個人民事再生について
1. 個人民事再生とは?
(1)「個人民事再生」とは?
「個人民事再生」とは、継続的にまたは反復して収入を得られる見込みはあるが、自ずからの収入・財産では返済が不可能な程に借金などの支払責任を抱えるおそれのある人が裁判所に申立てることによって、原則として、現在有している財産を処分することなく、残存する借金などの支払責任を軽減してもらう裁判上の手続をいいます。
(簡単にいえば、「個人民事再生」とは、「反復または継続して収入のある人が、今ある財産を処分せずに、借金の支払責任を軽減してもらう裁判上の手続」をいいます。)
この「個人民事再生」の手続は、平成12年の民事再生法の改正によって「通常の民事再生手続」とは異なる「特則上の民事再生手続」として設けられた制度です。
(具体的には、利用者を「個人」に限定して設けられた制度です。)
そして、この「個人民事再生」の手続は「小規模個人再生手続」と「給与所得者等再生手続」という2つの手続に分かれます。
(つまり、「個人民事再生」とは、「小規模個人再生手続」と「給与所得者等再生手続」という「2つの特則上の民事再生手続」の「総称」をいいます。)
また、「住宅ローン」が残っている人が民事再生手続によって借金を整理する場合、「住宅資金特別条項」という制度を利用すれば、一方では「住宅ローン」については支払方法を変更して今後も分割でその全額を支払うことにより「住宅」の所有を維持することができ、他方では「住宅ローン」以外の借金(消費者金融会社やクレジット会社に対する借金など)については減額させた上で分割で支払うことができます。
(2)「小規模個人再生手続」とは?
「小規模個人再生手続」とは、「個人民事再生」の一つであり、原則として、① 債務(借金等)の総額が金5000万円以下(但し、住宅ローンなどの債務を除く)で、② 継続的にまたは反復して収入を得る見込みのある人が、③手続終了後の3年間で法律が定める「最低弁済額」以上の金額を分割で返済すれば、全ての借金などの支払責任を免除させる裁判上の手続をいいます。
この「小規模個人再生手続」の場合には、各債権者(貸金業者等)に今後の返済計画案(これを「再生計画案」といいます。)について反対する機会が与えられます。つまり、手続を成功させるためには「再生計画案」について一定数の債権者(貸金業者等)から反対されないことが必要となります。 (具体的には、「再生計画案」について同意しないと回答した債権者(貸金業者等)の数が債権者総数の半数未満で、かつ、その同意しないと回答した債権者に対する「債務(借金等)の合計額」が「債務(借金等)の総額」の半分を超えないことが必要となります。)
なお、「再生計画案」は、法律で定められた「最低弁済額」以上の金額を返済するという内容でなければなりません。 この「小規模個人再生手続」における「最低弁済額」の判断基準を簡単に説明しますと、概ね、以下のとおりです。
- (Ⅰ)「債務(借金等)の総額」が100万円未満の場合、「債務の総額」の100%
- (Ⅱ)「債務(借金等)の総額」が100万円以上500万円以下の場合、100万円
- (Ⅲ)「債務(借金等)の総額」が500万円を超え1500万円未満の場合、「債務の総額」の20%
- (Ⅳ)「債務(借金等)の総額」が1500万円以上3000万円以下の場合は、300万円
- (Ⅴ)「債務(借金等)の総額」が3000を超え5000万円以下の場合は、「債務の総額」の10%
- (Ⅵ)但し、「債務(借金等)の総額」には「住宅ローン」「担保権が行使されることによって返済されることになる債務」及び「罰金」などは含まれません。
- (Ⅶ)また、民事再生手続においては、自己破産をした場合より多くの金額を債権者(貸金業者等)に返済しなければならないという原則(これを「精算価値保障の原則」といいます。)があります。よって、原則として、(Ⅰ)~(Ⅵ)の基準によって算出された最低弁済額の金額と申立人が所有しいる財産の評価額(担保権がついている財産の場合は、担保権が行使されても残存する評価額)の合計金額を比べていずれか多い金額が最終的に判断される「最低弁済額」となります。
- (Ⅷ)さらに、住宅の所有を維持するために「住宅資金特別条項」を利用する場合には、「最低弁済額」に加えて「住宅ローン」については「全額」を支払わなければなりません。
(注)以上の「最低弁済額」の基準は申立人に「住宅ローン」が無い場合、又は、申立人に「住宅ローン」があり「住宅資金特別条項」を利用する場合を前提にしています。申立人に「住宅ローン」があるが住宅の所有を諦めて「住宅資金特別条項」を利用しない場合には、以上の基準とは若干異なってきます。
「小規模個人再生手続」が成功した場合には、「再生計画案」に従って手続終了後の3年間(特別な事情がある場合には5年間まで延長が可能)で「最低弁済額」以上の金額を分割で返済すれば、原則として全ての借金などの支払責任が免除されることになります。
(3)「給与所得者等再生手続」とは?
