和解が成立することが多いのが「任意整理」の「現状」です。

(ちなみに、当事務所では、消費者金融会社及びクレジット会社に対する全ての任意整理事件において、1円たりとも遅延損害金や将来利息を付けて和解をしたことは、これまで一度もありません。)



日本司法書士会連合会 任意整理統一基準

  1、「取引履歴の開示」
  取引当初からの全ての取引履歴(取引経過の記録)の開示を貸金業者に対して求
 めること。
 
  2、「残元本の確定」
  当初からの取引の経過を利息制限法の制限利率によって元本充当計算を行い、債
 務額(借金の額)を確定させること。なお、確定時は最終取引日を基準とする。

  3、「和解案の提示」
  和解案の提示にあたっては、それまでの遅延損害金、並びに、将来利息は付けない
 こと。


    
Q9  任意整理をすると、和解金の返済期間はどのくらいまで貸金業者は応じてくれるのですか
 
 和解金を「分割」で返済する場合の返済期間についてですが、実務上は、概ね「3年間〜5年間」を目安として和解が成立しています。

 しかし、返済期間が5年を超える分割払いの和解案を提示した場合には、遅延損害金や将来利息を付けることを要求するなど、抵抗してくる貸金業者が少なくありません。
 よって、返済期間を5年を超えるものとしなければ今後の返済計画が立てられない依頼者の場合、特段の事情がない限り、任意整理ではなく、自己破産や民事再生によって借金を整理することをお勧めします。

    
Q10  任意整理の手続が終了するまでには、どのくらいの期間がかかるのですか?

 端的にいうと「任意整理」は和解交渉ですから、和解案について貸金業者の同意がない限り、手続を成功させることができません。
 また、貸金業者が取引当初からの正確な取引履歴(依頼者と貸金業者との間の取引経過の記録)を開示しない限り、依頼者が貸金業者に対して負担している正確な借金の金額(依頼者と貸金業者との間の取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した「借金の残額(元金の残額)」)を明らかにすることができないため、和解案を提示することもできません。
 以上のことから分かるように、任意整理という手続の性質上、貸金業者側が和解の成立に向けて前向きな行動をとらなかったり、抵抗してくる場合を考えますと、任意整理の手続を成功させるまでに必要となる期間については、必ずしも事前に予測をつけることができません。
 但し、貸金業者が抵抗することもなく順調に手続が進んだ場合には、依頼がなされてから「約2ヶ月間」で和解が成立して手続が終了することもあります。

(注)平成17年7月19日に「貸金業者が保存してある全ての取引履歴を開示しない対応は違法であり不法行為を構成する。」と明確に判示する「最高裁判所判決」が下されてからは、顧客側から取引履歴の開示を求められた場合、すぐに取引当初からの正確な取引履歴を開示してくる貸金業者が増えてきています。よって、現在は、以前と比べて遙かに「任意整理」の手続には時間が掛からなくなってきています。


    
Q11  任意整理をすると、所有している財産は処分されてしまうのですか?
 
 任意整理は、自己破産のような裁判上の手続ではなく、私的な和解交渉ですので、任意整理をしたからといってそのことから直ちに強制的に財産が処分されるというようなことはありません。
 従って、和解交渉が決裂して担保権が実行されるなどの特段の事情がない限り、財産をそのまま所有することができます。


    
Q12  任意整理をすると、その後の日常生活にはどのような影響が及ぶのですか?
 
 任意整理は、自己破産のような裁判上の手続ではなく、私的な和解交渉ですので、任意整理をしたからといってそのことから直ちに強制的に財産が処分されるというようなことはなく、また、一定の資格や法律上の地位に就くことを制限されることもありません。
 従って、特段の事情がない限り、任意整理をしても、それまでと変わらない日常生活を送ることができます。

 但し、任意整理をした場合には、信用情報機関に「事故情報」として登録されることになります。
 そして、金融機関が融資の可否の審査をする場合、必ず信用情報機関に問い合わせて融資の申込人に関して「事故情報」が登録されていないかを確認しますので、「事故情報」が登録されている間は、通常、金融機関から融資を受けることができなくなります。
 従って、任意整理をした場合、その後は、通常、金融機関から融資を受けることができなくなります。

 なお、この信用情報機関に「事故情報」として登録されるデメリットは、「任意整理」の場合に限らず、「自己破産」や「個人民事再生」などの借金の整理(債務整理)を行った場合に共通するデメリットです。
 また、この「事故情報」は永久に登録されるというわけでは必ずしもなく、借金を整理した方法や各信用情報機関によって異なりますが、概ね「5年〜10年間」とされています。
 よって、任意整理をしても、概ね「5年〜10年間」が経過して「事故情報」の登録が抹消された後であれば、その時に本人が返済できるだけの資力を有している限り、金融機関から融資を受けられる可能性は充分にあります。

     
Q13  任意整理をすると、保証人にはどのような影響が及ぶのですか? 
 
