自己破産について
1.自己破産とは?
(1)自己破産とは?
「自己破産」とは、自ずからの収入・財産では返済が不可能な程に借金などの支払責任を抱えている人が裁判所に申立てることによって、現在有している全ての財産を放棄し、その全ての財産を現金化して借金などの返済に充て、それでもなお残存する借金などの全ての支払責任を免除してもらう裁判上の手続をいいます。
(簡単にいえば、「自己破産」とは、「今ある財産を全て放棄する代わりに、全ての借金などの支払責任を免除してもらう裁判上の手続」をいいます。)
(2)自己破産をした場合でも、放棄しなくてよい財産・支払わなければならないもの
(1)に記載のとおり、「自己破産」をした場合には、(Ⅰ)全ての財産を放棄しなけれならず、他方で、(Ⅱ)全ての借金などの支払責任を免除してもらえることになります。
但し、この点については、例外があります。
「(Ⅰ)全ての財産を放棄すること」の主な例外
- ① 日常生活を維持していく上で必要な家財道具(テレビ、冷蔵庫、衣料品等。但し、高額なものは除く。)
- ② 金20万円以下の財産(金額は時価額で算出。)
- ③ 金99万円以下の現金
- ④ 退職金の4分の3以上(場合によっては、退職金の全額)
- ⑤ 「①~④」以外の財産で生活上不可欠なものであるなどの理由により裁判所が特に認めた財産
- ⑥ 自己破産の手続が開始された後に申立人が取得した給料・財産
以上の①~⑥の財産は、特段の事情がない限り、自己破産をしても失うことはなく、そのまま所有することができます。
「(Ⅱ)全ての借金などの支払責任が免れること」の主な例外
- ① 税金等の公租公課
- ② 破産者が悪意をもって加えた不法行為に基づく損害賠償債務
- ③ 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償義務
- ④ 養育費・婚姻費用・扶養義務等
- ⑤ 従業員に対する給料の支払義務等
- ⑥ 破産者が故意に裁判所に届け出なかった借金等
- ⑦ 罰金等
以上の「①~⑦」については、自己破産をしても、支払責任を免れることはできません。
2.自己破産のメリット・デメリット・よくある誤解
(1)自己破産のメリット
① 全ての借金の支払責任が免除される。
「民事再生」や「任意整理」の場合は手続終了後に債権者(貸金業者等)に対して返済を行い続けることによって借金を整理する手続であるのに対して、「自己破産」の場合は手続終了後においては債権者(貸金業者等)に対して一切返済することがなく全ての借金の支払責任を免除してもらえる点に最大のメリットがあります。
(2)自己破産のデメリット
① 破産手続が開始される時までに申立人が有している「概ね金20万円以上の財産」及び「金99万円を超える現金」は原則として手放さなければならない。
従って、「住宅」や「高額な自動車」などは、原則として手放さなければならなくなります。
他方で、日常生活を維持していく上で必要な家財道具(テレビ、冷蔵庫、衣料品等)や破産手続が開始された後に申立人が取得した給料・財産などは、原則としてそのまま所有することができます。
② 手続の期間中は一定の資格や法律上の地位に就くことが制限される。
制限される資格や法律上の地位としては、弁護士・司法書士・税理士などの士業、宅地建物取引主任者、生命保険募集人、旅行業務取扱主任者、警備員、後見人、補佐人、後見監督人などがあります。
(但し、自己破産の手続が問題なく終了し免責決定が確定した場合には、これらの制限はなくなることになります。)
③ 「管財事件」の場合の特有の制限。
「管財事件」の場合には、破産手続の期間中(破産手続開始決定から破産手続の終了までの間)は、以下の制限などが課せられます。
- (Ⅰ)財産管理処分権の喪失(自己の財産を管理・処分をする権利が破産管財人に移転します。ただし、日常生活を維持していく上で必要な家財道具などはそのまま使用することができます。)
- (Ⅱ)居住等の制限 (居住地を変更したり、長期間に渡る海外旅行は裁判所の許可を要することになります。)
- (Ⅲ)郵便物に対する制限 (郵便物については破産管財人に管理されることになります。)
但し、これらの制限は「同時破産廃止事件」の場合にはありません。
④ 信用情報機関の保有する個人情報に「事故情報(ブラックリスト)」として登録される。
貸金業者は、信用情報機関の個人情報を主な判断材料の一つとして融資の可否を決定するため、通常、「事故情報」が登録されている間は貸金業者から融資は受けられなくなります。
