- Q.1 個人民事再生とは、どのような手続なのですか?
- Q.2 個人民事再生と自己破産とでは、どのような違いがあるのですか?
- Q.3 個人民事再生と任意整理とでは、どのような違いがあるのですか?
- Q.4 個人民事再生は、どのような人が利用できるのですか?
- Q.5 個人民事再生をすると、どのくらい借金が減額されるのですか?
- Q.6 個人民事再生の手続が終了するまでには、どのくらいの期間がかかるのですか?
- Q.7 個人民事再生をすると、所有している財産は処分されてしまうのですか?
- Q.8 個人民事再生をすると、「住宅」の所有を維持しながら借金を整理することができるのですか?
- Q.9 個人民事再生をすると、その後の日常生活にどのような影響が及ぶのですか?
- Q.10 個人民事再生をすると、保証人にはどのような影響が及ぶのですか?
- Q.11 ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費による借金がある場合でも、個人民事再生はできますか?
- Q.12 小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続とでは、どのような違いがあるのですか?
- Q.13 個人民事再生は、自分一人でできますか?
- Q.14 個人民事再生をするための費用はどのくらいかかるのですか?
「個人民事再生」とは、継続的にまたは反復して収入を得られる見込みはあるが、自ずからの収入・財産では返済が不可能な程に借金などの支払責任を抱えるおそれのある人が裁判所に申立てることによって、原則として現在有している財産を処分することなく、残存する借金などの支払責任を軽減してもらう裁判上の手続をいいます。
(簡単にいえば、「個人民事再生」とは、「継続または反復して収入のある人が、今ある財産を処分せずに、借金の支払責任を軽減してもらう裁判上の手続」をいいます。)
この「個人民事再生」の手続は、平成12年の民事再生法の改正によって「通常の民事再生手続」とは異なる「特則上の民事再生手続」として設けられた制度です。(具体的には、利用者を個人に限定して設けられた制度です。)
そして、この「個人民事再生」の手続は「小規模個人再生手続」と「給与所得者等再生手続」という2つの手続に分かれます。
(つまり、「個人民事再生」とは、「小規模個人再生手続」と「給与所得者等再生手続」という「2つの特則上の民事再生手続」の「総称」をいいます。)
また、「住宅ローン」が残っている人が民事再生手続によって借金を整理する場合、「住宅資金特別条項」という制度を利用すれば、一方では「住宅ローン」については支払方法を変更して今後も分割でその全額を支払うことにより「住宅」の所有を維持することができ、他方では「住宅ローン」以外の借金(消費者金融会社やクレジット会社に対する借金など)については減額させた上で分割で支払うことができます。
2. 個人民事再生と自己破産とでは、どのような違いがあるのですか?
個人民事再生と自己破産の主な違いは、以下の6点です。
個人民事再生 | 自己破産 | |
① | 原則として、手続終了後の3年間に渡って、一定の金額を分割で支払い続けなければならない。 | 原則として、全ての借金の支払責任が免除されることになる。 |
② | 原則として、「住宅」などの財産を手放すことなく、借金を整理することができる。 | 原則として、全ての財産を失うことになる。 |
③ | 「将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込み」がある人でなければ利用することができない。 | 現在及び将来において収入が全く無い人でも利用することができる。 |
④ | 小規模個人再生手続の場合、今後の返済計画案について、一定数の債権者(貸金業者等)の同意が必要となる。(但し、全ての債権者の同意は必要としない。) | 基本的に債権者(貸金業者等)の同意を必要としない。 |
⑤ | 借金を増大させた理由が「ギャンブル」や「浪費」によるものであっても手続を成功させることができる。 | 借金を増大させた理由が「ギャンブル」や「浪費」による場合、「免責不許可事由」にあたり、原則として、借金の支払責任が免除されないことになる。 |
⑥ | 一定の資格や法律上の地位に就くことを制限されない。 | 手続が成功するまでの間、一定の資格や法律上の地位に就くことを制限される。 |
3. 個人民事再生と任意整理とでは、どのような違いがあるのですか?
