- Q.1 自己破産はどのような場合にできるのですか?
- Q.2 自己破産をすると、全ての財産を失うことになるのですか?
- Q.3 自己破産をすると、全ての借金の支払責任が免除されるのですか?
- Q.4 自己破産をすると、いつから借金を返済しなくてよくなるのですか?
- Q.5 自己破産の手続は、失敗することはないのですか?
- Q.6 自己破産の手続は、どのくらいの期間がかかるのですか?
- Q.7 自己破産をすると、戸籍・住民票・免許書などに記載されるのですか?
- Q.8 自己破産をすると、選挙権がなくなるのですか?
- Q.9 自己破産をすると、資格が制限されるのですか?
- Q.10 自己破産をすると、住所を移転したり、海外旅行をすることができなくなるのですか?
- Q.11 自己破産をすると、現在住んでいる賃貸マンションや賃貸アパートから出て行かなければならないのですか?
- Q.12 自己破産をしたことは家族や世間一般の人に知られてしまいますか?
- Q.13 自己破産をしたことは会社に知られてしまいますか?
- Q.14 自己破産をしたことを理由に会社は従業員を解雇できるのですか?
- Q.15 自己破産をすると、代わりに家族が支払わなければならないのですか?
- Q.16 自己破産をしたことが子供の進学・就職・結婚に影響しますか?
- Q.17 自己破産をすると、家族も借り入れができなくなるのですか?
- Q.18 ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費による借金がある場合(「免責不許可事由」がある場合)でも自己破産はできますか?
- Q.19 住宅を所有しているのですが、自己破産をすると処分しなければならないのですか?
- Q.20 自動車を所有しているのですが、自己破産をすると処分しなければならないのですか?
- Q.21 生命保険は自己破産をすると解約しなければいけないのですか?
- Q.22 退職金は自己破産をするともらえなくなるのでしょうか?
- Q.23 年金は自己破産をすると受給できなくなるのですか?
- Q.24 携帯電話は自己破産をすると使えなくなるのでしょうか?
- Q.25 自己破産をした後は、永久に借り入れができなくなるのですか?
- Q.26 自己破産をすると、保証人にはどのような影響が及ぶのですか?
- Q.27 自己破産をした後に、貸金業者が嫌がらせをしてきたり、しつこく請求してきたりすることはないのですか?
- Q.28 自己破産をする前に、家族や友人に対する借金だけを返済することはできますか?
- Q.29 自己破産は、自分一人でできますか?
- Q.30 自己破産をするための費用はどのくらいかかるのですか?
1. 自己破産はどのような場合にできるのですか?
自己破産をすることを裁判所に認めてもらうための主な条件は以下のとおりです。
(1)申立人が「支払不能」の状態に陥っていること
(2)申立人に「免責不許可事由」がないこと、又は、「裁量免責」されること
この2つの条件を簡単に説明しますと、
(1)申立人が現在負担している借金を返済できるだけの資力がなく、また、近く入手できる見込みがないこと
(2)ギャンブルや浪費による借金などの借り入れた理由に問題があったり、裁判所に対して事実に反することを報告するなどの法が定める「自己破産をしても借金の支払責任を免除することが許可されない事由(免責許可事由)」が申立人にないこと、又は、それらの「免責不許可事由」があっても裁判所の裁量によって借金の支払責任を免除してもらう決定(裁量免責)を下してもらうことということになります。
なお、この2つの条件の詳細については「自己破産・4、自己破産が認められるための条件」を参照して下さい。
2. 自己破産をすると、全ての財産を失うことになるのですか?
自己破産をしても、全ての財産を失うことにはなりません。
以下の「①~⑥」などの財産は、原則として自己破産をしても失うことはなく、そのまま所有することができます。
- ① 日常生活を維持していく上で必要な家財道具(テレビ、冷蔵庫、衣料品等。但し、高額なものは除く。)
- ② 金20万円以下の財産(金額は時価額で算出)
- ③ 金99万円に満つるまでの現金
- ④ 退職金の4分の3以上(場合によっては、退職金の全額)
- ⑤「①~④」以外の財産で、生活上不可欠なものであることなどの理由により、そのまま所有することを裁判所が特に認めた財産
- ⑥ 自己破産の手続が開始された後に申立人が取得した給料・財産
つまり、自己破産をしても、日常生活に支障が生じるまでに財産を失うことはないということです。
3. 自己破産をすると、全ての借金の支払責任が免除されるのですか?