 保証人が付いている借金に関して借主本人から依頼を受けて専門家が貸金業者に対して「受任通知」を送った場合、特段の事情がない限り、貸金業者はすぐに保証人に対して保証されている借金の全額の支払いを請求するようになります。
 また、この場合、通常、保証人は「分割」ではなく保証した借金の全額を「一括」で支払わなければならなくなります。
 以上のことから、保証人が保証した借金の全額を「一括」で支払うことができない場合には、保証人自身も任意整理をするなど、何らかの法的な手段をとる必要があります。
 
よって、保証人になってもらった方には大きな負担を掛けることになりますので、任意整理をする前に保証人になってもらった方にきちんと現在の状況を説明しておいたほうがよいでしょう。

     
Q14  ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費による借金がある場合でも、任意整理はできますか?
 
 任意整理は、裁判上の手続ではなく、私的な和解交渉ですので、借金の理由は全く問題になりません。

 従って、ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費による借金がある場合でも任意整理の手続を成功させることができます。

    
Q15  利息制限法の制限利率の範囲内の金利で営業をしている一部の貸金業者や銀行などに対する借金について任意整理をした場合、借金を減額させることはできるのですか

 利息制限法の制限利率の範囲内の金利で営業をしている一部の貸金業者や銀行などに対する借金については、そもそも借主は利息制限法の制限利率を超える利息を支払っていたことにはなりませんので、その意味においては借金の減額は期待できないことになります。
 しかし、遅延損害金や将来利息を付けない元金のみを返済するという和解案には、多くの貸金業者が応じているのが任意整理の「現状」です。
 また、和解金額を一括で返済することを前提に借主が無資力状態であることを繰り返し説明して粘り強く交渉すると、貸金業者によっては大幅な借金の減額(元本の減額)に応じてくることもあります。
 さらには、分割で支払う場合でも、返済期間を「約5年間(場合によっては、それ以上の期間)」まで延長させることができることもあります
 従って、利息制限法の制限利率の範囲内の金利で営業をしている一部の貸金業者や銀行などに対する借金についても、任意整理をするメリットは充分にあります。

     
Q16  一部の借入先である貸金業者に対してだけ任意整理をすることはできますか

 一部の借入先である貸金業者に対してだけ任意整理をすることは可能です。
 例えば、「住宅ローンや自動車ローンなどの担保権がついている借金で、貸金業者と和解交渉が決裂したことによって担保権が実行されるリスクを回避したい場合」や「保証人が付いている借金で、利息制限法の制限利率による減額も期待できず保証人にどうしても迷惑をかけたくない場合」などには、それら以外の借金についてだけ任意整理をするということは、実務上、少なくありません。
 但し、そのような特段の事情がない限り、一部の借入先である貸金業者に対してだけ任意整理をすることには全く意味がないため、お勧めできません。


    
Q17  任意整理は、自分一人でできますか
 
「任意整理を自分一人でできるか、否か。」は、簡単にいいますと、法律上は可能であるが、現実には困難であるとおもわれます。
 日常的に訴訟事件を山ほど抱えて処理している貸金業者と法律の素人である借主本人との間には、法律知識に差がありすぎるために、借主本人だけで和解交渉をしても、著しく不利な和解をさせられる可能性が高いとおもわれます。
 
とくに、当初からの取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した「借金の残額(元金の残額)」を和解金額とする和解案を借主本人が貸金業者に対して提示したとしても、全く相手にされない可能性が高いと思われます。
(そのような和解案を貸金業者が簡単に応じるのであれば、そもそも利息制限法を超える金利で営業するわけがありません。また、貸金業者から取引当初からの正確な取引履歴(借主本人と貸金業者との間の取引経過の記録)を開示させること自体、借主本人だけで請求しても困難を伴う可能性があります。)
 専門家が代理人として介入しているからこそ、貸金業者は、約定利率による借金の請求を諦めて、取引当初からの正確な取引履歴を速やかに開示して、利息制限法の制限利率に引き直して算出した「借金の残額(元金の残額)」以下の金額で和解に応じてくるのです。
 自分一人で任意整理を成功させることが絶対に不可能ということはありませんが、正確な借金の金額(当初からの取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した「借金の残額(元金の残額)」)を基準とした和解をしたいのであれば、専門家に依頼することをお勧めします。