但し、「事故情報」が登録されている期間は、一般的には「約5年~約10年間」といわれていますので、その期間が経過して「事故情報」が抹消された後であれば、その時に本人が返済できるだけの資力を有している限り、融資を受けられる可能性は充分にあります。
なお、この「事故情報」として登録されるデメリットは、「自己破産」をした場合に限るわけではなく、「民事再生」や「任意整理」などの借金の整理(債務整理)を行った場合に共通するデメリットです。
また、この「事故情報」の登録期間については、借金を整理した方法や信用情報機関によって異なってきます。
(3)自己破産に対するよくある誤解
世間一般では自己破産をした場合のデメリットに関して誤解されていることが多く、そのために自己破産することを避けようと、無理をしてまで毎月の借金の返済を行い続けて苦しんでいる人が数多くいます。 そこで、それらの誤解を解くために、以下のとおり、世間の自己破産に対する「思い込み」が間違いであることを指摘しておきます。
- ① 自己破産をしたことが世間一般に知られることはほとんどありません。
- ② 自己破産をしたことが、住民票や戸籍や運転免許書に記載されることは全くありません。
- ③ 自己破産をすることによって、選挙権がなくなることも全くありません。
- ④ 自己破産をしても、日常生活を維持していく上で必要な家財道具(テレビ、冷蔵庫、衣料品等。但し、高額なものは 除く。)や自己破産をした後に取得した財産・給料は、そのまま所有することができます。
- ⑤ 自己破産をしたことだけを理由に会社が従業員を解雇することは許されません。
- ⑥ 借家・賃貸マンション・アパートに住んでいる人は、自己破産をしても、家賃をきちんと支払っている限り、そのまま住み続けることができます。
- ⑦ 自己破産をしても、離婚する必要はありません。
- ⑧ 自己破産をしても、保証人になっているなどの特別な事情がない限り、夫・妻・子供などの家族が代わりに支払う必要は全くありません。
- ⑨ 自己破産をしたことが、子供の進学や就職に法的に不利益に扱われることはありません。
- ⑩ 自己破産をしても、永久に金融機関から借り入れができなくなるわけではありません。
- ⑪ 自己破産をしても、退職金の全てを放棄しなければならないわけではありません。
- ⑫ 自己破産をしても、年金を受給できなくなるわけではありません。
- ⑬ 自己破産をしても、料金をきちんと支払っている限り携帯電話をそのまま使用することができます。
以上のとおりであり、自己破産をしたことにより、その後の日常生活に支障をきたすことは、ほとんどありません。
また、「ギャンブル」や「浪費」による借金についても、本人が強く反省していることを裁判所が認めてくれた場合には、裁判所の裁量により自己破産することが認められています。
3.自己破産の手続の流れ・期間
(1)「自己破産」の手続の一般的な流れ・期間
裁判所において「自己破産」という手続が実際に行われる場合には、
- ①「破産手続」
自己破産の申立てをした人が現在有している全ての財産を現金化して借金の返済に充てることなどが行われるための手続 - ②「免責手続」
「破産手続」を経ても、なお残存する借金などの支払責任を免除するための手続
という「二つの手続」を経ることによって行われます。
そして、「破産手続」は、裁判所から選任された人(この人を「破産管財人」といいます。)が自己破産の申立をした人の財産を売却・処分をすることによって現金化し、その現金を借金などの金額に応じて平等に債権者(貸金業者等)に対して返済をすることなどが行われます。
(このように原則通りに「破産手続」が行われる破産申立事件のことを「管財事件」といいます。)
なお、自己破産の申立てをした人が高額な財産(概ね「20万円」以上の財産)を有していない場合などには、裁判所は「破産手続」を省力することができ、この場合には「免責手続」のみが行われることになります。
(このように「破産手続」が省力される破産申立事件のことを「同時破産廃止事件」といいます。)
ところで、自己破産の手続が終了するまでの期間についてですが、一般的には、「管財事件」の場合には、裁判所に申立てをしてから「約6ヶ月~約1年」の期間、「同時破産廃止事件」の場合には、裁判所に申立てをしてから「約4ヶ月~約6ヶ月」の期間 によって終了します。