「給与所得者等再生手続」とは、「個人民事再生」の一つであり、原則として、①「小規模個人再生手続」を利用することができる人の中で、② 給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、③ その収入の金額の変動の幅が小さいと見込まれる人が、④ 手続終了後の3年間で法律が定める「最低弁済額」以上の金額を分割で返済すれば、全ての借金などの支払責任を免除させる裁判上の手続をいいます。 (なお、③ その収入の金額の変動の幅が小さいと見込まれる人」の意味についてですが、一般的には、収入の変動の幅が「年収」を基準にして20%程度の範囲内にある人を意味すると解釈されています。)
この「給与所得者等再生手続」の場合には、「小規模個人再生手続」の場合とは異なり、各債権者に今後の返済計画案(これを「再生計画案」といいます。)について反対する機会は与られず、「再生計画案」を認可すべきかどうかについて意見をする機会だけしか与えられません。 (つまり、「給与所得者等再生手続」の場合には、仮に「再生計画案」について全ての債権者(貸金業者等)から反対されたとしても手続を成功させることができます。また、債権者から意見がなされても、その内容に合理性がない限り、手続を成功させることができます。)
なお、「給与所得者等再生手続」の場合も、「再生計画案」は、法律で定められた「最低弁済額」以上の金額を返済するという内容でなければなりません。
具体的には、「給与所得者等再生手続」における「最低弁済額」の基準は、基本的には「小規模個人再生手続」における「最低弁済額」の基準がそのまま適用されますが、注意すべきことは「最低弁済額は、法律で定められた可処分所得の2年分の合計額以上であること」という点が加重されていることです。
この「法律で定められた可処分所得の2年分の合計額」の意味を簡単に説明しますと、「申立人の収入から所得税・住民税・社会保険料及び政令が定めた最低限の生活を維持するための費用を引いた金額の2年分」を意味します。
「給与所得者等再生手続」が成功した場合には、「再生計画案」に従って手続終了後の3年間(特別な事情がある場合には5年間まで延長が可能)で「最低弁済額」以上の金額を分割で返済すれば、原則として全ての借金などの支払責任が免除されることになります。
(4)「小規模個人再生手続」と「給与所得者等再生手続」の違いは?
「小規模個人再生手続」と「給与所得者等再生手続」の主な違いは以下のとおりです。
①「給与所得者等再生手続」の場合、「小規模個人再生手続」の場合とは異なり、「申立人に給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、その収入の金額の変動の幅が小さいと見込まれること」が必要となる。
「小規模個人再生手続」を利用する場合には申立人に「① 継続的にまたは反復して収入を得る見込み」があれば足りるのに対して、「給与所得者等再生手続」を利用する場合には申立人に「② 給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、③ その収入の金額の変動の幅が小さいと見込まれること」が必要となります。
この違いについて具体例を挙げて説明しますと、一般的に「自営業者」の場合、「① 継続的にまたは反復して収入を得る見込み」があることは認められることになりますが、「② 給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込み」があることは認められません。よって、「自営業者」の場合、「小規模個人再生手続」を利用することはできても「給与所得者等再生手続」を利用することはできないことになります。
また、「サラリーマン」や「勤続年数の長いアルバイト・パートタイマー」の場合、「① 継続的にまたは反復して収入を得る見込み」や「② 給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込み」があることは認められることになりますが、「歩合」の部分が大きいことなどの理由により収入の変動の幅が大きい場合(一般的には、「年収」を基準にして20%を超える変動の幅がある場合)には、「③ その収入の金額の変動の幅が小さいと見込まれること」が認められないことになります。よって、その場合には、「小規模個人再生手続」を利用することはできても「給与所得者等再生手続」を利用することはできないことになります。
以上の意味において、「給与所得者等再生手続」を利用するための条件は、「小規模個人再生手続」を利用するための条件と比べて厳しいものとなっています。
なお、「給与所得者等再生手続」を利用できる人は、必然的に「小規模個人再生手続」も利用できることになりますが、どちらの手続を利用するかについては、申立人が「自由」に選択することができます。
②「給与所得者等再生手続」の場合には、「小規模個人再生手続」の場合とは異なり、債権者(貸金業者等)から「再生計画案」について反対されても、全く問題にならない。