自己破産をすると、貸金業者に対する借金などの全ての支払責任が原則として免除されることになります。
但し、以下の「①~⑦」などについては、自己破産をしても、支払責任を免れることはできません。
- ① 税金等の公租公課
- ② 破産者が悪意をもって加えた不法行為に基づく損害賠償債務
- ③ 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償義務
- ④ 養育費・婚姻費用・扶養義務等
- ⑤ 従業員に対する給料の支払義務等
- ⑥ 破産者が故意に裁判所に届け出なかった借金等
- ⑦ 罰金等
4. 自己破産をすると、いつから借金を返済しなくてよくなるのですか?
「貸金業の規制等に関する法律」は、本人が自己破産の申立て(裁判所に申立書を提出すること。)をして、その旨の「通知」が裁判所から貸金業者になされると、それ以降は貸金業者が自己破産をした本人に対して正当な理由もなく電話・FAX・訪問等による直接的な取立行為をすることを原則として禁止しています。
また、「貸金業の規制等に関する法律」は、本人が司法書士や弁護士に借金の整理を依頼した場合には、自己破産の申立てを待つまでもなく、司法書士や弁護士からの「介入通知(依頼を受けた旨の通知)」が貸金業者になされた時点から、貸金業者が本人に対して正当な理由もなく電話・FAX・訪問等による直接的な取立行為をすることも原則として禁止しています。
なお、「貸金業の規制等に関する法律」は、貸金業者が裁判所からの「通知」や司法書士などからの「介入通知」を無視して正当な理由もなく借主に電話・FAX・訪問等による直接的な取立行為を続けた場合には、「1年以内の業務停止の処分」又は「登録の取り消しの処分」という「行政処分」や「2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」という「刑事罰」の対象となることを定めています。
以上のことから、自己破産の手続が成功して終了することを待つまでもなく、裁判所からの「通知」や司法書士などからの「介入通知」が貸金業者へなされた時点から貸金業者からの取り立ては通常止まりますので、その時点から「事実上」借金の返済をしなくてよくなります。
(注)「十日で一割、十日で三割」などと違法に高額な利息を徴収したり、「脅迫」めいた取り立てをしている未登録の貸金業者(いわゆる「ヤミ金融」と呼ばれるもの)は、そもそも法律を守って営業を行う意思がないため、裁判所からの「通知」などを平然と無視して「違法」に取り立てを続けることがしばしばあります。よって、そのような「ヤミ金融」から借り入れがある場合には、司法書士や弁護士などの専門家に依頼したり、警察に相談して、取り立てを止めさせるための法的手段を別にとる必要があります。
5. 自己破産の手続は、失敗することはないのですか?
自己破産の手続も「裁判手続」である以上、最終的には裁判所が判断することであり、絶対に成功する手続とはいえません。よって、事案によっては失敗することがないわけではありません。
但し、自己破産という制度は、返済不可能なほどに借金を抱えてしまった人を救済し、人生の再出発をするための機会を与えようとする制度です。
また、仮に、自己破産が認められなかった場合、その認められなかった人は、依然として返済不可能なほどに借金を抱えて生活をしなければならず、結局のところ、夜逃げをするか自殺をするしかなくなってしまいます。
そこで、多くの裁判所は、自己破産という制度の意義を尊重して、広く自己破産を成功させる方向で審理をして判断を下しています。
(なお、平成15年に自己破産の申立てがなされた事件の中で「免責許可の決定」が下されなかったのは、全体の0.1%未満です。つまり、99.9%以上の確率で自己破産の手続は成功しているということです。)
なお、裁判所に自己破産することを認めてもらう上で最も重要なことは、自分が返済不可能なほどに借金を抱えてしまったこれまでの「生活態度」等を真剣に反省して、そして、裁判官を含めた周りの人たちに対して最後まで誠実な態度をとり続けることといえるでしょう。
6. 自己破産の手続は、どのくらいの期間がかかるのですか?
自己破産の手続が終了するまでの期間については、各裁判所の方針や個別的な事案によって異なりますが、一般的には、
- ①「管財事件」の場合には、裁判所に申立てをしてから「約6ヶ月~約1年」の期間、
- ②「同時破産廃止事件」の場合には、裁判所に申立てをしてから「約4ヶ月~約6ヶ月」の期間
を要するといえるでしょう。
なお、「管財事件」と「同時破産廃止事件」の詳細については、「自己破産・3、自己破産の手続の流れ・期間」を参照して下さい。
7. 自己破産をすると、戸籍・住民票・免許書などに記載されるのですか?
そのようなことは全くありません。そのような心配をする必要は全くありません。
世間一般では「自己破産」をした場合のデメリットに関して誤解されていることが多く、このような誤解はその典型的な例の一つといえるでしょう。
8. 自己破産をすると、選挙権がなくなるのですか?
そのようなことは全くありません。そのような心配をする必要は全くありません。
世間一般では「自己破産」をした場合のデメリットに関して誤解されていることが多く、このような誤解はその典型的な例の一つといえるでしょう。
9. 自己破産をすると、資格が制限されるのですか?