 なお、専門家に依頼すれば、必ず、正確な借金の金額(当初からの取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した「借金の残額(元金の残額)」)を基準とした和解をすることができるわけではありません。専門家の中には、1円でも和解金額を低くしようと半年かかろうが1年かかろうが妥協することなく熱心に貸金業者と交渉をする専門家もいれば、必ずしも熱心に貸金業者と交渉をしない専門家がいるのも事実です。また、それ以上にひどい専門家になると、利息制限法という法律の存在及び内容について依頼者に説明をせず、貸金業者から全ての取引履歴を開示させずに、一部の取引履歴を根拠に和解金額を定めて、どう考えても返済計画に無理があり、すぐに破綻することが明らかな和解を平気で成立させる専門家もいます。(そのような専門家に依頼した後で当事務所に相談に来て、利息制限法という法律の存在及び内容を初めて知った人も数多くいます。)
 
よって、任意整理を専門家に依頼する場合には、当該専門家の資質・能力にも充分に気をつけて下さい。
(とくに、依頼をする際には、「専門家は任意整理統一基準に従って職務を遂行しなけばならないこと」に関して具体的な説明を求めるようにして下さい。)

     
Q18  任意整理をするための費用はどのくらいかかるのですか
 
 任意整理を専門家に依頼する場合には、専門家に支払う「報酬」が掛かることになります。
 そして、専門家の「報酬」については、現在、自由化されており、各専門家の事務所によって異なります。
 
 ところで、専門家の「報酬」は「一括」で支払うことが原則ですが、どうしても「一括」で用意できない場合には、誠意をもって依頼者側が御願いすれば、専門家の方でも任意整理を考えている人がお金が無いことは分かっていることですので、「分割払い」等に応じてくれる専門家も少なくないと思われます。よって、どうしても「報酬」を「一括」で用意できない場合には誠意をもって専門家に相談してみて下さい。




                                         


 4、「過払い金についてよくある質問(Q&A)」



 Q1 過払い金とは、何ですか?
    
 Q2 なぜ、過払い金が発生するのですか?
   
 Q3 消費者金融会社やクレジット会社との間の取引期間がどのくらい長いと過払い金が発生することにな
    りますか?
   
 Q4 過払い金の返還請求を成功させるためには、依頼者は何をする必要がありますか
   
 Q5 契約書や領収書が見つからない場合、過払い金の返還請求を諦めなければなりませんか?
   
 Q6 借金を完済して消費者金融会社やクレジット会社との取引が既に終了しているのですが、過払い金の
    返還請求はできますか?
   
 Q7 過払い金の返還請求は、必ず訴訟を提起することによって行われるのですか?
   
 Q8 過払い金の返還請求について決着が付くまで、どのくらいの期間がかかるのですか?
   
 Q9 過払い金の返還請求をした場合、何かデメリットはありますか?
   
 Q10 過払い金の返還請求は、自分一人でできますか?
   
 Q11 過払い金の返還請求をするための費用はどのくらいかかるのですか?
  




Q1  過払い金とは、何ですか
 
「過払い金」とは、借金が完済されているにもかかわらず、借主が貸金業者に対して返済を行ってしまったことによって生じる、借主が貸金業者に対して返還請求できる金銭をいいます。

 この「過払い金」については、「借主が貸金業者に対して返済をしなければならないもの」ではなく、「貸金業者が借主に対して返済をしなければならないもの」である点に最大の特徴があります。

 つまり、ある貸金業者に対して「過払い金」を有している人は、その貸金業者に対する借金が完済されている上に、さらに、その貸金業者から金銭の返還を請求することができるのです。

 なお、通常、「過払い金」は、消費者金融会社やクレジット会社との間で長期間の取引がある場合に発生します。

 また、「過払い金の返還請求」は、「自己破産」・「個人民事再生」・「任意整理」のいずれの手続とも併せて行うことができます。

     
Q2  なぜ、過払い金が発生するのですか?