「小規模個人再生手続」の場合には、各債権者(貸金業者等)に今後の返済計画案(これを「再生計画案」といいます。)について反対する機会が与えられます。
そして、手続を成功させるためには、「再生計画案」について、一定数の債権者(貸金業者等)から「反対」されないことが必要となります。
(具体的には、「再生計画案」について同意しないと回答した債権者の数が債権者の総数の半数未満で、かつ、その同意しないと回答した債権者に対する「債務(借金等)の合計額」が「債務(借金等)の総額」の半分を超えないことが必要となり、仮に、この条件が満たされなかった場合、手続は失敗することになります。)
これに対して、「給与所得者等再生手続」の場合には、各債権者に「再生計画案」について「反対」する機会は与られず、「再生計画案」を認可すべきかどうかについて「意見」をする機会だけしか与えられません。
つまり、「給与所得者等再生手続」の場合には、手続を成功させる上で「再生計画案」について「債権者から反対されるか、否か。」は全く問題となりません。
(具体的には、「給与所得者等再生手続」の場合には、仮に「再生計画案」について全ての債権者(貸金業者等)から反対されたとしても手続を成功させることができます。また、債権者から意見がなされても、その内容に合理性がない限り、手続を成功させることができます。)
以上の意味において、「給与所得者等再生手続」の場合、「小規模個人再生手続」の場合と比べて、手続が成功しやすくなっています。
なお、「給与所得者等再生手続」を利用できる人が、最初に「小規模個人再生手続」を利用して債権者からの不同意があり手続が失敗に終わったとしても、その後、あらためて「給与所得者等再生手続」を利用することができます。
③「給与所得者等再生手続」の場合、「小規模個人再生手続」の場合とは異なり、「最低弁済額」を算出する際の基準について「可処分所得の2年分の合計額以上であること」という点が加重されている。
「給与所得者等再生手続」の場合も、「再生計画案」は、「小規模個人再生手続」の場合と同様に、法律で定められた「最低弁済額」以上を返済するという内容でなければなりません。
具体的には、「給与所得者等再生手続」における「最低弁済額」の基準は、基本的には「小規模個人再生手続」における「最低弁済額」の基準がそのまま適用されますが、注意すべきことは「最低弁済額は、法律で定められた可処分所得の2年分の合計額以上であること」という点が加重されていることです。
この「法律で定められた可処分所得の2年分の合計額」の意味を簡単に説明しますと、「申立人の収入から所得税・住民税・社会保険料及び政令が定めた最低限の生活を維持するための費用を引いた金額の2年分」を意味します。
以上のとおり、「給与所得者等再生手続」の場合、「小規模個人再生手続」の場合と比べて「最低弁済額」が大きくなる可能性が高く、つまり、手続終了後に各債権者(貸金業者等)に対する返済総額が高額になりやすくなっています。
④ 補足
以上の「①~③」を踏まえて「小規模個人再生手続」又は「給与所得者等再生手続」のどちらを利用した方が申立人にとって有利なのかを「形式的」に考えた場合、「確実に手続を成功させる。」という視点からは「再生計画」についての債権者の不同意が全く問題とならない「給与所得者等再生手続」を利用すべきとなり、「手続終了後の各債権者(貸金業者等)に対する返済総額を少なくさせる。」という視点からは「最低弁済額」を算出する際に「可処分所得」の金額が問題とならない「小規模個人再生手続」を利用すべきということになります。
しかし、実務上においては、「小規模個人再生手続」が利用された場合、手続が失敗に終わると申立人が自己破産をしてしまうことにより返済される金額が低くなってしまうリスクを考慮して、債権者が「再生計画案」に反対することは少なく、失敗に終わる可能性は必ずしも高くはありません。
(なお、一般的には、消費者金融会社やクレジット会社や銀行などが「再生計画案」に反対することはほとんど無く、他方で、国民生活金融公庫などの政府系金融機関や信用金庫などは「再生計画」について反対することが多いといわれています。)
また、確かに「給与所得者等再生手続」を利用した場合の方が「小規模個人再生手続」を利用した場合と比べて「最低弁済額」の金額が大きくなるケースが多いといえますが、扶養者が多いことなどの理由により「政令が定める最低限の生活を維持するための費用」が高くなったり、アルバイトやパートタイマーでそもそも「年収」が低かったりして「可処分所得」の金額が低く算出されるケースも少なからずあり、「給与所得者等再生手続」を利用したからといって「小規模個人再生手続」の場合と比べて「最低弁済額」の金額が大きくなるとは必ずしも限りません。
以上のことから、実際に司法書士や弁護士などの専門家が「小規模個人再生手続」又は「給与所得者等再生手続」のどちらの手続を利用した方が当該依頼者にとって有利なのかを判断する際には、「債権者の種類」や「申立人の収入」や「扶養者の数などの申立人の生活状況」などを考慮しながら最終的な判断を下しています。
2. 住宅資金特別条項とは?
(1)「住宅資金特別条項」とは?