「破産手続」が行われる場合(管財事件)
① 自己破産の申し立て
(裁判所に申立書を提出。)
② 破産の審尋
(裁判所に指定された日時に出頭し、裁判官と面談。)
③ 破産開始決定
(裁判所から破産手続が開始される決定が下され、破産手続が開始される。)
④ 破産管財人の選任
(裁判所が破産管財人を選任する。 破産管財人は申立人の財産の管理をするなどして破産手続を遂行する。)
⑤ 破産管財人と面談
(破産管財人との間で日時を調整し、面談する。その際に、破産管財人から申立書の記載内容等に関して審問される。)
⑥ 債権者集会等の開催
(破産管財人が破産手続の状況などを各債権者(各貸金業者等)に報告するなどのために集会が開かれる。)
⑦ 債権の確定と配当
⑧ 免責の審尋
(裁判所に指定された日時に出頭し、裁判官と面談。 なお、「6. 債権者集会等の開催日」と同日に指定されることが多い。)
⑨ 免責の決定
⑩ 免責の決定の確定
(この時点で全ての手続が終了したことになり、晴れて申立人の借金の支払責任が免除される。 ここまでに要する期間は、一般的には、裁判所に申立書を提出してから、約6ヶ月~約1年間。)
「破産手続」が省略される場合(同時破産廃止事件)
① 自己破産の申し立て
(裁判所に申立書を提出。)
② 破産の審尋
(裁判所に指定された日時に出頭し、裁判官と面談。)
③ 同時破産廃止決定
(裁判所から破産手続が開始される決定が下され、同時に破産手続を省略する決定が下される。)
④. 免責の審尋
(裁判所に指定された日時に出頭し、裁判官と面談。)
⑤ 免責の決定
(裁判所が申立人の借金などの支払責任を免除する旨の決定を下す。)
⑥ 免責の決定の確定
(この時点で全ての手続が終了したことになり、晴れて申立人の借金の支払責任が免除される。ここまでに要する期間は、一般的には、裁判所に申立書を提出してから、約4ヶ月~約6ヶ月間。)
※ 自己破産手続の具体的な流れや期間は、各裁判所の方針や個別的な事案によって異なることがあります。
(2)「管財事件」として処理される場合
自己破産の申立てをする人にとって、「管財事件」として処理されるよりは、「同時破産廃止事件」として処理された方が、手続に要する「期間」や「費用」(破産管財人に対して報酬を支払う必要ががなくなるなど)などの面において、負担を軽く済ますことができます。
よって、いかなる場合に「管財事件」として処理されるのかは、自己破産の申立てをする人にとって重大な「関心事」といえます。
そこで、「管財事件」として処理される主な場合を以下の「①~⑥」のとおり説明しておきます。
- ①精算型
申立人が保有している個々の資産(現金、預金、保険解約返戻金、退職金の8分の1、自動車などのいずれか)が20万円を超える場合。
なお、預金が13万円、保険解約返戻金が10万円といったように、個々の資産が20万円以下である場合は「同時破産廃止事件」として処理されますが、預金が21万円、保険解約返戻金が2万円である場合は「管財事件」として処理されることになります。
また、預金については、口座が数口ある場合、その総額が20万円を超えるか否かが基準となります。保険解約返戻金についても同様です。退職金については、破産手続開始(≒申立て)時点において自己都合によって退職した場合の支給見込額の8分の1が20万円を超えるか否かが基準となります。ただし、破産手続開始後、すぐに現実に退職する予定である場合は、4分の1が基準となります。 - ②法人型
申立人が法人の代表者で、法人とともに自己破産の申立てをする場合。法人代表者については、原則として法人も同時に申し立てる必要があります。 - ③資産調査型
申立書の記載内容について破産管財人による調査が必要と判断される場合。
(Ⅰ)不動産を担保としている借金の残額が不動産評価額の1.2倍未満の(1.2倍以上のオーバーローン状態にない)不動産を所有している場合。
(Ⅱ)個人事業者である場合。
(Ⅲ)負債総額が5000万円を超えている場合。
(Ⅳ)多数の債権者(貸金業者)から借り入れがある場合。
なお、不動産を担保としている借金の残額が不動産評価額の1.2倍以上であるときは,同時破産廃止事件として処理されることが可能です。 - ④偏頗弁済型
特定の債権者(貸主等)だけに返済をしていた場合や財産隠しの目的で財産を無償や著しく安い価額で譲渡をしていた場合。
この場合には、破産管財人が返済された金銭や譲渡された財産を取り戻し、その取り戻された金銭や財産は、借金の各金額に応じて各債権者(貸金業者等)に平等に返済されます。 - ⑤不当利得型
