過払い金返還請求について
1. 過払い金とは?
「過払い金」とは、借金が完済されているにもかかわらず、借主が貸金業者に対して返済を行ってしまったことによって生じる、借主が貸金業者に対して返還請求できる金銭をいいます。
この「過払い金」については、「借主が貸金業者に対して返済をしなければならないもの」ではなく、「貸金業者が借主に対して返済をしなければならないもの」である点に最大の特徴があります。
つまり、ある貸金業者に対して「過払い金」を有している人は、その貸金業者に対する借金が完済されている上に、さらに、その貸金業者から金銭の返還を請求することができるのです。
なお、通常、「過払い金」は、消費者金融会社やクレジット会社との間で「長期間の取引」がある場合に発生します。
また、「過払い金の返還請求」は、「自己破産」・「個人民事再生」・「任意整理」のいずれの手続とも併せて行うことができます。
2. なぜ、過払い金が発生するのか?
「なぜ、過払金が発生するのか?」を理解するためには、その前提として、いわゆる「グレーゾーン金利」に関して理解することが重要になります。
そこで、ここでは、
- ①「利息制限法」
- ②「貸金業者が利息制限法の制限利率に反して営業を行っている理由」
- ③「貸し金業者がみなし弁済規定の定める条件を満たしていないと判断する判例」
- ④「貸金業者にみなし弁済規定が適用されない場合の効果」
という4つの視点から「グレゾーン金利」に関する説明をしておきますので、貸金業者に対して過払い金の返還請求を行うことを考えている人は、何度も繰り返し読み見直して、しっかりと理解できるように努めて下さい。
① 利息制限法
「利息制限法」という法律は、その名前どおりに、貸金の利息を制限する法律です。
具体的には、貸付金額の元本の金額を基準にして、以下のとおりに貸付利率の上限を定めています。
元本の金額 | 利率 |
---|---|
10万円未満 | 年率20% |
10万円以上100万円未満 | 年率18% |
100万円以上 | 年率15% |
そして、「利息制限法」は「強行法規」(当事者間でこれに反する約束をしてもその約束は無効とされる法律)という法的な性格を有しています。つまり、「利息制限法」が定める制限利率を超える利息の契約が貸金業者と借主との間でなされたとしても、その制限利率を超えた部分の利息の合意は無効ということになります。
この点について具体例をあげて説明しますと、例えば、貸金業者から年率28%の契約で金50万円を借りた場合、「利息制限法」によれば元本10万円以上100万円未満の場合には年率18%まで利率が制限されますから、貸金業者は借主との間で契約した年率28%の利息を受け取ることは許されず、年率18%までの利息しか受け取ることができなくなります。
よって、借主が1年間借り入れをした場合には、借入金額50万円の18%の金額である金9万円の利息だけを貸金業者に支払えばよく、契約利率の28%の金額である金14万円の利息を借主は貸金業者に対して支払う必要はないということになるのです。 (なお、借主が貸金業者からの請求に従い「利息制限法」の制限利率を超過して利息を支払った場合には、その超過している部分の返済金は元本に充当されることになります。 よって、上のケースにおいては、借主が借り入れてから1年後に約定利息金の金14万円を支払った場合には、その内の金9万円が利息への返済金となり、残りの金5万円は元本への返済金ということになります。)
但し、「利息制限法」は「刑事罰」を伴わない規定なため、貸金業者が利息制限法に反して金銭を貸付けても、そのことから直ちに貸金業者に「刑事罰」が科されることはありません。
この「利息制限法」という法律は、消費者金融会社、クレジット会社に対しての借金を整理していく上で最も重要な法律ですので、しっかりと理解しておくことが大切です。
②「貸金業者が利息制限法の制限利率に反して営業を行っている理由」
「①」で説明しましたとおり、「利息制限法」という法律は貸金業者が受け取れる利息を年率15%~20%まで制限しています。
にもかかわらず、消費者金融会社、クレジット会社などの貸金業者は、新聞や雑誌、テレビのCMなどを通して、「利息制限法」の制限利率に反する年率27~28%前後の利率を公然と表示して営業をしています。
これは、一体どういうことなのでしょうか?