住宅資金特別条項」とは、現状のままでは「住宅ローン」を支払うことが困難な人が、「住宅ローン」の担保権がついた「住宅」を所有し続けるために、「住宅ローン」の支払方法を変更させるために設けられた制度です。
この「住宅資金特別条項」は「小規模個人再生手続」や「給与所得者等再生手続」などの民事再生手続を利用する際に一緒になって利用することができます。この場合、一方では「住宅ローン」については支払方法を変更して今後も分割でその全額を支払うことにより「住宅」の所有を維持することができ、他方では「住宅ローン」以外の債務(消費者金融会社やクレジット会社に対する借金など)については減額させた上で分割で支払うことができるようになります。
なお、「住宅資金特別条項」を利用するための主な条件は以下のとおりです。
- ① 申立人が住宅を所有していること。(共有でも可。)
- ② 住宅が申立人自身の居住の用に供する建物であること。(建物の床面積の2分の1以上が申立人の居住の用に供されていれば可。)
- ③ 住宅に「住宅ローン」の抵当権等が設定されていること。(住宅ローンの保証会社の求償権に関して抵当権等が設定されている場合も可。)
- ④ 住宅に「住宅ローン」以外の抵当権等が設定されていないこと。
- ⑤ 住宅以外の不動産にも住宅と共同して「住宅ローン」の抵当権等が設定されている場合には、住宅以外の不動産について「住宅ローン」の抵当権等より後順位の抵当権等が設定されていないこと。
- ⑥ 保証会社が「住宅ローン」について既に代位弁済をしていた場合には、代位弁済がなされた日から「6ヶ月」を経過する日までの間に「申立て」をしていること。
(2)「住宅ローンの変更方法」について
「住宅資金特別条項」を利用した場合には、「住宅ローン」の支払方法を以下のとおりに変更できるようになり、「住宅ローン」の支払いを容易にさせることができます。
(Ⅰ)期限の利益回復型
これは、「住宅ローン」の支払いを既に延滞しており「一括」で「住宅ローン」の全額を支払わなければならない場合に、再度「分割」で支払うことを認めてもらい、当初の約定の最終支払期日までに住宅ローンの全額(元本・利息・損害金の全て)を支払うようにする変更方法です。
(Ⅱ)弁済期間延長型
これは、「期限の利益回復型」による変更では「住宅ローン」の全額を支払えない場合に、最終支払期日を当初の約定の日から延長して支払期間を延長させることによって、「住宅ローン」の毎回の返済額を減額させる変更方法です。 この方法によれば、最終支払期日を当初の約定の日から10年間まで延長させることができます。 但し、変更後の最終支払期日における申立人の年齢が70歳を超えてはいけません。
(Ⅲ)元本据置型
これは、「弁済期間延長型」による変更でも「住宅ローン」の全額を支払えない場合に、支払期間の延長に加えて、一定期間内に限り元本については一部だけを支払えばよいとすることによって、一定期間内の「住宅ローン」の毎回の返済額を減額させる変更方法です。
この方法によれば、「住宅ローン」以外の債務(消費者金融会社やクレジット会社に対する借金など)を返済している期間においては、「住宅ローン」の毎回の返済額を減額させることができ、そして、「住宅ローン」以外の債務の返済が終了した後においては、「住宅ローン」の返済額を増額させることによって、住宅ローンの全額を完済させることができます。
なお、以上の「(Ⅰ)~(Ⅲ)」のいずれの変更方法を利用したとしても、「住宅ローン」の全額(元本・利息・損害金の全て)を支払わなければならず、減額させることはできません。
また、支払時期と支払時期との間隔や毎回の返済額は、支払方法が変更された後でも、当初の契約に定められていた基準におおむね沿うものでなければなりせん。
但し、「住宅資金特別条項」が利用された場合に権利の変更を受ける者(住宅ローン会社など)の「同意」がある場合には、以上の「(Ⅰ)~(Ⅲ)」以外の内容(「最終支払期日を当初の約定の日から10年間を超えて延長すること」「遅延損害金を免除してもらうこと」など)で「住宅ローン」の返済方法を変更することができます。
ちなみに、「住宅資金特別条項」は「住宅ローンの返済方法を変更することにより、その全額の返済を可能にさせること」を目的とする制度ですが、「住宅ローンの返済方法を変更することなく、当初の契約どおりにその全額を支払うこと」を内容とする形でも利用することができます。
実際には、そのような形(住宅ローンはこれまでどおりに支払い、住宅ローン以外の借金を減額させる形)で個人民事再生の手続を利用されることが圧倒的に多いようです。
3. 個人民事再生のメリット・デメリット
(1)個人民事再生のメリット
①「住宅」などの財産を手放すことなく借金を整理することができる。
「住宅資金特別条項」を利用して手続に成功すれば、一方では「住宅ローン」については支払方法を変更して今後も分割でその全額を支払うことにより「住宅」の所有を維持することができ、他方では「住宅ローン」以外の借金(消費者金融会社やクレジット会社に対する借金など)については減額させた上で分割で支払うことができるようになります。
また、個人民事再生の手続は、自己破産をした場合とは異なり、申立人の財産を現金化して借金の返済に充てるというようなことは手続上行われません。従って、手続が無事に成功した場合には、「住宅」以外の財産(担保権付きの財産は除く)もそのまま所有し続けることができます。