個人民事再生と任意整理の主な違いは、以下の5点です。
個人民事再生 | 任意整理 | |
① | 通常、利息制限法に引き直し計算をして減額された後の借金の残額を、さらに減額した上で「分割」で支払うことになる。 | 通常、利息制限法に引き直し計算をして減額された後の借金の残額を「分割」又は「一括」で支払うことになる。 |
② |
「将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込み」がある人でなければ利用することができない。 | 返済資金を用意できる限り、現在及び将来において収入が全く無い人でも利用することができる。 |
③ | 給与所得者等再生手続の場合、今後の返済計画案について、債権者(貸金業者等)の同意を必要としない 。(但し、小規模個人再生手続の場合、一定数の債権者(貸金業者等)の同意は必要。) | 今後の返済計画案について、全ての債権者(貸金業者等)の同意を必要とする。 |
④ | 裁判上の手続である。従って、借主本人は裁判所に出頭しなければならない。 | 裁判上の手続ではない。従って、特段の事情がない限り、借主本人は裁判所に出頭する必要はない。 |
⑤ | 手続が終了するまでの期間については、裁判所に申立書を提出してから概ね「約7ヶ月~約8ヶ月」。 | 手続が終了するまでの期間については、必ずしも事前に予測をつけることができない。 |
4. 個人民事再生は、どのような人が利用できるのですか?
個人民事再生を利用するためには、申立人が以下の条件を満たしている必要があります。
- ① 申立人が「個人」であること。
- ② 申立人に 「破産の原因たる事実の生ずるおそれ」があること
- ③ 申立人に将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること
- ④ 申立人に「最低弁済額」を返済できるほどの収入を得る見込みがあること
- ⑤ 申立人の債務(借金等)の総額が金5000万円以下であること(但し、「住宅ローン」等の債務を除く。)
(なお、これらの条件の詳細については「個人民事再生・5、個人民事再生が認められるための条件」を御覧下さい。)
5. 個人民事再生をすると、どのくらい借金が減額されるのですか?
個人民事再生の手続が成功した場合には、手続終了後の3年間(特別な事情がある場合には5年間まで延長が可能)で、法律が定める「最低弁済額」以上の金額を分割で返済することにより、原則として、全ての債務(借金等)の支払責任が免除されることになります。
つまり、個人民事再生の場合、法律が定める「最低弁済額」まで債務(借金等)を減額することが可能となります。
ところで、「最低弁済額」の判断基準を簡単に説明しますと、概ね、以下のとおりになります。
- ①「債務(借金等)の総額」が100万円未満の場合、「債務の総額」の100%
- ②「債務(借金等)の総額」が100万円以上500万円以下の場合、100万円
- ③「債務(借金等)の総額」が500万円を超え1500万円未満の場合、「債務の総額」の20%
- ④「債務(借金等)の総額」が1500万円以上3000万円以下の場合は、300万円
- ⑤「債務(借金等)の総額」が3000万円を超え5000万円以下の場合は、「債務の総額」の10%
- ⑥ 但し、「債務(借金等)の総額」には「住宅ローン」「担保権が行使されることによって返済されることになる債務」及び「罰金」などは含まれません。
- ⑦ そして、民事再生手続においては、自己破産をした場合より多くの金額を債権者(貸金業者等)に返済しなければならないという原則(これを「精算価値保障の原則」といいます。)があります。よって、原則として、(1)~(7)の基準によって算出された「最低弁済額」の金額と申立人が所有しいる財産の評価額(担保権がついている財産は、担保権が行使されても残存する評価額)の合計金額を比べていずれか多い金額が最終的に判断される「最低弁済額」となります。
- ⑧ また、住宅の所有を維持するために「住宅資金特別条項」を利用する場合には、「最低弁済額」に加えて「住宅ローン」については「全額」を支払わなければなりません。
- ⑨ さらに、「給与所得者等再生手続」における「最低弁済額」の基準については、「最低弁済額は、法律で定められた可処分所得の2年分の合計額以上であること」という点が加重されることになります。この「法律で定められた可処分所得の2年分の合計額」の意味を簡単に説明しますと、「申立人の収入から所得税・住民税・社会保険料及び政令が定めた最低限の生活を維持するための費用を引いた金額の2年分」を意味します。
(注)以上の「最低弁済額」の基準は申立人に「住宅ローン」が無い場合、又は、申立人に「住宅ローン」があり「住宅資金特別条項」を利用する場合を前提にしています。申立人に「住宅ローン」があるが「住宅」の所有を諦めて「住宅資金特別条項」を利用しない場合には、以上の基準とは若干異なってきます。
6. 個人民事再生の手続が終了するまでには、どのくらいの期間がかかるのですか?