「利息制限法」という法律が貸金の利息について「年率18%」前後まで利率を制限しています。
 にもかかわらず、消費者金融会社やクレジット会社はこの法律に反する金利(年率28%前後)で営業をしているため、借主は過度に利息を支払い続けていることになります。 
 これにより、消費者金融会社やクレジット会社に対して長期間に渡って返済を続けている人には「過払い金」が発生することになります。

(なお、この点の詳細については
過払い金の返還請求・2、なぜ、「過払い金」が発生するのか?を御覧下さい。)

    
Q3  消費者金融会社やクレジット会社との間の取引期間がどのくらい長いと過払い金が発生することになりますか

 具体例を挙げますと、仮に年率29.2%の約定利率で金50万円を借り入れて、その後、毎月、「約定の利息分」だけを返済し続けた場合には「5年5ヶ月間」で借金の全額が完済されて過払い金が発生している状態になります。

 よって、事案(取引の内容や約定利率)にもよりますが、計算上においては、貸金業者との間での取引が「約6年間」絶え間なく継続している場合には、過払い金が発生している可能性が高いことになります。

    
Q4  過払い金の返還請求を成功させるためには、依頼者は何をする必要がありますか

 
貸金業者から開示されてきた取引履歴(依頼者と貸金業者との間の取引経過の記録)の内容の正確性を検証するために、また、貸金業者から正確な取引履歴が開示されなかった時に過払い金を回収するために訴訟を提起した場合に貸金業者との間での取引の経過に関する事実を正確に主張し、その事実を裏付ける証拠を裁判所に提出するために、依頼者は以下の2点を行う必要があります。

@ 各貸金業者との間の取引経過に関する事実(「取引開始日」「借入額」及び「返済額」などの事実)を具体的に
 思い出すこと。
A 各貸金業者との間の取引経過に関する事実を証明する証拠(「契約書」「領収書」など)を探すこと。

 


(なお、以上の点の詳細については
過払い金の返還請求・3、過払い金の返還請求を成功させるための条件を御覧下さい。)
 
    
Q5  契約書や領収書が見つからない場合、過払い金の返還請求を諦めなければなりませんか?
 
 まず、顧客側から取引履歴(顧客と貸金業者との間の取引経過の記録)を開示するように請求された場合、貸金業者は保存してある全ての取引履歴を開示しなければならない法律上の義務を負担しています。
 よって、依頼者が探し続けてみたが契約書や領収書が見つからなかったとしても、貸金業者が法律上の義務をきちんと守り取引当初からの正確な取引履歴を開示してきた場合には、その取引履歴から正確な過払い金の金額(依頼者と貸金業者との間の取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した金額)を明らかにでき、また、その取引履歴が何よりの証拠となるため、契約書や領収書が見つからなくても、とりたてて問題なく過払い金の返還請求ができることになります。

 次に、貸金業者が法律上の義務をきちんと守らずに取引当初からの正確な取引履歴を開示してこなかった場合についてですが、契約書や領収書の一部が残存している場合はもちろんのこと、契約書や領収書が全く見つからなかったとしても、そのことから直ちに過払い金の返還請求を諦める必要はありません。
 貸金業者が取引当初からの正確な取引履歴を開示してこなかった場合、通常、訴訟を提起して過払い金の返還請求を行うことになります。そして、訴訟を提起した場合には、借主は、原則として、貸金業者との間での取引の経過に関する事実を正確に主張し、その事実を裏付ける証拠を裁判所に提出しなければなりません。
 但し、借主側で完全に正確な事実(1円単位まで正確な取引の経過に関する事実)を主張して証明しなければ裁判に勝てないというわけでは必ずしもなく、事案にもよりますが、残存する一部の契約書や領収書などの証拠によって、主張した取引経過の事実に一定水準の合理性があることを証明できれば、裁判に勝てる可能性は決して低くはありません。
 また、
前記のとおり、そもそも貸金業者は保存してある全ての取引履歴を開示しなければならない法律上の義務を負担しているのであり、残存する一部の契約書や領収書などの証拠によって、貸金業者がこの法律上の義務に反して取引履歴を開示
していないことを裁判上において証明できれば、貸金業者は取引当初からの正確な取引履歴を開示せざるを得なくなります。
 さらに、貸金業者との間の取引経過の事実を裏付ける証拠は契約書や領収書に限らず、他にもたくさん考えられます。(例えば、銀行口座からの引き落としによって返済をしていた場合には記帳されている通帳などが証拠になります。また、友人や知人と一緒に貸金業者の支店などへ借入や返済をしに行ったことがある場合にはその友人・知人が証人になります。)
 よって、契約書や領収書の一部が残存している場合はもちろんのこと、契約書や領収書が全く見つからなくても他の証拠によって貸金業者との間の取引経過の事実を証明できるのであれば、裁判に勝てる可能性はあるのであり、過払い金の返還請求を諦める必要はありません。