自己破産の手続中は一定の資格や法律上の地位に就くことが制限されることになります。
制限される資格や法律上の地位としては、弁護士・司法書士・税理士などの士業、宅地建物取引主任者、生命保険募集人、旅行業務取扱主任者、警備員、後見人、補佐人、後見監督人などがあります。
但し、自己破産の手続が問題なく終了し「免責決定」が確定した場合には、これらの制限はなくなることになります。
なお、医者や看護士、特別な職種を除く公務員については、自己破産をしても制限されることはありません。
10. 自己破産をすると、住所を移転したり、海外旅行をすることができなくなるのですか?
「管財事件」の場合には、居住地を変更したり、長期間に渡る海外旅行をする場合には、裁判所の許可を要することになります。
(但し、この制限は、破産手続の期間中(破産手続開始決定から破産手続の終了までの間)に限ります。)
「同時破産廃止事件」の場合には、以上のような制限はありません。
なお、「管財事件」と「同時破産廃止事件」の詳細については、「自己破産・3、自己破産の手続の流れ・期間」を参照して下さい。
11. 自己破産をすると、現在住んでいる賃貸マンションや賃貸アパートから出て行かなければならないのですか?
自己破産したことだけを理由として、家主が不動産賃貸借契約を解除し借主に立ち退きを求めることは法律上許されていません。
従って、自己破産をしても、家賃を滞納しているなどの特段の事情がない限り、現在住んでいる賃貸マンションや賃貸アパートにそのまま住み続けることができます
なお、自己破産をすれば家賃の支払責任も他の借金の支払責任と共に免除することができますが、家主から賃料の不払いを理由として不動産賃貸借契約を解除され借主に立ち退きを求めることは法律上認められています。
よって、自己破産をした後も現在住んでいる賃貸マンションや賃貸アパートにそのまま住み続けたいならば、不動産賃貸借契約が解除されないようにきちんと家賃を支払い続ける必要があります。
12. 自己破産をしたことは家族や世間一般の人に知られてしまいますか?
自己破産をしたことが世間一般の人に知られる可能性は基本的にはないと考えてよいとおもいます。
強いて、可能性があるものを挙げるとすれば、「官報」(国が情報を公開するために発行している新聞のようなもの)というものの存在が一応は挙げられます。
この点について具体的に説明しますと、自己破産をした場合、手続に関する情報が「官報」に掲載されることになります。
しかし、世間一般の人が「官報」を見ることは「通常」考えられませんし、また、そもそも、世間一般の人は「官報」というものの存在すら知らないのが「通常」であるとおもわれます。
(なお、 「官報」は随時発行されているものですし、1回の「官報」には何人もの自己破産をした人の情報が同時に掲載され、また、自己破産に関する情報は「官報」の掲載内容の一部分に過ぎません。)
よって、「官報」をとおして自己破産をしたことが世間一般の人に知られてしまう可能性も「通常」考えられないといっていいでしょう。
但し、自己破産をする場合、裁判所に提出する書面として、毎月の家計表や同居の家族の収入等を明らかにする書面など、家族の協力を得られないと提出することが困難なものがあります。また、自宅に裁判所や貸金業者から自己破産をしたことに関する通知などが届くこともありえます。
よって、同居している家族に知られずに自己破産をすることは不可能というわけではありませんが、長期間に渡って相当の困難を伴うことが予想されます。
裁判所に自己破産をすることを認めてもらう上で最も重要なことは、自分が返済不可能なほどに借金を抱えてしまったこれまでの「生活態度」等を真剣に反省して、そして、裁判官を含めた周りの人たちに対して最後まで誠実な態度をとり続けることです。
そのことを実践する始めの一歩として、自己破産をすることをきちんと家族に説明し、協力してもらうことをお勧めします。
13. 自己破産をしたことは会社に知られてしまいますか?
まず、自己破産をしたことが会社に知られてしまう可能性については、「世間一般の人に知られる可能性」(「Q12」参照)と同様に考えてよく、基本的にはないと考えていいと思います。
但し、自己破産の申し立てをする際には、申立人は全ての債権者(借入先等)の名称・所在地等を裁判所に伝えなければならず、そして、裁判所は自己破産の手続が適正に行われているかなどを確認するための機会を債権者(借入先等)に与えるために、全ての債権者(借入先等)へ自己破産の手続が開始されたことなどの通知書を送付します。
従って、会社から借り入れがある場合には、裁判所から会社へ通知書が送付されることになりますので、自己破産をしたことが会社に知られてしまうことになります。
なお、会社から借り入れがあるが、どうしても会社に自己破産をすることを知られたくない場合には、会社からの借金を申立人の親族や知人などの「第3者」に返済してもらうことによって、借入先を会社から申立人の親族や知人などの「第3者」に変更させる方法があります。
但し、原則として自己破産をするような状態の人が一部の借入先だけに返済することは法律上許されていませんので、「申立人自身」が会社からの借金だけを返済することは原則として許されませんので、その点はくれぐれも注意して下さい。
(会社から借り入れがあるが、どうしても会社に自己破産をすることを知られたくない場合には、事前に専門家に相談することをお勧めします。)
14. 自己破産をしたことを理由に会社は従業員を解雇できるのですか?
