- Q.1 任意整理とは、どのような手続なのですか?
- Q.2 任意整理と自己破産とでは、どのような違いがあるのですか?
- Q.3 任意整理と個人民事再生とでは、どのような違いがあるのですか?
- Q.4 どのような場合に、自己破産や個人民事再生ではなく、任意整理によって借金を整理すればよいですか?
- Q.5 任意整理は、どのような人が利用できるのですか?
- Q.6 任意整理を成功させるためには、依頼者は何をする必要がありますか?
- Q.7 任意整理をすると、どのくらい借金が減額されるのですか?
- Q.8 任意整理をすると、遅延損害金や将来利息はどのように扱われるのですか?
- Q.9 任意整理をすると、和解金の返済期間はどのくらいまで貸金業者は応じてくれるのですか?
- Q.10 任意整理の手続が終了するまでには、どのくらいの期間がかかるのですか?
- Q.11 任意整理をすると、所有している財産は処分されてしまうのですか?
- Q.12 任意整理をすると、その後の日常生活にはどのような影響が及ぶのですか?
- Q.13 任意整理をすると、保証人にはどのような影響が及ぶのですか?
- Q.14 ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費による借金がある場合でも、任意整理はできますか?
- Q.15 利息制限法の制限利率の範囲内の金利で営業をしている一部の貸金業者や銀行などに対する借金について任意整理をした場合、借金を減額させることはできるのですか?
- Q.16 一部の借入先である貸金業者に対してだけ任意整理をすることはできますか?
- Q.17 任意整理は、自分一人でできますか?
- Q.18 任意整理をするための費用はどのくらいかかるのですか?
1. 任意整理とは、どのような手続なのですか?
「任意整理」とは、裁判所などの公的機関を利用せずに、司法書士などの専門家が本人に代わって貸金業者と交渉して、今後の債務(借金等)の返済方法について和解をする債務(借金等)の整理方法をいいます。
(簡単にいえば、「任意整理」とは、「今後の借金の返済方法について、専門家が代理人として和解交渉をする。」ということです。)
なお、司法書士などの専門家が「任意整理」をする場合には、以下の手順を踏むことになります。
- ① 貸金業者に対して「借金の整理の依頼を受けたこと」及び「今後、依頼者に対して直接的な取立行為を厳に慎む
- ② 貸金業者に対して依頼者に関する「取引履歴」(依頼者と貸金業者との間の取引の経過の記録)を開示するように請求する。
- ③ 開示された「取引履歴」を利息制限法の制限利率に引き直して元本充当計算を行い、借金の残額(元金の残額)を確定させる。
- ④ 確定させた借金の残額(元金の残額)以下の金額を和解金額(今後の返済総額)とする和解案を貸金業者に提示して和解交渉を開始する。
- ⑤ 和解成立後、貸金業者との間で和解契約書を作成する。
- ⑥ 和解金額を貸金業者が指定する銀行口座に振込送金する。
2. 任意整理と自己破産とでは、どのような違いがあるのですか?
任意整理と自己破産の主な違いは、以下の8点です。
任意整理 | 自己破産 | |
① | 通常、利息制限法の制限利率に引き直し計算をして減額された後の借金の残額を支払うことになる。 | 原則として、全ての借金の支払責任が免除されることになる。 |
② | 特段の事情がない限り、財産をそのまま所有することができる。 | 原則として、全ての財産を失うことになる。 |
③ | 和解金を支払うための資金を用意しなければならない。 | 財産が全く無い人でも利用することができる。 |
④ | 今後の返済計画案について、全ての債権者(貸金業者等)の同意を必要とする。 | 基本的に債権者(貸金業者等)の同意を必要としない。 |
⑤ | 裁判上の手続ではない。従って、特段の事情がない限り、借主本人は裁判所に出頭する必要はない。 | 裁判上の手続である。従って、借主本人は裁判所に出頭しなければならない。 |
⑥ | 借金を増大させた理由がギャンブルや浪費によるものであっても手続を成功させることができる。 | 借金を増大させた理由がギャンブルや浪費による場合、「免責不許可事由」にあたり、原則として、借金の支払責任が免除されないことになる。 |
⑦ | 手続中においても、一定の資格や法律上の地位に就くことを制限されない。 | 手続が成功するまでの間、一定の資格や法律上の地位に就くことを制限される。 |
⑧ | 手続が終了するまでの期間については、必ずしも事前に予測をつけることができない。 | 手続が終了するまでの期間については、通常、 (Ⅰ)「同時破産廃止事件」の場合には、裁判所に 申立書を提出してから「約4ヶ月~約6ヶ月間」、 (Ⅱ)「管財事件」の場合には、裁判所に申立書を 提出してから「約6ヶ月~約1年間」。 |
3. 任意整理と個人民事再生とでは、どのような違いがあるのですか?