個人民事再生の手続が終了するまでの期間については、一般的には、裁判所に申立書を提出してから「約7ヶ月~約8ヶ月」の期間によって終了します。
但し、 個人民事再生の手続の具体的な流れや期間は、各裁判所の方針や個別的な事案によって異なることがあります。
7. 個人民事再生をすると、所有している財産は処分されてしまうのですか?
個人民事再生の場合は、自己破産の場合とは異なり、「申立人の財産を処分し現金化して借金の返済に充てる。」というようなことは手続上行われません。
従って、個人民事再生の手続が無事に成功した場合には、担保権が付いているものを除いては、そのまま財産を所有し続けることができます。
(但し、民事再生手続においては、自己破産をした場合より多くの金額を債権者(貸金業者等)に返済しなければならないという原則(これを「精算価値保障の原則」といいます。)があります。そのため、原則として、申立人が手続終了後に各債権者(貸金業者)に支払う総額は申立人が所有しいる財産の評価額の合計額以上でなければなりません。)
なお、「住宅資金特別条項」を利用して手続に成功すれば、「住宅ローン」については支払方法を変更して今後も分割でその全額を支払うことにより「住宅」の所有を維持することができます。
8. 個人民事再生をすると、「住宅」の所有を維持しながら借金を整理することができるのですか?
まず、「住宅ローン」がなく、「住宅」に抵当権等が設定されていない場合について説明します。
個人民事再生の場合は、自己破産の場合とは異なり、「申立人の財産を処分し現金化して借金の返済に充てる。」というようなことは手続上行われません。
従って、個人民事再生の手続が無事に成功した場合には、そのまま住宅を所有し続けることができます。
(但し、民事再生手続においては、自己破産をした場合より多くの金額を債権者(貸金業者等)に返済しなければならないという原則(これを「精算価値保障の原則」といいます。)があります。そのため、原則として、申立人が手続終了後に各債権者(貸金業者)に支払う総額は申立人が所有しいる財産の評価額の合計額以上でなければなりません。)
次に、「住宅ローン」が残っており、「住宅」に「住宅ローン」の抵当権等が設定されている場合について説明します。
この場合には、「住宅資金特別条項」を併せて利用して手続に成功すれば、一方では「住宅ローン」については支払方法を変更して今後も分割でその全額を支払うことにより「住宅」の所有を維持することができ、他方では「住宅ローン」以外の借金(消費者金融会社やクレジット会社に対する借金など)については減額させた上で分割で支払うことができます。
なお、「住宅資金特別条項」を利用するための主な条件は以下のとおりです。
- ① 申立人が「住宅」を所有していること。(共有でも可。)
- ②「住宅」が申立人自身の居住の用に供する建物であること。(建物の床面積の2分の1以上が専ら申立人の居住の用に供されていれば可。)
- ③「住宅」に「住宅ローン」の抵当権等が設定されていること。(住宅ローンの保証会社の求償権に関して抵当権等が設定されている場合も可。)
- ④「住宅」に「住宅ローン」以外の抵当権等が設定されていないこと。
- ⑤「住宅」以外の不動産にも「住宅」と共同して「住宅ローン」の抵当権等が設定されている場合には、「住宅」以外の不動産について「住宅ローン」の抵当権より後順位の抵当権等が設定されていないこと。
- ⑥ 保証会社が「住宅ローン」について既に代位弁済をしていた場合には、代位弁済がなされた日から「6ヶ月」を経過する日までの間に「申立て」をしていること。
(注)「住宅」に「住宅ローン」以外の抵当権が設定されている場合には、「住宅資金特別条項」を利用できないことから、特段の事情がない限り、個人民事再生をしても「住宅」の所有を維持することができません。それでも、「住宅」の所有を維持するために「住宅資金特別条項」を利用したい場合には、その抵当権者に対する借金の全額を支払うなどして抵当権を消滅させることが必要となります。但し、そのような場合には、専門的な知識が要求され一人で判断することは危険ですので、必ず事前に専門家に相談することを強くお勧めします。
9. 個人民事再生をすると、その後の日常生活にどのような影響が及ぶのですか?