(この点については、「利息制限法」という法律の存在を知った人であれば、誰でも疑問に思うところであるとおもわれます。)
これは、「出資の受け入れ、預り金及び金利等の取締まりに関する法律第5条」(以下は「出資法第5条」といいます。)及び「貸金業の規制等に関する法律第43条」(以下は「みなし弁済規定」といいます。)という2つの法律の存在が関係しています。
まず、「出資法第5条」について説明しますと、この法律は貸金業者の金利を「刑事罰」をもって制限しています。
しかし、この法律には、貸金業者が「利息制限法」の制限利率を超えて金銭の貸し付けを行った場合に「刑事罰」を科すと定めているのではなく、貸金業者が「年率29,2%を超えて金銭の貸し付けを行った場合に初めて「刑事罰」を科すと定めているだけなのです。
(なお、「①」でも説明しましたとおり、「利息制限法」は「刑事罰」を伴わない規定なため、貸金業者が利息制限法に反して金銭を貸付けても、そのことから直ちに貸金業者に「刑事罰」が科されることはありません。)
つまり、法律上は、貸金業者が「利息制限法」の制限利率を超えて金銭を貸付けても、「出資法第5条」が定める制限利率の「年率29,2%」の範囲内で金銭を貸付けている限り、貸金業者に「刑事罰」が科されることはないということなっているのです。
次に、「みなし弁済規定」について説明しますと、この法律は「利息制限法」の制限利率の例外を定めています。
具体的には、貸金業者が一定の条件を満たして営業をしている場合には「利息制限法」が定める制限利率を超えて借主から利息を受領してもよいと「みなし弁済規定」は定めているのです。
この「みなし弁済規定」が定める各条件を簡単に説明しますと、
- 登録された貸金業者が営業として金銭を貸し付けたこと。
- 各貸付について、法律で定められた各事項を正確に記載した「契約書面」を貸金業者が借主に契約締結後、遅滞なく交付していること。
- 各返済について、法律で定められた各事項を正確に記載した「領収書」を貸金業者が借主にその都度、直ちに交付していること。
- 借主が利息制限法を超過する金銭を「利息」又は「損害金」として指定して支払ったこと。
- 借主が利息制限法を超過する金銭を「任意」に支払ったこと。
などです。
つまり、法律上は、この「みなし弁済規定」が定める各条件を貸金業者が全て満たして営業をしている限り、「利息制限法」の制限利率を超えて借主から利息を受け取ることができるということになっているのです。
以上のことから分かるように、消費者金融会社やクレジット会社は、この「出資法第5条」及び「みなし弁済規定」という法律を根拠にして「我々は、利息制限法の制限利率を超えて営業をしているが、出資法第5条の制限利率である「年率29,2%」の範囲内で営業をしているから「刑事罰」が課されることはない。
また、我々は「みなし弁済規定」が定める全ての条件を満たして営業をしているから、利息制限法の制限利率を超えて借主から利息を受け取ることができる。」ということを主張して、利息制限法の制限利率を超える年率27~28%前後の利率を公然と表示して営業をしているのです。
なお、この消費者金融会社やクレジット会社の契約金利、つまり、利息制限法の制限金利(年率15%~20%)と「出資法第5条」の制限金利(年率29,2%)の間の金利のことを「グレーゾーン金利(灰色金利)」と一般に呼ばれています。
これは、貸金業者に「みなし弁済規定」の適用が認められれば借主から受領することが許されるが、貸金業者に「みなし弁済規定」の適用が否定されれば受領することが許されない金利であり、すなわち「法的に借主から受領することが許されるのか?許されないのか?」・「法的に「白」なのか?「黒」なのか?」が、はっきりしない金利であることから「グレーゾーン金利(灰色金利)」と呼ばれているのです。
③「貸金業者がみなし弁済規定の定める条件を満たしていないと判断する判例」
「②」で説明しましたように、貸金業者は「我々は、みなし弁済規定が定める条件を全て満たして営業をしているから、利息制限法の制限利率を超えて借主から利息を受け取ることができる。」ということを主張して「グレーゾーン金利」で公然と営業をしています。
しかし、裁判上においては、全国各地の裁判所がこの貸金業者の「みなし弁済規定」に関する主張を悉く斥けて「貸金業者はみなし弁済規定の定める各条件を満たして営業をしていない。」と判断し、貸金業者の「利息制限法」の制限利率を超える利息の受領を認めていません。
そして、最高裁判所の判例においても、貸金業者の「みなし弁済規定」に関する主張を斥ける判例が、下記のとおり、近年相次いで出されています。