(但し、民事再生手続においては、自己破産をした場合より多くの金額を債権者(貸金業者等)に返済しなければならないという原則(これを「精算価値保障の原則」といいます。)があるため、原則として、手続終了後に申立人が再生計画案に基づいて各債権者(貸金業者)に支払う総額は申立人が所有しいる財産の評価額(担保権がついている財産の場合は、担保権が行使されても残存する評価額)の合計額以上でなければなりません。)
② 一定の資格や法律上の地位に就くことを制限されることがない。
自己破産の場合には、手続が無事に成功して終了するまでの間は、弁護士・司法書士・税理士などの士業、宅地建物取引主任者、生命保険募集人、旅行業務取扱主任者、警備員、後見人、補佐人、後見監督人などの一定の資格や法律上の地位に就くことを制限されます。しかし、個人民事再生の手続の場合には、このような制限はありません。
③ 借金を増大させた理由がギャンブルや浪費によるものであっても手続を成功させることができる。
自己破産の場合には、裁判所は申立人に「免責不許可事由」がある場合、原則として、申立人の借金の支払責任を免除する決定(「免責許可の決定」)を下すことができません。そして、申立人に「ギャンブルや浪費による借金があること」は「免責不許可事由」に該当するため、原則として、借金の支払責任が免除されないことになります。
しかし、個人民事再生手続の場合には、「ギャンブルや浪費による借金があること」は問題にされずに手続が進められます。
(2)個人民事再生のデメリット
① 原則として、手続終了後の3年間に渡って一定の金額を支払い続けなければならない。
自己破産の手続は借金を「免除」させるための手続であることから、手続が無事に成功して終了した後は、各債権者(貸金業者等)に返済をする必要は全くありません。
これに対して、個人民事再生の手続は借金を「減額」させるための手続であることから、手続が無事に成功して終了した後は、3年間に渡って(特別な事情がある場合には5年間まで延長が可能)、法律が定めた「最低弁済額」以上の金額を各債権者(貸金業者等)に分割で返済をしなければなりません。
この点が自己破産と比べた場合の個人民事再生の最大のデメリットといえるでしょう。
② 信用情報機関の保有する個人情報に「事故情報(ブラックリスト)」として登録される。
貸金業者は、信用情報機関の個人情報を主な判断材料の一つとして融資の可否を決定するため、通常、「事故情報」が登録されている間は貸金業者から融資は受けられなくなります。
但し、「事故情報」が登録されている期間は、一般的には「約5年~約10年間」といわれていますので、その期間が経過して「事故情報」が抹消された後であれば、その時に本人が返済できるだけの資力を有している限り、融資を受けられる可能性は充分にあります。
なお、この「事故情報」として登録されるデメリットは、「個人民事再生」をした場合に限るわけではなく、「自己破産」や「任意整理」などの借金の整理(債務整理)を行った場合に共通するデメリットです。
また、この「事故情報」の登録期間については、借金を整理した方法や信用情報機関によって異なってきます。
4. 個人民事再生の手続の流れ・期間
個人民事再生の手続の流れ及び期間についてですが、基本的には、小規模個人再生手続の場合と給与所得者等再生手続の場合とで異なることはありません。
但し、小規模個人再生手続の場合には各債権者(貸金業者等)に今後の返済計画案(これを「再生計画案」といいます。)について「反対」する機会が与えられますが、給与所得者等再生手続の場合には各債権者に「再生計画案」を認可すべきかどうかについて「意見」をする機会だけしか与えられないという違いがあることから、以下のとおりに手続の流れにおいて若干の違いがあります。
なお、個人民事再生の手続が終了するまでの具体的な期間についてですが、一般的には、裁判所に申立書を提出してから「約7ヶ月~約8ヶ月」の期間によって終了します。
小規模個人再生手続の場合
① 小規模個人再生手続の申し立て
(裁判所に申立書を提出。)
② 個人再生委員の選任
(裁判所が個人再生委員を選任する。個人再生委員は申立人の財産や収入などを調査したり、実現可能な再生計画案が提出されるように必要な勧告をしたりするなど、手続が適正に行われるように監督を行い続け、随時、その内容を裁判所に報告・意見する。)
③ 審尋の期日
(申立人は、指定された日時に出頭し、裁判官及び再生委員と面談。)
④ 小規模個人再生手続の開始の決定
(手続開始の条件が満たされている場合、裁判所から手続が開始される「決定」が下される。)
⑤ 債権届出期間
(債権者(貸金業者等)は、この期間中に、債権(借金等)の金額・内容などを裁判所に届け出ることができる。)
⑥ 一般異議申述期間
(申立人や他の債権者は、この期間中に、届け出のあった債権の存在・金額などについて異議を述べることができる。)
⑦ 評価の申立期限
(届け出のあった債権について異議が述べられた場合、この期間中に、債権者(または、申立人)は、当該債権に関して調査をした上で最終的な評価が下されることを裁判所に求めることができる。