個人民事再生の場合は、自己破産の場合とは異なり、「申立人の財産を処分し現金化して借金の返済に充てる。」というようなことは手続上行われません。
よって、担保権が付いているものを除いては、そのまま財産を所有し続けることができます。
また、個人民事再生の場合には、自己破産の場合とは異なり、申立人に一定の資格や法律上の地位に就くことを制限されることもありません。
従って、基本的には、個人民事再生をしても、それまでと変わらない日常生活を送ることができます。
但し、個人民事再生をするなど裁判所を通して借金の整理をした場合には、信用情報機関に「事故情報」として登録されることになります。
そして、金融機関が融資の可否の審査をする場合、必ず信用情報機関に問い合わせて融資の申込人に関して「事故情報」が登録されていないかを確認しますので、「事故情報」が登録されている間は、通常、金融機関から融資を受けることができなくなります。
従って、個人民事再生をした場合、その後は、通常、金融機関から融資を受けることができなくなります。
なお、この信用情報機関に「事故情報」として登録されるデメリットは、「個人民事再生」の場合に限らず、「自己破産」や「任意整理」などの借金の整理(債務整理)を行った場合に共通するデメリットです。
また、この「事故情報」は永久に登録されるというわけでは必ずしもなく、借金を整理した方法や各信用情報機関によって異なりますが、概ね「5年~10年間」とされています。
よって、個人民事再生をしても、「5年~10年間」が経過して「事故情報」の登録が抹消された後であれば、その時に本人が返済できるだけの資力を有している限り、金融機関から融資を受けられる可能性は充分にあります。
10. 個人民事再生をすると、保証人にはどのような影響が及ぶのですか?
まず、「住宅ローン」以外の借金の保証人に対する影響について説明します。
個人民事再生をした場合、個人民事再生をした本人の支払責任は軽減されますが、保証人の支払責任は全く軽減されません。
従って、貸金業者は、本人が個人民事再生をすると、保証人に対して保証した借金の全額の支払いを請求するようになります。
また、この場合、通常、保証人は「分割」ではなく保証した借金の全額を「一括」で支払わなければならなくなります。
以上のことから、保証人が保証した借金の全額を「一括」で支払うことができない場合には、保証人自身も自己破産や民事再生や任意整理をするなど、何らかの法的な手段をとる必要があります。
よって、保証人になってもらった方には大きな負担を掛けることになりますので、個人民事再生をする前に保証人になってもらった方にきちんと現在の状況を説明しておいたほうがよいでしょう。
次に、「住宅ローン」の保証人に対する影響について説明します。
「住宅ローン」が残っている人が個人民事再生の手続によって借金を整理する場合、「住宅資金特別条項」を併せて利用すれば、「住宅ローン」については支払方法を変更して今後も分割でその「全額」を支払うことにより、「住宅」の所有を維持することができるようになります。
そして、この効力は、「住宅ローン」の保証人にも及ぶとされています。
従って、個人民事再生の手続が無事に成功し、その後、本人が「住宅ローン」を延滞せずにきちんと支払っている限り、保証人が「住宅ローン」について請求されることはありません。
よって、「住宅資金特別条項」を利用し手続に成功すれば、「住宅ローン」の保証人になってもらった方に迷惑を掛けなくて済むようになります。
(但し、「住宅資金特別条項」を利用しなかった場合には、基本的には、前述の「住宅ローン」以外の借金の保証人に対するものと同様の影響が「住宅ローン」の保証人に及ぶことになります。)
11. ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費による借金がある場合でも、個人民事再生はできますか?
自己破産の場合には、裁判所は申立人に「免責不許可事由」がある場合、原則として、申立人の借金の支払責任を免除する決定(「免責許可の決定」)を下すことができません。そして、申立人に「ギャンブルや浪費による借金があること」は「免責不許可事由」に該当するため、原則として、自己破産をしても借金の支払責任が免除されないことになります。
これに対して、個人民事再生の場合には、「申立人にギャンブルや浪費による借金があること」は問題にされずに手続は進められます。
従って、ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費による借金がある場合でも、個人民事再生の手続を成功させることができます。
12. 小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続とでは、どのような違いがあるのですか?