- 平成16年2月20日 最高裁判所 第二小法廷判決
(平成14年(受)第912号、平成15年(オ)第386号 不当利得返還請求事件) - 平成17年12月15日 最高裁判所 第一小法廷判決
(平成17年(受)第560号 不当利得返還請求事件) - 平成18年01月13日 最高裁判所 第二小法廷判決
(平成16年(受)第1518号 貸金請求事件) - 平成18年01月19日 最高裁判所 第一小法廷判決
(平成15年(オ)第456号、平成15年(受)第467号 貸金請求事件)
これらの最高裁判所の判例の全ては、「貸金業者がみなし弁済規定の定める各条件を満たしているかどうかについての判断は厳しく行わなければならない。」ということを明らかにし、「貸金業者はみなし弁済規定の定める各条件を満たして営業をしていない。」と判断して、貸金業者の「利息制限法」の制限利率を超える利息の受領を認めませんでした。 (なお、これらの最高裁判所の判決は、「最高裁判所のHPの裁判例情報」により参照できます。)
以上の通り、現在の判例上においては「貸金業者はみなし弁済規定の定める各条件を満たして営業をしておらず、貸金業者の利息制限法の制限利率を超える利息の受領は認められない。」と判断しているのです。
つまり、「グレーゾーン金利」は無効であり、認められないことが裁判上において明らかにされているのです。
④「貸金業者にみなし弁済規定が適用されない場合の効果」
「③」で説明しましたとおり、貸金業者には「みなし弁済規定」が適用されず、「利息制限法」の制限利率を超える利息を受け取ることができないことが裁判上において明らかにされました。
では、借主が貸金業者からの請求に従い「利息制限法」の制限利率を超過して利息を支払っていた場合には、その後、どのような効果が生じるのでしょうか。
この点については「①」でも説明しましたように、利息制限法の制限利率を超過している利息部分の返済金については元本に充当されることになります。
この点について具体例をあげて説明しますと、例えば、貸金業者から年率28%の契約で金50万円を1年間借り入れた場合、利息制限法によれば元本10万円以上100万円未満の場合には年率18%まで利率が制限されますから、貸金業者は借主との間で契約した年率28%の利息を受け取ることは許されず、年率18%までの利息しか受け取ることができなくなります。
よって、借主は、1年後に、借入金額50万円の18%の金額である金9万円の利息だけを貸金業者に支払えばよく、契約年率の28%の金額である金14万円の利息を貸金業者に支払う必要はありません。
そして、仮に借主が貸金業者からの請求に従い約定利息金額の金14万円を支払ってしまった場合には、その内の金9万円だけが利息への返済金となり、残りの金5万円は元本への返済金ということになります。
つまり、その金14万円の返済後の貸金業者に対する借入金額の残高は「金45万円の元本のみ」ということになるのです。
そして、その後も、金45万円(元本)に年率18%の利息だけを借主は貸金業者に対して支払えばよいということになるのです。(当然のことながら、借主がその金14万円の返済をした際、貸金業者は「みなし弁済規定」を根拠にその返済金の全ては利息の支払いであるから借入金額の残高は金50万円(元本)であると主張して、その後も金50万円に年率28%の利息を加算して借主側に請求をし続けますが、法律上、借主はその貸金業者からの請求を拒否することができるということなっているのです。)
なお、この「利息制限法の制限利率を超過している利息部分の返済金については元本に充当される。」ということから、以下のことが明らかになります。
消費者金融会社及びクレジット会社は概ね「年率28%前後」の利息で営業をしており、他方で利息制限法の制限利率は「年率18%前後」であり、借主は年間にして「年率10%前後」以上もの利息金を多めに支払っていることになる。
その多めに支払っている利息金は随時元本に充当されることになるから、その分、借入金額の残高(元本)は随時下がっていることになる。
長期間に渡って消費者金融会社及びクレジット会社に対して返済を行っている借主の場合には、大幅に借入金額の残高(元本)が下がっていることになり、場合によっては、借入金額の残高(元本)が無くなっており「完済」していることもありうることになる。
(なお、事案(取引の内容や約定利率)にもよりますが、計算上においては、貸金業者との間で取引が絶え間なく「約6年間」継続している場合には、借金の全額を「完済」している可能性が高いことになります。