法律上、特段の事情がない限り、自己破産をしたことだけを理由に従業員を解雇することは許されていません。
よって、自己破産をしても、特段の事情がない限り、他に解雇されるような事由がなければ、そのまま働き続けることができます。
15. 自己破産をすると、代わりに家族が支払わなければならないのですか?
借主本人が自己破産をしても、保証人になっているなどの特段の事情がない限り、本人の家族が代わりに本人の借金を支払う必要は全くありません。
つまり、本人が自己破産をしたことだけを理由に、本人の家族に支払責任が生じるということは全くありません。
本人の家族が本人が自己破産をする前に本人の借金に関して何も支払責任を負担していないのであれば、全く心配する必要はありません。
16. 自己破産をしたことが子供の進学・就職・結婚に影響しますか?
まず、親が自己破産をしたことによって、子供の進学・就職・結婚に関して法律上において不利益に扱われるということは全くありません。
よって、その点に関しては、全く心配する必要はありません。
次に、進学・就職・結婚というものは、相手方の自由な裁量・判断によるところがありますので、その相手方が親が自己破産をしたことを気にする可能性があるという事実上の影響が一応は考えられます。
しかし、「Q12」で説明したように自己破産をしたことが世間一般の人に知られる可能性は基本的にはありません。また、そのことを相手方が積極的に調査することも「通常」考えられません。よって、事実上の影響も心配する必要はないとおもわれます。
(仮に、万が一に相手方に親が自己破産をしていることを知られ、かつ、相手方が親が自己破産をしていることを気に掛けたとしても、そのことから直ちに断られるということにはならないとおもわれます。また、進学・就職・結婚の相手方は無限に存在するわけです。よって、これらの意味においても事実上の影響を心配する必要はないとおもわれます。)
自己破産をしたことによる子供の人生に対する影響を気になさるのでしたら、一日でも早く借金の整理をして経済的な再起更生を実現し、親の借金で子供に不安感を抱かせないような平穏な生活を子供に約束することが、今後の子供の人格形成にとって大切なことではないでしょうか。
17. 自己破産をすると、家族も借り入れができなくなるのですか?
まず、借主本人が自己破産をしたことによって、法律上において借主本人の家族が借り入れができなくなるということは全くありません。
よって、その点に関しては、全く心配する必要はありません。
次に、借り入れができるか否かという問題は、そもそも貸主側の自由な裁量・判断によるものですので、貸主側が融資の可否を判断する際に、家族が自己破産をしていることを気にする可能性があるという事実上の影響が一応は考えられます。
実務上は、貸金業者が信用情報機関に問い合わせるなどして融資の可否の審査をする際に「同居の家族」が自己破産をしていることが判明した場合には、そのことを融資の可否の判断材料として考慮する場合があり、クレジットカードを作ることができなかったという前例がないわけではありません。(なお、全ての貸金業者がこのような扱いをしているわけではありません。)
しかし、完全に独立して生活をしている場合には、家族が自己破産をしていることだけを理由に借り入れができなくなるということは通常見うけられません。
以上のとおりであり、家族が自己破産をしても、本人が独立して生活をして返済できるだけの資力を有している限り、借り入れができなくなるということは通常はないと考えてよいとおもわれます。
(仮に、一部の貸金業者から家族が自己破産をしていることだけを理由に融資を断られたとしても、銀行やクレジット会社などの貸金業者は無限に存在するわけですから、本人が返済できるだけの資力を有している限り、全ての貸金業者から家族が自己破産をしていることだけを理由に融資を断られることは通常考えられず、この意味においても事実上の影響を心配する必要はないとおもわれます。)
18. ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費による借金がある場合(「免責不許可事由」がある場合)でも自己破産はできますか?