小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続の主な違いは、以下の3点です。
小規模個人再生手続 | 給与所得者等再生手続 | |
① | 申立人に「継続的にまたは反復して収入を得る見込み」があれば利用できる。 | 申立人に「継続的にまたは反復して収入を得る見込み」があるだけでは足りず、「給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、その収入の金額の変動の幅が小さいと見込まれること」が利用するには必要となる。 |
② | 各債権者(貸金業者等)に今後の返済計画案(これを「再生計画案」といいます。)について反対する機会が与えられる。 そして、手続を成功させるためには、「再生計画案」について、一定数の債権者(貸金業者等)から反対されないことが必要となる。 |
各債権者(貸金業者等)に「再生計画案」について反対する機会は与えられない。 つまり、手続を成功させる上で「再生計画案」について「債権者から反対されるか、否か。」は問題とならない。 |
③ | 「最低弁済額」を算出する際の基準について、「可処分所得の2年分の合計額以上であること」という点が全く問題とならない。 つまり、手続終了後の各債権者に対する「返済総額」を低く押さえることができる。 |
「最低弁済額」を算出する際の基準について、「可処分所得の2年分の合計額以上であること」という点が加重されている。 つまり、手続終了後の各債権者に対する「返済総額」が高額になりやすくなっている。 |
(なお、以上の「①~③」の詳細については「個人民事再生・1、個人民事再生とは?・(4)「小規模個人再生手続」と「給与所得者等再生手続」の違いは?」を御覧下さい。) |
13. 個人民事再生は、自分一人でできますか?
「個人民事再生を自分一人でできるか、否か。」は、簡単にいいますと、法律上は可能であるが、現実には困難であるとおもわれます。
自己破産の場合、申立人に財産がなくて「免責不許可自由」も特に無いことにより「同時破産廃止事件」として処理される場合には、比較的簡単に手続が進められることになります。よって、そのような場合には、専門家に依頼をせずに自分一人で自己破産の手続を成功させることができた人も少なくありません。
(もちろん、そのような場合でも「成功できるか、否か。」は、本人の「意思」と「能力」と「覚悟」にもよります。)
これに対して個人民事再生の場合には、自己破産の場合とは異なり、手続が終了した後に各債権者(貸金業者等)に一定額を返済していくことを前提とする手続ですから、「申立人が誰にいくら借金があるのか。今後、誰にいくら返済をしていくのか。」などを必ず手続上確定しなければならないため、手続が極めて複雑なものになっています。(とくに、「住宅資金特別条項」を併せて利用する場合には、より一層に手続が複雑なものになっています。)
従って、専門家に依頼をせずに自分一人で個人民事再生の手続を成功させることは困難といわざるをえません。
自分一人で個人民事再生の手続を成功させることが絶対に不可能ということはありませんが、確実に手続を成功させたいのであれば、専門家に依頼することをお勧めします。
(とくに、「住宅資金特別条項」を併せて利用する場合には、手続が失敗に終わると「住宅」を失うことにもなりかねませんので、専門家に依頼することを強くお勧めします。)
なお、専門家の中でも、個人民事再生の手続をよく理解していない人が少なくありません。
実際には、自己破産の依頼は受けるが、個人民事再生の依頼は受けないという不勉強な専門家が少なくありません。
また、それ以上にひどい専門家になると、依頼者に個人民事再生という手続の存在を説明せず、依頼者に個人民事再生を選択する機会を与えず、自己破産をすることを強く進める専門家もいます。
(そのような専門家に相談した後で当事務所に相談に来て初めて個人民事再生の手続を知った人も数多くいます。)
よって、個人民事再生を専門家に依頼する場合には、当該専門家の資質・能力にも充分に気をつけて下さい。
(とくに、「住宅資金特別条項」を併せて利用する場合には、手続が失敗に終わると「住宅」を失うことにもなりかねませんので、専門家を選ぶ際にはより一層に慎重になってください。)
14. 個人民事再生をするための費用はどのくらいかかるのですか?
まず、本人が個人民事再生の申し立てをする際に「裁判所に納める諸費用」は以下のとおりです。
(なお、以下の例は「横浜地方裁判所」の場合を参考にしており、各裁判所によって異なることがあります。)
合計・約20万5000円 | |
再生委員の報酬・官報公告費用(現金) | 金19万2268円 |
申立書貼用印紙(収入印紙) | 1万円 |
予納郵券(切手) |
140円×債権者(貸金業者等)の数分 20円×債権者(貸金業者等)の数分 1円×10組 |
次に、専門家に依頼をする場合には「裁判所に納める諸費用」とは別に専門家に支払う「報酬」が掛かることになります。
そして、専門家の「報酬」については、現在、自由化されており、各専門家の事務所によって異なります。
ところで、専門家の「報酬」は「一括」で支払うことが原則ですが、どうしても「一括」で用意できない場合には、誠意をもって依頼者側が御願いすれば、専門家の方でも個人民事再生を考えている人がお金が無いことは分かっていることですので、「分割払い」等に応じてくれる専門家も少なくないと思われます。よって、どうしても「報酬」を「一括」で用意できない場合には誠意をもって専門家に相談してみて下さい。
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