任意整理と個人民事再生の主な違いは、以下の5点です。
任意整理 | 個人民事再生 | |
① | 通常、利息制限法に引き直し計算をして減額された後の借金の残額を「分割」又は「一括」で支払うことになる。 | 通常、利息制限法に引き直し計算をして減額された後の借金の残額を、さらに減額した上で「分割」で支払うことになる。 |
② | 返済資金を用意できる限り、現在及び将来において収入が全く無い人でも利用することができる。 | 「将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込み」がある人でなければ利用することができない。 |
③ | 今後の返済計画案について、全ての債権者(貸金業者等)の同意を必要とする。 | 給与所得者等再生手続の場合、今後の返済計画案について、債権者(貸金業者等)の同意を必要としない 。(但し、小規模個人再生手続の場合、一定数の債権者(貸金業者等)の同意は必要。) |
④ | 裁判上の手続ではない。従って、特段の事情がない限り、借主本人は裁判所に出頭する必要はない。 | 裁判上の手続である。従って、借主本人は裁判所に出頭しなければならない。 |
⑤ | 手続が終了するまでの期間については、必ずしも事前に予測をつけることができない。 | 手続が終了するまでの期間については、裁判所に申立書を提出してから概ね「約7ヶ月~約8ヶ月」。 |
4. どのような場合に、自己破産や個人民事再生ではなく、任意整理によって借金を整理すればよいですか?
一般的に、任意整理によって借金を整理する事案を挙げますと、主なものは以下のとおりです。
- ① 依頼者と貸金業者との間の取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して計算をすると大幅に借金が減額される状態で、あえて個人民事再生を利用する必要が無い場合
- ② 一部の貸金業者から回収できた過払金で残存する全ての借金を完済できる場合
- ③ 将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがなく個人民事再生を利用できないが、住宅などの手放したくない財産があることなどが理由となり、自己破産をすることを避けたい場合
- ④ 保証人が付いている借金があり保証人にどうしても迷惑をかけたくなくて、自己破産や個人民事再生をすることを避けたい場合
- ⑤ 個人民事再生によっても任意整理による場合と貸金業者に対する返済総額がほとんど変わらず、個人民事再生を利用した場合の「裁判所に納める諸費用(約20万円)」などを考慮すると、任意整理によった方が依頼者に掛かる経済的負担を軽く済ませる場合(具体的には、借金の総額が100万円強だったり、高額な財産を有しているため精算価値が高い場合など)
なお、専門家がいかなる手続によって借金を整理すべきかについて判断を下す場合には、事案によっては、依頼者と何度も面談を重ねて事実関係を完全に把握した上で、依頼者の希望も含めて様々な点を考慮しながら最終的な判断を下すことが少なくありません。
これは、自己破産・個人民事再生・任意整理という3つの手続には、その性質上、様々な違いがあり、それぞれの手続にメリット・デメリットがあることによります。
よって、いかなる手続によって借金を整理すべきかについては、必ずしも即断できるものではなく、また、必ずしも明確な基準を立てて形式的に判断できるものではありません。
自分がどの手続を利用して借金を整理するかを最終的に判断をする際には、必ず一度は専門家に相談することをお勧めします。
5. 任意整理は、どのような人が利用できるのですか?
「任意整理」とは裁判所などの公的機関を利用せずに専門家が本人に代わって貸金業者と和解交渉をすることですので、自己破産や個人民事再生のような裁判上の手続の場合とは異なり、手続を成功させるために依頼者に求められる絶対的な条件はとくにありません。
よって、基本的には、誰でも「任意整理」を利用することができます。
6. 任意整理を成功させるためには、依頼者は何をする必要がありますか?