自己破産することを裁判所に認めてもらうための主な条件の一つとして、「申立人に「免責不許可事由」がないこと」が挙げられます。
この「免責許可事由」というものを簡単に説明しますと、「自己破産をしても借金の支払責任を免除することが許可されない事由」をいいます。
裁判所は申立人に「免責不許可事由」がある場合、原則として、申立人の借金の支払責任を免除する決定(「免責許可の決定」)を下すことができません。
そして、申立人に「ギャンブルや浪費による借金があること」は「免責不許可事由」に該当します。
よって、ギャンブルや浪費による借金がある場合は、原則として、自己破産の申し立てをしても、借金の支払責任を免除されないことになります。
但し、この点については、例外があります。
自己破産の申立てをした人に「免責不許可事由」があった場合でも、「申立人の反省の有無・程度」「免責不許可事由の内容・程度」「申立人の今後の更正の見込み」等を総合的に考慮して相当と判断される場合には、裁判所は自ずからの裁量で申立人の借金の支払責任を免除する決定(「免責許可の決定」)下すことができます。(これを「裁量免責」といいます。)
そもそも、自己破産という制度は、返済不可能なほどに借金を抱えてしまった人を救済し、人生の再出発をするための機会を与えるための制度です。また、自己破産の申立てをした多くの人に内容・程度の差はもちろんありますが「浪費」などの「免責不許可事由」があるのが現実です。従って、「免責不許可事由」があるからといってそのことから直ちに免責を許可しないという扱いをした場合、自己破産の申立てをした多くの人は人生の再出発をする機会を得られず、夜逃げをするか自殺をするしかなくなってしまいます。つまり、このような扱いが放置された場合、自己破産という制度の意義がなくなってしまいかねません。
そこで、「浪費」などの「免責不許可事由」のある人でも、これまでの生活態度を強く反省している場合には、裁判所は広く「裁量免責」を用いて「免責許可の決定」を下しています。
(なお、平成15年に自己破産の申立てがなされた事件の中で「免責許可の決定」が下されなかったのは、全体の0.1%未満です。つまり、99.9%以上の確率で「免責許可の決定」が下されています。)
以上のとおり、ギャンブルや浪費による借金がある場合(「免責不許可事由」がある場合)でも、本人が返済不可能なほどに借金を抱えてしまったことを真剣に反省し、そして、本人に更生の見込みがある場合には、裁判所の裁量により借金の支払責任を免除する決定(「免責許可の決定」)を下してもらえる可能性は充分にあるといえます。
19. 住宅を所有しているのですが、自己破産をすると処分しなければならないのですか?
自己破産とは、自ずからの収入・財産では返済が不可能な程に借金などの支払責任を抱えている人が裁判所に申立てることによって、現在有している全ての財産を放棄し、その全ての財産を現金化して借金などの返済に充て、それでもなお残存する借金などの全ての支払責任を免除してもらう裁判上の手続をいいます。
よって、自己破産の申し立てをした人が所有している住宅などの不動産は、売却されて現金化して借金などの返済にあてられることになります。
どうしても住宅を所有しながら借金を整理したい場合には、「個人民事再生」の手続によって借金を整理できるか検討してみて下さい。
なお、自己破産の申し立てをした後、直ちに住宅から引っ越さなければならなくなるわけではありません。実際にどのくらいの期間住み続けることができるかは、事案にもよりますが、住宅が売却されるまでの間(概ね、自己破産の申し立て後、半年~1年間ぐらい)はそのまま住み続けることができます。
20. 自動車を所有しているのですが、自己破産をすると処分しなければならないのですか?
まず、自己破産とは、自ずからの収入・財産では返済が不可能な程に借金などの支払責任を抱えている人が裁判所に申立てることによって、現在有している全ての財産を放棄し、その全ての財産を現金化して借金などの返済に充て、それでもなお残存する借金などの全ての支払責任を免除してもらう裁判上の手続をいいます。
よって、自己破産の申し立てをした人が所有している自動車などは、原則として、売却されて現金化して借金などの返済にあてられることになります。
但し、この点については例外があり、以下のような場合にはそのまま自動車を所有することができます。
- ① 自動車の時価が金20万円以下である場合
- ② 生活上不可欠なものであるなどの理由により裁判所が特にそのまま所持することを認めた場合
(但し、この「②」については、あくまでも例外的な処理であり、簡単には裁判所は認めてくれません。) - ③ 裁判所(管財人)の同意の下で、自己破産の手続が開始された後に申立人が得た給料等の財産で自動車の時価相当額を裁判所(管財人)に提供した場合
次に、自動車のローンが残っている場合には、ローンが完済されるまでローン会社に自動車の所有権が留保されており、そもそも申立人が所有していないのが通常です。
よって、自己破産をした場合、ローン会社はローンが完済できなくなったことを理由として所有権に基づいて自動車の引き渡し請求を申立人に対して行うのが通常であり、申立人はこれに応じなければなりません。
(なお、このローン会社の引き渡しの請求に対しては自動車の時価が金20万円以下であっても応じなければなりません。)
但し、自動車のローンが残っている場合で、どうしても自動車をそのまま使用し続けたい場合には、ローン会社と交渉することによって、親族や知人などの「第3者」にローン会社から自動車を買い取ってもらい所有者をローン会社から親族や知人などの「第3者」に変更させて、その「第3者」の同意の下で申立人がそのまま使用し続けるなどの方法が考えられます。
なお、原則として自己破産をするような状態の人が一部の借入先だけに返済することは法律上許されていませんので、申立人自身が自己破産の申し立てをする前にローン会社に対してだけ返済をすることは原則として許されませんので、その点はくれぐれも注意して下さい。
21. 生命保険は自己破産をすると解約しなければいけないのですか?