利息の再計算による過払い金返還請求権の行使により、特定の貸金業者から金銭を取り戻す必要がある場合。
この場合にも、④の場合と同様に、破産管財人が取り戻した金銭は、借金の各金額に応じて各債権者(貸金業者等)に平等に返済されます。 - ⑥免責調査型
「免責不許可事由」の存在が明らかであって、「裁量免責」の相当性について破産管財人の調査を必要とする場合。
ギャンブルや浪費などによる借金については、原則として、自己破産によって支払責任を免除することは許されていません。(このような場合を「免責不許可事由がある。」といいます。) しかし、このような場合でも、申立人が強く反省している場合には、裁判所が特別に事情を組んで支払責任の免除を許可することができます。(このように支払責任を免除されることを「裁量免責」といいます。) 裁判所は、「裁量免責」の可否を判断する際に「管財事件」として処理し、破産管財人に命じて、借金をした事情や背景、自己破産の手続に申立人が真摯に取り組んで反省しているかなど調査させます。 - ※ 以上の詳細については、主に「横浜地方裁判所」の方針を参考にして説明しています。
なお、実務上は、申立人が高額な財産(概ね「20万円」以上の財産)を有していないことなどの理由により、自己破産の申立がなされた場合の約9割以上が「管財事件」としてではなく、「同時破産廃止事件」として処理されています。
4.自己破産が認められるための条件
自己破産が認めれるための主な条件は以下のとおりです。
(1)申立人が「支払不能」の状態に陥っていること
「支払不能」とは、現在負担している借金などを返済できるだけの資力をもたず、また、近く入手できる見込みもないために、返済する能力が一般的かつ継続的に欠けている客観的な状態をいいます。
「支払不能」の該当性の判断は、「借金などの総額」「借主の仕事」「年齢」「収入」「財産」などのさまざまな事情を考慮して、客観的かつ個別的に判断されます。
なお、専門家が判断する場合には、一般的に、申立人の現在有している財産及び毎月の返済可能額(毎月の収入から毎月の生活費を引いた金額)によって、全ての借金を3年以内に返済できなければ「支払不能」の状態であると判断することが多いといえます。 (当然のことながら、毎月の生活費の金額は「浪費」かつ「無理」がないことを客観的に判断しながら算出されます。) 例えば、とりたてて財産がなく、また、毎月の手取りの収入が金20で毎月の生活費が金15万円という収支の状態が向こう3年間に渡って続くと見込まれる人(毎月の返済可能額が金5万円の人)が金500万円の借金を負担している場合には、全ての借金を3年以内に返済できませんので「支払不能」の状態であると判断されることになります。
この「支払不能」の判断をする際に重要なことは、「借金の総額」だけでは判断されないということです。
つまり、とりたてて財産がなく、毎月の手取りの収入から毎月の生活費を引くとほとんど残らないという収支の状態が向こう3年間に渡って続くと見込まれる人の場合には、借金の総額が金100万円以下であったとしても、全ての借金を3年以内に返済できませんので「支払不能」の状態であると判断される可能性があります。
他方で、とりたてて財産はないが、毎月の手取りの収入から毎月の生活費を引くと金30万円~金50万円ぐらいが残るという収支の状態が向こう3年間に渡って続くと見込まれる人の場合には、借金の総額が金1000万円であったとしても、全ての借金を3年以内に返済できる見込みがありえますので「支払不能」の状態であると判断されない可能性があります。
この「支払不能」の状態であることが申立人に認められないと、裁判所から「破産開始決定」が下されず、自己破産することができなくなります。
(2)申立人に「免責不許可事由」がないこと、又は、「裁量免責」されること
自己破産の申し立てをして、裁判所から「破産開始決定」が下されて、その後問題なく「破産手続」が終了しても、それだけでは借金などの支払責任が免除されるわけではありません。
借金などの支払責任を免除してもらうためには、別途「免責許可の申立」を行い、裁判所に別途「免責許可の決定」を下してもらわなければなりません。
裁判所は、「免責許可の申立」が行われた場合には、申立人に破産法が定める「免責不許可事由」があるかないかを審査します。
そして、裁判所は、「免責不許可事由」がない限り「免責許可の決定」を下します。