任意整理は、裁判上の手続ではなく私的な和解交渉であり、また、専門家が手続の全てを代理して行うため、手続を遂行していく上で依頼者が行わなければならないことは基本的にはありません。
また、自己破産や個人民事再生のような裁判上の手続の場合には依頼者は裁判所に出席し裁判官などと面接する必要がありますが、任意整理の場合には特段の事情がない限り依頼者が裁判所に出席する必要もありません。
但し、「任意整理」を成功させるための「実質的な条件」として、以下の2点が挙げられます。
(1)依頼者側が和解金を支払うための資金を用意できること
具体的には、依頼者が各貸金業者に対して負担している正確な借金の総額(依頼者と各貸金業者との間の取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した「借金の総額(元金の総額)」)を向こう「3年間~5年間」に渡る分割払いで完済するだけの資力を依頼者側が有していることが必要となります。但し、返済資金については、依頼者自身が用意できなくてもよく、依頼者の親族や友人などの援助によって用意する形でも構いません。(現実には、このような形が少なくありません。)
(2)依頼者が貸金業者との間の取引の経過に関する事実を明らかにする努力を行い続けること
貸金業者から開示されてきた取引履歴(依頼者と貸金業者との間の取引経過の記録)の内容の正確性を検証するために、依頼者は以下の2点を行う必要があります。
- ① 各貸金業者との間の取引経過に関する事実(「取引開始日」「借入額」及び「返済額」などの事実)を具体的に思い出すこと。
- ② 各貸金業者との間の取引経過に関する事実を証明する証拠(「契約書」「領収書」など)を探すこと。
(なお、この「①~②」の条件の詳細については「任意整理・4、任意整理を成功させるための条件」を御覧下さい。)
7. 任意整理をすると、どのくらい借金が減額されるのですか?
専門家が任意整理を行う際には、依頼がなされる前に依頼者が貸金業者から請求されていた金額ではなく、依頼者が貸金業者に対して負担している正確な借金の金額(依頼者と貸金業者との間の取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した「借金の残額(元金の残額)」)を基準として和解金額(今後の返済総額)を定めて、貸金業者に対して和解案を提示します。
そして、返済期間が5年を超えるような分割払いの和解案を提示するなどの特段の事情がない限り、多くの貸金業者が最終的には専門家から提示された和解案に応じているのが任意整理の現状です。(但し、全ての貸金業者が全く抵抗することもなく応じているわけではありません。)
従って、利息制限法の制限利率を超える金利で営業している貸金業者に対して長期間に渡って返済を行い続けている場合には、それだけ多くの利息制限法の制限利率を超える利息を支払っていたことになりますので、任意整理をすると大幅な借金の減額を期待できることになります。
また、場合によっては、借金の全額を「完済」している可能性もあり、さらには、「過払金」が発生している可能性もありえることになります。
(なお、事案(取引の内容や約定利率)にもよりますが、計算上においては、貸金業者との間で取引が絶え間なく「約6年間」継続している場合には、借金の全額を「完済」している可能性が高く、また、「過払金」が発生している可能性もありえます。
具体例を挙げますと、仮に年率29.2%の約定利率で金50万円を借り入れて、その後、毎月、「約定の利息分」だけを返済し続けた場合には「5年5ヶ月間」で借金の全額が完済されていることになります。)
(注)貸金業者との間の取引期間が短い場合には、利息制限法の制限利率を超える利息を過度に支払っていたことにはなりませんので、大幅な借金の減額は期待できないことになります。また、利息制限法の制限利率の範囲内の金利で営業している一部の貸金業者や銀行などに対する借金については、そもそも利息制限法の制限利率を超える利息を支払っていたことにはなりませんので、借金の減額は必ずしも期待できないことになります。さらに、商品を分割払いで買ったときなどに生じるクレジット会社に立て替えてもらった代金についても、法律上は「借金」ではなく「立替金」となるため、利息制限法の適用がなく減額されることは必ずしも期待できないことになります。
但し、和解金額を一括で返済することを前提に借主が無資力状態であることを繰り返し説明して粘り強く交渉すると、貸金業者によっては大幅な借金の減額(元本の減額)に応じてくることもあります。
8. 任意整理をすると、遅延損害金や将来利息はどのように扱われるのですか?