なお、「⑦」までの債権調査の手続が終了した時点で、原則として、申立人の負担している債務(借金等)の総額が手続上において確定し、これにより、手続終了後に返済を受ける債権者が確定することになる。)
⑧ 再生計画案提出期限
(申立人は、この期間中に、今後の各債権者に対する返済計画案(「再生計画案」)を提出する。)
⑨ 書面決議に付する旨の決定
(申立人から提出された再生計画案に不備がない場合、裁判所から各債権者に再生計画案に反対する機会を与える「決定」が下される。
なお、裁判所は決定後速やかに再生計画案の写しを各債権者に送付する。
反対する債権者は書面で反対する旨の回答を行う。)
⑩ 回答書提出期限
(申立人から提出された再生計画案に反対する債権者は、この期間中に、書面で反対する旨の回答を行うことになる。)
⑪ 再生計画の認可決定
(「再生計画案」について同意しないと回答した債権者(貸金業者等)の数が債権者総数の半数未満で、かつ、その同意しないと回答した債権者に対する「債務(借金等)の合計額」が「債務の総額」の半分を超えておらず、また、それ以外の点においても特に不備が無い場合には、裁判所から「再生計画案」について認可する「決定」が下される。)
⑫ 再生計画の認可決定の確定
(この時点で全ての手続が終了したことになり、晴れて申立人の借金などの支払責任が軽減されることになる。
ここまでに要する期間は、一般的には、裁判所に申立書を提出してから、「約7ヶ月~約8ヶ月」。)
⑬ 再生計画の実行
(申立人は「再生計画案」に従って認可決定の確定日を含む月の翌月から各債権者に返済を行う。
なお、返済期間は原則として3年間であるが、例外として特別な事情がある場合には5年間まで延長することが可能。)
給与所得者等再生手続の場合
① 給与所得者等再生手続の申し立て
(裁判所に申立書を提出。)
② 個人再生委員の選任
(裁判所が個人再生委員を選任する。個人再生委員は申立人の財産や収入などを調査したり、実現可能な再生計画案が提出されるように必要な勧告をしたりするなど、手続が適正に行われるように監督を行い続け、随時、その内容を裁判所に報告・意見する。)
③ 審尋の期日
(申立人は、指定された日時に出頭し、裁判官及び再生委員と面談。)
④ 給与所得者等再生手続の開始の決定
(手続開始の条件が満たされている場合、裁判所から手続が開始される決定が下される。)
⑤ 債権届出期間
(債権者(貸金業者等)は、この期間中に、債権(借金等)の金額・内容などを裁判所に届け出ることができる。)
⑥ 一般異議申述期間
(申立人や他の債権者は、この期間中に、届け出のあった債権の存在・金額などについて異議を述べることができる。)
⑦ 評価の申立期限
(届け出のあった債権について異議が述べられた場合、この期間中に、債権者(または、申立人)は、当該債権に関して調査をした上で最終的な評価が下されることを裁判所に求めることができる。
なお、「⑦」までの債権調査の手続が終了した時点で、原則として、申立人の負担している債務(借金等)の総額が手続上において確定し、これにより、手続終了後に返済を受ける債権者が確定することになる。)
⑧ 再生計画案提出期限
(申立人は、この期間中に、今後の各債権者に対する返済計画案(「再生計画案」)を提出する。)
⑨ 債権者から意見を聴取する旨の決定
(申立人から提出された再生計画案に不備がない場合、裁判所から各債権者に再生計画案を認可すべきかどうかについて意見をする機会を与える「決定」が下される。
なお、裁判所は決定後速やかに再生計画案の写しを各債権者に送付する。
意見をする債権者は書面で意見する旨の回答を行う。)
⑩ 回答書提出期限
(申立人から提出された再生計画案に関して意見をする債権者は、この期間中に、書面で意見する旨の回答を行うことになる。)
⑪ 再生計画の認可決定
(「再生計画案」を認可すべきかどうかについて意見をする債権者(貸金業者等)がおらず(又は、意見がなされてもその内容に合理性がない)、また、それ以外の点においても特に不備が無い場合には、裁判所から「再生計画案」について認可する「決定」が下される。)
⑫ 再生計画の認可決定の確定
(この時点で全ての手続が終了したことになり、晴れて申立人の借金などの支払責任が軽減されることになる。
ここまでに要する期間は、一般的には、裁判所に申立書を提出してから、「約7ヶ月~約8ヶ月」。)
⑬ 再生計画の実行
(申立人は「再生計画案」に従って認可決定の確定日を含む月の翌月から各債権者に返済を行う。
なお、返済期間は原則として3年間であるが、例外として特別な事情がある場合には5年間まで延長することが可能。)
※ 個人民事再生の手続の具体的な流れや期間は、各裁判所の方針や個別的な事案によって異なることがあります。
5. 個人民事再生が認められるための条件
個人民事再生が認められるための主な条件は以下のとおりです。
① 申立人が個人であること
個人民事再生の手続を利用できるのは個人だけであり、法人が利用することはできません。
なお、外国人でも利用できます。
② 申立人に「破産の原因たる事実の生ずるおそれ」があること
自己破産が認められるための条件の一つに「申立人が支払不能の状態に陥っていること。」があります。
そして、「破産の原因たる事実の生ずるおそれがある。」とは「支払不能の状態に陥るおそれがある。」という意味です。 いいかえると、「破産の原因たる事実の生ずるおそれがある。」とは、借金などの返済が著しく困難になっているが「支払不能の状態」にまでは陥っていない状態を意味します。