自己破産とは、自ずからの収入・財産では返済が不可能な程に借金などの支払責任を抱えている人が裁判所に申立てることによって、現在有している全ての財産を放棄し、その全ての財産を現金化して借金などの返済に充て、それでもなお残存する借金などの全ての支払責任を免除してもらう裁判上の手続をいいます。
よって、自己破産の申し立てをした人に生命保険の解約返戻金がある場合には、原則として、生命保険を解約して現金化して借金などの返済にあてられることになります。
但し、この点については例外があり、以下のような場合には解約をせずに済ますことができます。
- ① 掛け捨ての保険で、そもそも解約返戻金がない場合
- ② 積立型の保険であっても、解約返戻金が金20万円以下の場合
- ③ 生活上不可欠なものであるなどの理由により裁判所が特にそのまま解約しなくてよいことを認めた場合
(但し、この「③」については、あくまでも例外的な処理であり、簡単には裁判所は認めてくれません。) - ④ 裁判所(管財人)の同意の下で、自己破産の手続が開始された後に申立人が得た給料等の財産で解約したくない
生命保険の解約返戻金相当額を裁判所(管財人)に提供した場合
22. 退職金は自己破産をするともらえなくなるのでしょうか?
自己破産とは、自ずからの収入・財産では返済が不可能な程に借金などの支払責任を抱えている人が裁判所に申立てることによって、現在有している全ての財産を放棄し、その全ての財産を現金化して借金などの返済に充て、それでもなお残存する借金などの全ての支払責任を免除してもらう裁判上の手続をいいます。
よって、自己破産の申し立てをした人が会社から退職金の支払いを受けられる場合には、原則として、その退職金は借金などの返済にあてられることになります。
但し、退職金については、他の財産がある場合と異なって、数多くの裁判所が以下のような扱いをしています。
- ① 実際に申立人が放棄しなければならないのは退職金支払見込額の全額ではなく、退職金支払見込額の8分の1の金額
(退職金支払見込額の8分の1の金額が金20万円以下である場合には、退職金支払見込額の全額を放棄しなくてよい。) - ② 退職金の支払いを受けるために会社を辞める必要はなく、そのまま勤務を継続することができる。
(勤務を継続する場合には、自己破産の手続が開始された後に申立人が得た給料等の財産などで退職金支払見込額の8分の1の金額を裁判所(管財人)に提供しなければならない。) - ③ 申立人が勤務を継続したいが退職金支払見込額の8分の1の金額をどうしても提供できない場合には、生活上不可欠なものであるなどの理由により裁判所が特にそのまま退職金を放棄しなくてよいと認められることがある。
(但し、この「③」については、あくまでも例外的な処理であり、簡単には裁判所は認めてくれません。)
なお、「①」に関しては、破産手続中に現実に申立人が退職する場合には、横浜地方裁判所の方針では退職金の4分の1の金額を基準としています。
また、自己破産の手続が開始される前に申立人が退職金の支払いを受けていた場合には、退職金としてではなく、現金として扱われます。つまり、その場合には、金99万円を超える部分については放棄しなければならなくなります。
23. 年金は自己破産をすると受給できなくなるのですか?
自己破産したことが理由となり、年金の支給が打ち切れられるということはありません。
世間一般では「自己破産」をした場合のデメリットに関して誤解されていることが多く、このような誤解はその典型的な例の一つといえるでしょう。
24. 携帯電話は自己破産をすると使えなくなるのでしょうか?
自己破産をしても、通話料金を滞納しているなどの特段の事情がない限り、そのまま携帯電話を使用することができます。
なお、自己破産をすれば携帯電話の通話料金の支払責任も他の借金の支払責任と共に免除することができますが、携帯電話会社から通話料金の不払いを理由として契約を解除されることがありえます。
よって、自己破産をした後も携帯電話をそのまま使用したいならば、通話料金をきちんと支払い続ける必要があります。
25. 自己破産をした後は、永久に借り入れができなくなるのですか?