任意整理に関しては、「日本司法書士会連合会」などが以下のような「任意整理統一基準」を定めています。
従って、専門家が任意整理を行う際には、以下の基準を守って職務を遂行することになります。
なお、以下の基準の趣旨を簡単に説明しますと、「利息制限法の制限利率(年率18%前後)を超える利息の支払を認めず、元本充当計算を徹底して借金を減額させて、さらには遅延損害金及び将来利息を付けないことにより、依頼者にとって返済可能な和解案を提示する。」ということです。
ところで、「任意整理統一基準」に基づく和解案が提示された場合、現実に貸金業者がこれに応じるのかが問題となります。
この点については、
(Ⅰ)「任意整理統一基準」に反するような返済計画を立てても資力の乏しい依頼者が遂行することは困難であるため、「任意整理統一基準」に基づく和解案を拒否した場合には依頼者が「自己破産」をする可能性があり、その場合には全く返済されなくなってしまうリスクがあること
(Ⅱ)「任意整理統一基準の存在」及び「任意整理統一基準に従って専門家が職務を遂行しなければならないこと」は、ほとんどの貸金業者に知れ渡っていること
などの理由により、返済期間が5年を超えるような分割払いの和解案を提示するなどの特段の事情がない限り、多くの貸金業者が最終的には「任意整理統一基準」に基づく和解案に応じています。
従って、特段の事情がない限り、遅延損害金や将来利息を付けずに貸金業者との間で和解が成立することが多いのが「任意整理」の「現状」です。
(ちなみに、当事務所では、消費者金融会社及びクレジット会社に対する全ての任意整理事件において、1円たりとも遅延損害金や将来利息を付けて和解をしたことは、これまで一度もありません。)
日本司法書士会連合会 任意整理統一基準 |
1、「取引履歴の開示」 額)を確定させること。 なお、確定時は最終取引日を基準とする。 |
9. 任意整理をすると、和解金の返済期間はどのくらいまで貸金業者は応じてくれるのですか?
和解金を「分割」で返済する場合の返済期間についてですが、実務上は、概ね「3年間~5年間」を目安として和解が成立しています。
しかし、返済期間が5年を超える分割払いの和解案を提示した場合には、遅延損害金や将来利息を付けることを要求するなど、抵抗してくる貸金業者が少なくありません。
よって、返済期間を5年を超えるものとしなければ今後の返済計画が立てられない依頼者の場合、特段の事情がない限り、任意整理ではなく、自己破産や民事再生によって借金を整理することをお勧めします。
10. 任意整理の手続が終了するまでには、どのくらいの期間がかかるのですか?
端的にいうと「任意整理」は和解交渉ですから、和解案について貸金業者の同意がない限り、手続を成功させることができません。
また、貸金業者が取引当初からの正確な取引履歴(依頼者と貸金業者との間の取引経過の記録)を開示しない限り、依頼者が貸金業者に対して負担している正確な借金の金額(依頼者と貸金業者との間の取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した「借金の残額(元金の残額)」)を明らかにすることができないため、和解案を提示することもできません。
以上のことから分かるように、任意整理という手続の性質上、貸金業者側が和解の成立に向けて前向きな行動をとらなかったり、抵抗してくる場合を考えますと、任意整理の手続を成功させるまでに必要となる期間については、必ずしも事前に予測をつけることができません。
但し、貸金業者が抵抗することもなく順調に手続が進んだ場合には、依頼がなされてから「約2ヶ月間」で和解が成立して手続が終了することもあります。
(注)平成17年7月19日に「貸金業者が保存してある全ての取引履歴を開示しない対応は違法であり不法行為を構成する。」と明確に判示する「最高裁判所判決」が下されてからは、顧客側から取引履歴の開示を求められた場合、すぐに取引当初からの正確な取引履歴を開示してくる貸金業者が増えてきています。よって、現在は、以前と比べて遙かに「任意整理」の手続には時間が掛からなくなってきています。
11. 任意整理をすると、所有している財産は処分されてしまうのですか?