従って、理屈の上では、「破産の原因たる事実の生ずるおそれ」があるから個人民事再生をすることによって借金を整理することは認められるが、「支払不能の状態」にまでは陥っていないから自己破産をすることは認められないというケースが起こりうることになります。
しかし、実務上は、この2つの意味は、ほとんど区別されていません。
つまり、実務上は、「支払不能」の該当性の判断も「破産の原因たる事実の生ずるおそれがある。」についての該当性の判断もほとんど区別されていません。
よって、「破産の原因たる事実の生ずるおそれがある。」についての該当性の判断をする際には、「支払不能」の該当性の判断をする際に一般的に用いられている基準をそのまま用いられることが多く、申立人の現在有している財産及び毎月の返済可能額(毎月の収入から毎月の生活費を引いた金額)によって、全ての債務(借金等)を3年以内に返済できなければ「破産の原因たる事実の生ずるおそれがある」と概ね判断されています。
(なお、「支払不能」の該当性の判断をする際に一般的に用いられている基準の詳細については「自己破産・4、自己破産が認められるための条件・(1)申立人が支払不能の状態に陥っていること」を御覧下さい。)
③ 申立人に将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること
この「将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがること」の該当性についてですが、必ずしもサラリーマンのような職業に就いている必要はなく、自営業者、勤続年数の長いアルバイト・パートタイマー、又は、年金受給者でも該当することになります。
なお、「将来」において収入を得る見込みがあることが必要なのであって、「現在」の収入の有無は必ずしも問題とならず、仮に「現在」は無職であっても近い「将来」において就業することが確実なのであれば、「将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがること」に該当することになります。
ところで、「小規模個人再生手続」を利用するためには申立人に「(Ⅰ)継続的にまたは反復して収入を得る見込み」があれば足りますが、「給与所得者等再生手続」を利用するためには、申立人に「(Ⅰ)継続的にまたは反復して収入を得る見込み」があるだけでは足りず、「(Ⅱ)給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、(Ⅲ)その収入の金額の変動の幅が小さいと見込まれること」が必要となります。
この違いについて具体例を挙げて説明しますと、一般的に「自営業者」の場合、「(Ⅰ)継続的にまたは反復して収入を得る見込み」があることは認められることになりますが、「(Ⅱ)給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込み」があることは認められません。よって、「自営業者」の場合、「小規模個人再生手続」を利用することはできても「給与所得者等再生手続」を利用することはできないことになります。
また、「サラリーマン」や「勤続年数の長いアルバイト・パートタイマー」の場合、「(Ⅰ)継続的にまたは反復して収入を得る見込み」や「(Ⅱ)給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込み」があることは認められることになりますが、「歩合」の部分が大きいことなどの理由により収入の変動の幅が大きい場合(一般的には、「年収」を基準にして20%を超える変動の幅がある場合)には、「(Ⅲ)その収入の金額の変動の幅が小さいと見込まれること」が認められないことになります。よって、その場合には、「小規模個人再生手続」を利用することはできても「給与所得者等再生手続」を利用することはできないことになります。
以上の意味において、「給与所得者等再生手続」を利用するための条件は、「小規模個人再生手続」を利用するための条件と比べて厳しいものとなっています。
④ 申立人に「最低弁済額」を返済できるほどの収入を得る見込みがあること
個人民事再生の手続を利用するためには、申立人が将来において収入を得る見込みがあるだけでは足りず、法律が定める「最低弁済額」以上の金額を手続終了後の3年間(特別な事情がある場合には5年間まで延長が可能)で返済できるほどの収入を得る見込みがあることが必要となります。
なお、「最低弁済額」の判断基準を簡単に説明しますと、概ね、以下のとおりです。
- (Ⅰ)「債務(借金等)の総額」が100万円未満の場合、「債務の総額」の100%
- (Ⅱ)「債務(借金等)の総額」が100万円以上500万円以下の場合、100万円
- (Ⅲ)「債務(借金等)の総額」が500万円を超え1500万円未満の場合、「債務の総額」の20%
- (Ⅳ)「債務(借金等)の総額」が1500万円以上3000万円以下の場合は、300万円
- (Ⅴ)「債務(借金等)の総額」が3000万円を超え5000万円以下の場合は、「債務の総額」の10%