(但し、貸金業者が取引当初からの正確な取引履歴を開示してこず、契約書や領収書が全く無い状態で過払い金の返還請求の訴訟を提起する場合、「貸金業者との間の取引経過の事実を証明するために相当な時間と労力を消耗することになること。」及び「借主側が主張する取引経過の事実を裁判所が認めてくれない可能性もあること」を覚悟しなければなりません。よって、その場合には、「訴訟を提起するか、否か。」について、事前に専門家に相談することをお勧めします。)

 なお、平成17年7月19日に「貸金業者が保存してある全ての取引履歴を開示しない対応は違法であり不法行為を構成する。」と明確に判示し、全取引履歴を開示しなかった貸金業者に「慰謝料」の支払いを命じる「最高裁判所判決」が下されました。 (なお、この「最高裁判所判決」は、「最高裁判所のHPの裁判例情報」により参照できます。)
 この「最高裁判所判決」が下されて以降は貸金業者の対応も変わってきており、顧客側から取引履歴の開示を求められた場合、すぐに取引当初からの正確な取引履歴を開示してくる貸金業者も増えてきています。
 よって、現在は、以前に比べて遙かに、契約書や領収書が見つからなくても、過払い金を回収することができやすくなってきています。

    
Q6  借金を完済して消費者金融会社やクレジット会社との取引が既に終了しているのですが、過払い金の返還請求はできますか

 借金を完済して消費者金融会社やクレジット会社との取引が終了していても、その点については全く問題なく、過払い金の返還請求ができます。
 但し、特段の事情がない限り、過払い金の返還は10年間が経過すると時効が成立して請求することができなくなってしまいますので注意してください。
 

    
Q7  過払い金の返還請求は、必ず訴訟を提起することによって行われるのですか

 過払い金の返還請求については、貸金業者が取引当初からの正確な取引履歴(依頼者と貸金業者との間の取引経過の記録)を速やかに開示してきた場合には、特段の事情がない限り、返還する金額について交渉を重ねて貸金業者と和解をすることによって決着を付けることが通常です。
 他方で、貸金業者が取引当初からの正確な取引履歴を開示してこなかったり、返還する金額について折り合いが合わず交渉が決裂した場合には、訴訟を提起して決着を付けることになります。

 よって、過払い金の返還請求は、必ず訴訟を提起することによって行われるわけではなく、事案によっては、交渉によって決着を付けることになります。

    
Q8  過払い金の返還請求について決着が付くまで、どのくらいの期間がかかるのですか?

 過払い金の返還請求について決着が付くまでに要する期間についてですが、貸金業者が取引履歴を開示してこなかったりして徹底抗戦してくる場合には訴訟を提起して請求することになり、また、訴訟が長引くこともありえますから、必ずしも一概に判断することはできません。
 但し、貸金業者が抵抗することもなく順調に手続が進んだ場合には、依頼がなされてから「約2ヶ月間」で和解が成立して手続が終了することもあります。

(注)平成17年7月19日に「貸金業者が保存してある全ての取引履歴を開示しない対応は違法であり不法行為を構成する。」と明確に判示する「最高裁判所判決」が下されてからは、顧客側から取引履歴の開示を求められた場合、すぐに取引当初からの正確な取引履歴を開示してくる貸金業者も増えてきています。よって、現在は、以前と比べて遙かに過払い金の返還請求について決着が付くまで時間が掛からなくなってきています。


    
Q9  過払い金の返還請求をした場合、何かデメリットはありますか?
 