任意整理は、自己破産のような裁判上の手続ではなく、私的な和解交渉ですので、任意整理をしたからといってそのことから直ちに強制的に財産が処分されるというようなことはありません。
従って、和解交渉が決裂して担保権が実行されるなどの特段の事情がない限り、財産をそのまま所有することができます。
12. 任意整理をすると、その後の日常生活にはどのような影響が及ぶのですか?
任意整理は、自己破産のような裁判上の手続ではなく、私的な和解交渉ですので、任意整理をしたからといってそのことから直ちに強制的に財産が処分されるというようなことはなく、また、一定の資格や法律上の地位に就くことを制限されることもありません。
従って、特段の事情がない限り、任意整理をしても、それまでと変わらない日常生活を送ることができます。
但し、任意整理をした場合には、信用情報機関に「事故情報」として登録されることになります。
そして、金融機関が融資の可否の審査をする場合、必ず信用情報機関に問い合わせて融資の申込人に関して「事故情報」が登録されていないかを確認しますので、「事故情報」が登録されている間は、通常、金融機関から融資を受けることができなくなります。
従って、任意整理をした場合、その後は、通常、金融機関から融資を受けることができなくなります。
なお、この信用情報機関に「事故情報」として登録されるデメリットは、「任意整理」の場合に限らず、「自己破産」や「個人民事再生」などの借金の整理(債務整理)を行った場合に共通するデメリットです。
また、この「事故情報」は永久に登録されるというわけでは必ずしもなく、借金を整理した方法や各信用情報機関によって異なりますが、概ね「5年~10年間」とされています。
よって、任意整理をしても、概ね「5年~10年間」が経過して「事故情報」の登録が抹消された後であれば、その時に本人が返済できるだけの資力を有している限り、金融機関から融資を受けられる可能性は充分にあります。
13. 任意整理をすると、保証人にはどのような影響が及ぶのですか?
保証人が付いている借金に関して借主本人から依頼を受けて専門家が貸金業者に対して「受任通知」を送った場合、特段の事情がない限り、貸金業者はすぐに保証人に対して保証されている借金の全額の支払いを請求するようになります。
また、この場合、通常、保証人は「分割」ではなく保証した借金の全額を「一括」で支払わなければならなくなります。
以上のことから、保証人が保証した借金の全額を「一括」で支払うことができない場合には、保証人自身も任意整理をするなど、何らかの法的な手段をとる必要があります。
よって、保証人になってもらった方には大きな負担を掛けることになりますので、任意整理をする前に保証人になってもらった方にきちんと現在の状況を説明しておいたほうがよいでしょう。
14. ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費による借金がある場合でも、任意整理はできますか?
任意整理は、裁判上の手続ではなく、私的な和解交渉ですので、借金の理由は全く問題になりません。
従って、ギャンブルによる借金がある場合や風俗店通い・無計画なクレジットショッピングなどの浪費による借金がある場合でも任意整理の手続を成功させることができます。
15. 利息制限法の制限利率の範囲内の金利で営業をしている一部の貸金業者や銀行などに対する借金について任意整理をした場合、借金を減額させることはできるのですか?
利息制限法の制限利率の範囲内の金利で営業をしている一部の貸金業者や銀行などに対する借金については、そもそも借主は利息制限法の制限利率を超える利息を支払っていたことにはなりませんので、その意味においては借金の減額は期待できないことになります。
しかし、遅延損害金や将来利息を付けない元金のみを返済するという和解案には、多くの貸金業者が応じているのが任意整理の「現状」です。
また、和解金額を一括で返済することを前提に借主が無資力状態であることを繰り返し説明して粘り強く交渉すると、貸金業者によっては大幅な借金の減額(元本の減額)に応じてくることもあります。
さらには、分割で支払う場合でも、返済期間を「約5年間(場合によっては、それ以上の期間)」まで延長させることができることもあります。
従って、利息制限法の制限利率の範囲内の金利で営業をしている一部の貸金業者や銀行などに対する借金についても、任意整理をするメリットは充分にあります。
16. 一部の借入先である貸金業者に対してだけ任意整理をすることはできますか?