なお、破産法(平成17年より施行)が定める主な「免責不許可事由」は以下のとおりです。
- ①債権者を害する目的で、破産財団に属し又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
- ② 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は、信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
- ③ 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと
- ④浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は、過大な債務を負担したこと。
- ⑤破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
- ⑥業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
- ⑦虚偽の債権者名簿を提出したこと。
- ⑧破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
- ⑨不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
- ⑩次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
- イ 免責許可の決定が確定したこと・当該免責許可の決定の確定の日
- ロ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと・当該再生計画認可の決定の確定の日
- ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと・当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日。
以上の「①~⑩」の「免責不許可事由」の中で、実際に自己破産の申立てを考えている人でよく該当するものは「②」と「④」と「⑤」です。
この「②」と「④」と「⑤」の具体例をあげますと、
- (Ⅰ)ローンで買った商品をローンの途中にもかかわらず低額な金額で換金した場合
- (Ⅱ)競馬やパチンコなどのギャンブルによる借金がある場合
- (Ⅲ)風俗店に通ったり、ブランドもののバックや時計を買うなどの浪費による借金がある場合
- (Ⅳ)自己破産の申し立てをする直前に、返済できないことが分かっていながら、氏名や生年月日等を偽るなどして貸金業者を騙して新たにお金を借りた場合などです。
以上のような「免責不許可事由」がある場合、原則として、裁判所から「免責許可の決定」が下されないことになります。
但し、この点については、例外があります。
自己破産の申立てをした人の「反省の有無・程度」「免責不許可事由の内容・程度」「今後の更正の見込み」等を総合的に考慮して、免責を許可することが相当と判断される場合には、裁判所は自ずからの裁量で「免責許可の決定」を下すことができます。(これを「裁量免責」といいます。)
自己破産という制度は、返済不可能なほどに借金を抱えてしまった人を借金苦から解放し、人生の再出発をするための機会を与えるための制度です。また、自己破産の申立てをした人の多くに内容・程度の差はもちろんありますが「浪費」による借金などの「免責不許可事由」があるのが現実です。
従って、「免責不許可事由」があるからといってそのことから直ちに免責を許可しないという扱いをしてしまった場合、自己破産の申立てをした人の多くは人生の再出発をする機会を得られず、夜逃げをするか自殺をするしかなくなってしまいます。
つまり、このような扱いが放置された場合、自己破産という制度の意義がなくなってしまいかねません。
そこで、「浪費」による借金などの「免責不許可事由」のある人でも、これまでの生活態度を強く反省している場合には、裁判所は広く「裁量免責」を用いて「免責許可の決定」を下しています。
(なお、平成15年に自己破産の申立てがなされた事件の中で「免責許可の決定」が下されなかったのは、全体の0.1%未満です。つまり、99.9%以上の確率で「免責許可の決定」が下されています。)
〒901-3124
沖縄県島尻郡久米島町字仲泊1201番地 202