自己破産をしたことに限らず、専門家に依頼をしたり、裁判所を通して借金の整理をすると信用情報機関に「事故情報」として登録されることになります。
また、貸金業者が融資の可否の審査をする場合、必ず信用情報機関に問い合わせて融資の申込人に関して「事故情報」が登録されていないかを確認しますので、「事故情報」が登録されている間は、通常、融資を受けることができなくなります。
但し、この「事故情報」は永久に登録されるというわけでは必ずしもなく、借金を整理した方法や各信用情報機関によって異なりますが、概ね「5年~10年間」とされています。
よって、自己破産をしても「5年~10年間」が経過して「事故情報」の登録が抹消された後であれば、その時に本人が返済できるだけの資力を有している限り、融資を受けられる可能性は充分にあるといえます。
(なお、融資の可否の問題は、そもそも貸主側の自由な裁量・判断によるものですので、実際に申し込んでみないと融資の可否はわからないことになります。
しかし、仮に事故情報の登録が抹消された後に過去自己破産をしていることが融資の申し込みをしている際に何らかの形で発覚した場合でも、銀行やクレジット会社などの貸金業者は無限に存在するわけですから、その時に本人が返済できるだけの資力を有している限り、一部の貸金業者から過去自己破産をしていることだけを理由に融資を断られることはあっても、世の中の全ての貸金業者が過去自己破産をしていることだけを理由に融資を断ることは考え難く、この意味においても、自己破産をした後は永久に借り入れができなくなるわけではないことが分かると思います。)
26. 自己破産をすると、保証人にはどのような影響が及ぶのですか?
自己破産をした場合、自己破産をした本人の支払責任は免除されますが、保証人の支払責任は全く免除されません。
従って、貸金業者は、本人が自己破産をすると、保証人に対して保証した借金の全額の支払いを請求するようになります。
また、この場合、通常、保証人は「分割」ではなく保証した借金の全額を「一括」で支払わなければならなくなります。
以上のことから、保証人が保証した借金の全額を「一括」で支払うことができない場合には、保証人自身も自己破産や民事再生や任意整理をするなど、何らかの法的な手段をとる必要があります。
いずれにしても保証人になってもらった方には大きな負担を掛けることになりますので、自己破産をする前に保証人になってもらった方にきちんと現在の状況を説明しておいたほうがよいでしょう。
27. 自己破産をした後に、貸金業者が嫌がらせをしてきたり、しつこく請求してきたりすることはないのですか?
「貸金業の規制等に関する法律」は、本人が自己破産の申立て(裁判所に申立書を提出すること。)をして、その旨の「通知」が裁判所から貸金業者になされると、それ以降は貸金業者が自己破産をした本人に対して正当な理由もなく電話・FAX・訪問等による直接的な取立行為をすることを原則として禁止しています。
また、「貸金業の規制等に関する法律」は、本人が司法書士や弁護士に借金の整理を依頼した場合には、自己破産の申立てを待つまでもなく、司法書士や弁護士からの「介入通知(依頼を受けた旨の通知)」が貸金業者になされた時点から、貸金業者が本人に対して正当な理由もなく電話・FAX・訪問等による直接的な取立行為をすることも原則として禁止しています。
なお、「貸金業の規制等に関する法律」は、貸金業者が裁判所からの「通知」や司法書士などからの「介入通知」を無視して正当な理由もなく借主に電話・FAX・訪問等による直接的な取立行為を続けた場合には、「1年以内の業務停止の処分」又は「登録の取り消しの処分」という「行政処分」や「2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」という「刑事罰」の対象となることを定めています。
以上のことから、自己破産をした後に、貸金業者が「行政処分」や「刑事罰」が課されることを覚悟して、自己破産をした本人に対して嫌がらせをしてきたり、しつこく請求してきたりすることは、まず考えられないといっていいでしょう。
(注)「十日で一割、十日で三割」などと違法に高額な利息を徴収したり、「脅迫」めいた取り立てをしている未登録の貸金業者(いわゆる「闇金融」と呼ばれるもの)などは、そもそも法律を守って営業を行う意思がないため、「違法」に取り立てを続けることがしばしばありますので、そのような「闇金融」から借り入れがある場合には、自己破産をするだけではなく、司法書士や弁護士などの専門家に依頼したり、警察に相談して、取り立てを止めさせるための法的手段を別にとる必要があります。
28. 自己破産をする前に、家族や友人に対する借金だけを返済することはできますか?