- (Ⅵ)但し、「債務(借金等)の総額」には「住宅ローン」「担保権が行使されることによって返済されることになる借金」及び「罰金」などは含まれません。
- (Ⅶ)そして、民事再生手続においては、自己破産をした場合より多くの金額を債権者(貸金業者等)に返済しなければならないという原則(これを「精算価値保障の原則」といいます。)があります。よって、原則として、(Ⅰ)~(Ⅵ)の基準によって算出された最低弁済額の金額と申立人が所有しいる財産の評価額(担保権がついている財産の場合は、担保権が行使されても残存する評価額)の合計金額を比べていずれか多い金額が最終的に判断される「最低弁済額」となります。
- (Ⅷ)また、住宅の所有を維持するために「住宅資金特別条項」を利用する場合には、「最低弁済額」に加えて「住宅ローン」については「全額」を支払わなければなりません。
- (Ⅸ)さらに、「給与所得者等再生手続」における「最低弁済額」の基準については、「最低弁済額は、法律で定められた可処分所得の2年分の合計額以上であること」という点が加重されることになります。この「法律で定められた可処分所得の2年分の合計額」の意味を簡単に説明しますと、「申立人の収入から所得税・住民税・社会保険料及び政令が定めた最低限の生活を維持するための費用を引いた金額の2年分」を意味します。
(注)以上の「最低弁済額」の基準は申立人に「住宅ローン」が無い場合、又は、申立人に「住宅ローン」があり「住宅資金特別条項」を利用する場合を前提にしています。申立人に「住宅ローン」があるが住宅の所有を諦めて「住宅資金特別条項」を利用しない場合には以上の基準とは若干異なってきます。
⑤ 申立人の債務(借金等)の総額が金5000万円以下であること
「申立人の債務(借金等)の総額」の中には以下のものは含まれません。
- (Ⅰ)住宅ローンの借金
- (Ⅱ)担保権が行使されることによって返済されることになる借金
- (Ⅲ)罰金等
また、消費者金融会社やクレジット会社に対する借金については、貸金業者から請求されている金額ではなく、貸金業者と取引を開始した当初から申立人が利息制限法の制限利率を超過して返済した利息金を元本に充当することにより再計算して減額された借金の金額が「申立人の債務(借金等)の総額」に加算されることになります。
つまり、貸金業者などから現実に請求されている金額を含めた借金の総額が金5000万円を超えていたとしても、利息制限法の制限利率に引き直して再計算をすると借金の総額が金5000万円以下になる場合には、個人再生手続を利用できることになります。
⑥「小規模個人再生手続」の場合には「再生計画案」について一定数の債権者(貸金業者等)から反対されないこと
「小規模個人再生手続」の場合には、各債権者に今後の返済計画案(これを「再生計画案」といいます。)について反対する機会が与えられます。そして、手続を成功させるためには、「再生計画案」について、一定数の債権者(貸金業者等)から反対されないことが必要となります。
(具体的には、「再生計画案」について同意しないと回答した債権者(貸金業者等)の数が債権者総数の半数未満で、かつ、その同意しないと回答した債権者に対する「債務(借金等)の合計額」が「債務(借金等)の総額」の半分を超えないことが必要となります。)
但し、「給与所得者等再生手続」の場合には、各債権者に「再生計画案」について反対する機会は与られず、「再生計画案」を認可すべきかどうかについて意見をする機会だけしか与えられません。
つまり、「給与所得者等再生手続」の場合には、手続を成功させる上で「再生計画案」について「債権者から反対されるか、否か。」は全く問題になりません。
(具体的には、「給与所得者等再生手続」の場合には、仮に「再生計画案」について全ての債権者(貸金業者等)から反対されたとしても手続を成功させることができます。また、債権者から意見がなされても、その内容に合理性がない限り、手続を成功させることができます。)
以上の意味において、「給与所得者等再生手続」の場合、「小規模個人再生手続」の場合と比べて、手続が成功しやすくなっています。
6、住宅資金特別条項が認められるための条件
- ① 申立人が住宅を所有していること。
住宅を夫婦や親子などで共有している場合でも認められます。 - ② 住宅が申立人自身の居住の用に供する建物であること。
住宅の全てを申立人の居住の用に供している必要はありません。例えば、住宅が事業所などを兼ねている場合には、床面積の2分の1以上が専ら申立人の居住の用に供されていれば認められます。 - ③ 住宅に「住宅ローン」の抵当権等が設定されていること。
住宅ローン自体に抵当権等が設定されていなくても、住宅ローンの保証会社の申立人に対する求償権に関して抵当権等が設定されている場合でも認められます。 - ④ 住宅に「住宅ローン」以外の抵当権等が設定されていないこと。
- ⑤ 住宅以外の不動産にも住宅と共同して「住宅ローン」の抵当権等が設定されている場合には、住宅以外の不動産について「住宅ローン」の抵当権等より後順位の抵当権等が設定されていないこと。
- ⑥ 保証会社が「住宅ローン」について既に代位弁済をしていた場合には、代位弁済がなされた日から「6ヶ月」を経過する日までの間に「申立て」をしていること。
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