一部の借入先である貸金業者に対してだけ任意整理をすることは可能です。
例えば、「住宅ローンや自動車ローンなどの担保権がついている借金で、貸金業者と和解交渉が決裂したことによって担保権が実行されるリスクを回避したい場合」や「保証人が付いている借金で、利息制限法の制限利率による減額も期待できず保証人にどうしても迷惑をかけたくない場合」などには、それら以外の借金についてだけ任意整理をするということは、実務上、少なくありません。
但し、そのような特段の事情がない限り、一部の借入先である貸金業者に対してだけ任意整理をすることには全く意味がないため、お勧めできません。
17. 任意整理は、自分一人でできますか?
「任意整理を自分一人でできるか、否か。」は、簡単にいいますと、法律上は可能であるが、現実には困難であるとおもわれます。
日常的に訴訟事件を山ほど抱えて処理している貸金業者と法律の素人である借主本人との間には、法律知識に差がありすぎるために、借主本人だけで和解交渉をしても、著しく不利な和解をさせられる可能性が高いとおもわれます。
とくに、当初からの取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した「借金の残額(元金の残額)」を和解金額とする和解案を借主本人が貸金業者に対して提示したとしても、全く相手にされない可能性が高いと思われます。
(そのような和解案を貸金業者が簡単に応じるのであれば、そもそも利息制限法を超える金利で営業するわけがありません。また、貸金業者から取引当初からの正確な取引履歴(借主本人と貸金業者との間の取引経過の記録)を開示させること自体、借主本人だけで請求しても困難を伴う可能性があります。)
専門家が代理人として介入しているからこそ、貸金業者は、約定利率による借金の請求を諦めて、取引当初からの正確な取引履歴を速やかに開示して、利息制限法の制限利率に引き直して算出した「借金の残額(元金の残額)」以下の金額で和解に応じてくるのです。
自分一人で任意整理を成功させることが絶対に不可能ということはありませんが、正確な借金の金額(当初からの取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した「借金の残額(元金の残額)」)を基準とした和解をしたいのであれば、専門家に依頼することをお勧めします。
なお、専門家に依頼すれば、必ず、正確な借金の金額(当初からの取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した「借金の残額(元金の残額)」)を基準とした和解をすることができるわけではありません。専門家の中には、1円でも和解金額を低くしようと半年かかろうが1年かかろうが妥協することなく熱心に貸金業者と交渉をする専門家もいれば、必ずしも熱心に貸金業者と交渉をしない専門家がいるのも事実です。また、それ以上にひどい専門家になると、利息制限法という法律の存在及び内容について依頼者に説明をせず、貸金業者から全ての取引履歴を開示させずに、一部の取引履歴を根拠に和解金額を定めて、どう考えても返済計画に無理があり、すぐに破綻することが明らかな和解を平気で成立させる専門家もいます。(そのような専門家に依頼した後で当事務所に相談に来て、利息制限法という法律の存在及び内容を初めて知った人も数多くいます。)
よって、任意整理を専門家に依頼する場合には、当該専門家の資質・能力にも充分に気をつけて下さい。
(とくに、依頼をする際には、「専門家は任意整理統一基準に従って職務を遂行しなけばならないこと」に関して具体的な説明を求めるようにして下さい。)
18. 任意整理をするための費用はどのくらいかかるのですか?
任意整理を専門家に依頼する場合には、専門家に支払う「報酬」が掛かることになります。
そして、専門家の「報酬」については、現在、自由化されており、各専門家の事務所によって異なります。
ところで、専門家の「報酬」は「一括」で支払うことが原則ですが、どうしても「一括」で用意できない場合には、誠意をもって依頼者側が御願いすれば、専門家の方でも任意整理を考えている人がお金が無いことは分かっていることですので、「分割払い」等に応じてくれる専門家も少なくないと思われます。よって、どうしても「報酬」を「一括」で用意できない場合には誠意をもって専門家に相談してみて下さい。
〒901-3124
沖縄県島尻郡久米島町字仲泊1201番地 202