 過払い金の返還請求をした場合には任意整理を行ったものとして扱われ、信用情報機関に「事故情報」として登録される可能性があります。
 そして、金融機関が融資の可否の審査をする場合、信用情報機関に問い合わせて融資の申込人に関して「事故情報」が登録されていないかを確認しますので、「事故情報」が登録されている間は、通常、金融機関から融資を受けることができなくなります。
 従って、過払い金の返還請求をした場合、その後は、金融機関から融資を受けられなくなる可能性があります。

 なお、この信用情報機関に「事故情報」として登録されるデメリットは、「過払い金の返還請求」の場合に限らず、「自己破産」「個人民事再生」「任意整理」などの借金の整理(債務整理)を行った場合に共通するデメリットです。
 また、この「事故情報」は永久に登録されるというわけでは必ずしもなく、借金を整理した方法や各信用情報機関によって異なりますが、概ね「5年〜10年間」とされています。
 よって、過払い金の返還請求をしても、概ね「5年〜10年間」が経過して「事故情報」の登録が抹消された後であれば、その時に本人が返済できるだけの資力を有している限り、金融機関から融資を受けられる可能性は充分にあります。

(注)過払い金の返還請求は、端的にいうと、払い過ぎた利息を取り返すことであり、返済義務のあるもの(借金等)を返さないようにすることではありません。故に、過払い金の返還請求を行ったことを「資金需要者の返済能力の調査をするために必要な事項」として扱い、信用情報機関に「事故情報」として登録することは、理論上、無理がありすぎるといえます。また、「貸金業者はみなし弁済規定の定める各条件を満たして営業をしていない。」と判断する最高裁判所の判決が相次いで下された現在においては、より一層、無理がありすぎるといえます。よって、今後、このような扱いが変わる可能性がありえますので、このデメリットだけを気にして過払い金の返還請求を躊躇している方は、随時、御自分でよくお調べになってから最終的な判断を下してください。
 
    
Q10  過払い金の返還請求は、自分一人でできますか
 
「過払い金の返還請求を自分一人でできるか、否か。」は、簡単にいいますと、法律上は可能であるが、現実には困難であるとおもわれます。
 日常的に訴訟事件を山ほど抱えて処理している貸金業者と法律の素人である借主本人との間には、法律知識に差がありすぎるために、借主本人だけで過払い金の返還請求をしても、全く相手にされない可能性が高いと思われます。
(過払い金の返還請求に貸金業者が簡単に応じるのであれば、そもそも利息制限法を超える金利で営業するわけがありません。また、貸金業者から取引当初からの正確な取引履歴(借主本人と貸金業者との間の取引経過の記録)を開示させること自体、借主本人だけで請求しても困難を伴う可能性があります。)
 専門家が代理人として介入しているからこそ、貸金業者は、約定利率による借金の請求を諦めて、取引当初からの正確な取引履歴を速やかに開示して、過払い金の返還に応じてくるのです
 自分一人で過払い金の返還請求を成功させることが絶対に不可能ということはなく、前例が全くないわけではありませんが、確実に過払い金を回収したいのであれば、専門家に依頼することをお勧めします。


 なお、専門家に依頼をすれば、必ず、過払い金の返還請求を成功させることができるわけではありません。専門家の中には、1円でも多く過払い金を回収しようと時間と労力を惜しまずに粘り強く貸金業者と交渉をしたり、訴訟を提起することに躊躇をせずに「判決」によって解決を図ろうと努力をする専門家もいれば、他方で、安易に妥協して低額な金額で和解をすることによって決着を付けようとする専門家がいるのも事実です。また、それ以上にひどい専門家になると、利息制限法という法律の存在及び内容に関して依頼者に全く説明をせずに、貸金業者から全く過払い金を回収しようとしない専門家もいます。(そのような専門家に依頼した後で当事務所に相談に来て、利息制限法という法律の存在及び内容を初めて知った人も数多くいます。)さらにいえば、各貸金業者は、各専門家の「能力」や「実績」を見ながら、各専門家ごとに対応を変えて返還する過払い金の金額を決めたりしているのが「現実」です。
 
よって、過払い金の返還請求を専門家に依頼をする場合には、当該専門家の資質・能力にも充分に気をつけて下さい。(とくに、依頼をする際には、「過払い金」に関して具体的な説明を求めるようにして下さい。)

    
Q11  過払い金の返還請求をするための費用はどのくらいかかるのですか
 
 過払い金の返還請求を専門家に依頼をする場合には、専門家に支払う「報酬」が掛かることになります。
 そして、専門家の「報酬」については、現在、自由化されており、各専門家の事務所によって異なります。
 
 ところで、専門家の「報酬」は「一括」で支払うことが原則ですが、どうしても「一括」で用意できない場合には、誠意をもって依頼者側が御願いすれば、専門家の方でも過払金の返還請求を考えている人がお金が無いことは分かっていることですので、「分割払い」等に応じてくれる専門家も少なくないと思われます。よって、どうしても「報酬」を「一括」で用意できない場合には誠意をもって専門家に相談してみて下さい。
  



                        

          
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