債務者(借主)が自己破産をするほどに無資力状態に陥った場合には、一部の債権者(貸主等)が他の債権者に抜け駆けて債務者から返済を受けることは原則として許されません。この場合、全ての債権者は、各債権額(借金などの金額)に応じて各債権者と平等に債務者から返済を受けなければならないことが法律上定められています。(これを「債権者平等の原則」といいます。)
いいかえると、原則として自己破産をするような無資力状態の人が一部の債権者(貸主等)だけに返済をすることは法律上許されていません。
仮に、自己破産をするような無資力状態の人が正当な理由もなく一部の債権者(貸主等)だけに返済をした場合、原則として、その後に自己破産をしても裁判所から借金の支払責任を免除する決定を下してもらえなくなります。
以上のとおりであり、自己破産をする前に、家族や友人に対する借金であったとしても、一部の借入先だけに返済をすることは原則として許されませんのでくれぐれも注意してください。
なお、自己破産の手続が無事に成功した後(免責決定確定後)であれば、特段の事情がない限り、家族や友人に対する借金を返済することは可能となります。
29. 自己破産は、自分一人でできますか?
「自己破産を自分一人でできるか、否か。」は、簡単にいいますと、本人の「意思」と「能力」と「覚悟」と「事案」次第であるとおもわれます。
具体的に「自己破産を自分一人で行うか、否か。」の判断は、以下の点を参考にしてみて下さい。
- ① 自己破産の申し立てを専門家に依頼をせずに自分で行うことは法律上は可能です。
- ② 専門家に依頼をすれば報酬を支払うことになります。
- ③ 専門家に依頼をせずに自分一人で申し立てて自己破産の手続を成功させることができた人がいるのも事実です。
- ④ 専門家に依頼をせずに自分一人で申し立てて自己破産の手続を成功させることができた人も、実際には、司法書士会や市役所などの公的な機関が行っている「無料法律相談」等を利用して専門家と何度も相談をしながら手続を進めていた人が多いことも事実です。(つまり、専門家に「依頼」はしていないが、「相談」は何度もしていたということです。)
- ⑤ 専門家に依頼をせずに自分一人で申し立てを行おうとしたが、一人で行うには多くの時間と労力を消耗することになることに気づき、途中で挫折して、最終的には専門家に依頼をして自己破産をした人が多いことも事実です。
- ⑥ ギャンブルや浪費による借金があるなどの「免責不許可事由」がある場合や必要な財産である故にどうしてもその財産を所有し続けたい場合など、本人の主張を裁判所(または、管財人)に認めてもらえるようにするためには、どのように手続を進めるべきかを専門家でも即断できないような解決困難な事案は数多く存在します。そのような解決困難な事案の場合には、専門家に依頼をせずに申し立てがなされると、それによって起こりうる様々な不都合性を申立人に説明した上で、専門家に依頼することを裁判所が勧める場合もあります。
- ⑦ 司法書士や弁護士に借金の整理を依頼した場合、依頼を受けた司法書士や弁護士は「介入通知」を貸金業者へ速やかに行って貸金業者の本人に対する直接的な取立行為をすぐに止めさせ、本人は貸金業者からの取り立てや毎月の返済に悩まされることのない平安な日常生活をすぐに取り戻すことができるようになれます。つまり、専門家に依頼をした場合、本人は冷静な頭で今後の生活や借金の整理の方法を専門家と一緒になって考えることができる機会と時間をすぐに得られ、とりたてて不安を感じることなく手続を進めることができるようになれます。
以上の点を参考にしてみて下さい。
30. 自己破産をするための費用はどのくらいかかるのですか?
まず、個人が自己破産の申し立てをする際に「裁判所に納める諸費用」は以下のとおりです。
(なお、以下の例は横浜地方裁判所の場合を参考にしており、各裁判所によって異なることがあります。)
「同時破産廃止事件」の場合 合計・約1万3000円 | |
官報公告費用(現金) | 金1万0584円 |
申立書貼用印紙(収入印紙) | 1500円 |
予納郵券(切手) |
82円×債権者(貸金業者等)の数分 82円×保証人の数分 82円×5組 10円×1組 |
「管財事件」の場合 合計・約21万7000円~約51万7000円 | |
管財人の報酬(現金) |
約20万円~約50万円 (但し、このお金は必ずしも申立て時に用意できなくてもよく、一定期間内に分割払いで支払うこともできる。) |
官報公告費用(現金) | 金1万3834円 |
申立書貼用印紙(収入印紙) | 1500円 |
予納郵券(切手) |
82円×債権者(貸金業者等)の数分 82円×保証人の数分 82円×13組 10円×10組 |
次に、専門家に依頼をする場合には「裁判所に納める諸費用」とは別に専門家に支払う「報酬」が掛かることになります。
そして、専門家の「報酬」については、現在、自由化されており、各専門家の事務所によって異なります。
ところで、専門家の「報酬」は「一括」で支払うことが原則ですが、どうしても「一括」で用意できない場合には、誠意をもって依頼者側が御願いすれば、専門家の方でも自己破産を考えている人がお金が無いことは分かっていることですので、分割払い等に応じてくれる専門家も少なくないと思われます。よって、どうしても「報酬」を「一括」で用意できない場合には誠意をもって専門家に相談してみて下さい。
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