「具体例」を挙げますと、仮に年率29.2%の約定利率で金50万円を借り入れて、その後、毎月、「約定の利息分」だけを返済し続けた場合(つまり、元本は1 円も支払わずに利息だけの返済を続けた場合)には「5年5ヶ月間」で借金の全額が「完済」されていることになります。)
※ 以上にあげた「具体例」については「計算書」を参照(クリック)してみてください。
さらに長期間に渡って貸金業者に対して返済を行っている借主の場合には、借入金額の残高(元本)が無くなっており既に「完済」しているにもかかわらず返済を続けていることになり、払い過ぎたお金が発生するということになる。
(これが、いわゆる「過払い金」というものです。この「過払い金」については、「③」で紹介した最高裁判所の判決を含めて、全国各地の裁判所が「借主は貸金業者に対して過払い金の返還を請求することができる。」と判断する判決を相次いで下しています。)
まとめ
以上の「①~④」までに説明してきたことを簡単にまとめますと、貸金業者には「みなし弁済規定」が適用されず「グレーゾー ン金利」(利息制限法の制限利率を超過する利息)は認められないことから、借主が消費者金融会社やクレジット会社に対して返済をしなけらばならない本当の 借金の金額は、消費者金融会社やクレジット会社から請求されている金額(「約定利率」によって計算された金額)ではなく、取引を開始した当初から借主が返 済をし続けてきた「グレーゾーン金利」への返済金を元本に充当して再計算された金額であるということになるのです。
そして、長期間に渡って貸金業者に対して返済を行っている借主の場合には、借入金額の残高(元本)が無くなって「完済」していることもあり、それどころか、 既に「完済」しているにもかかわらず返済を続けている場合には「過払い金」が発生しており、その「過払い金」については貸金業者から取り返すことができる ということになるのです。
※なお、HPを御覧になっている方が「裁判上、貸金業者に「グレーゾーン金利」が認められていないこと。」及び「依頼者が専門家と一緒になって努力をすれば、貸金業者から「過払い金」が回収できること。」の理解を深めるために、当事務所の代表司法書士が借主の代理人として「訴訟」を提起して貸金業者から「過払い金」を回収した事件の「判決文」等を以下のとおりにご紹介しておきます。
3. 過払い金の返還請求を成功させるための条件
専門家が過払い金の返還請求の依頼があると、依頼者が貸金業者に対して有する正確な過払い金の金額(依頼者と貸金業者との間の取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した金額)を明らかにするために、貸金業者に対して依頼者に関する取引履歴(依頼者と貸金業者との間の取引経過の記録)を開示するように請求します。
ところが、貸金業者は、顧客側から取引履歴の開示を求められた場合、「利息制限法の制限利率(年率18%前後)」を超える利息を顧客から受領してきた事実を隠蔽しようと、取引当初からの取引履歴を開示しなかったり、また、借入額や返済額を改ざんした取引履歴を開示してくることが少なくありません。
よって、依頼者が貸金業者に対して有する正確な過払い金の金額を明らかにするためには、貸金業者から開示されてきた取引履歴を鵜呑みにすることはできず、その内容の正確性を検証する必要があることになります。
また、過払い金の返還請求については、貸金業者が徹底抗戦をしてきた場合には、訴訟を提起して決着を付けることになります。そして、裁判に勝つためには、借主側が原則として①貸金業者との間での取引の経過に関する事実を正確に主張し、②その事実を証明する証拠を裁判所に提出しなければなりません。
以上のことから、過払い金の返還請求を成功させるためには、依頼者に以下の2点をやってもらうことになります。
- ①各貸金業者との間の取引経過に関する事実(「取引開始日」「借入額」及び「返済額」などの事実)を具体的に思い出すこと。
- ②各貸金業者との間の取引経過に関する事実を証明する証拠(「契約書」「領収書」など)を探すこと。
このように依頼者が貸金業者との間での取引経過に関する事実を明らかにする努力を行うことは、過払い金の返還請求を成功させるための重要な条件の一つといえるでしょう。
但し、平成17年7月19日に「貸金業者が保存してある全ての取引履歴を開示しない対応は違法であり不法行為を構成する。」と明確に判示し、全取引履歴を開示しなかった貸金業者に「慰謝料」の支払いを命じる「最高裁判所判決」が下されました。 (なお、この「最高裁判所判決」は、「最高裁判所のHPの裁判例情報」により参照できます。)
この「最高裁判所判決」が下されて以降は貸金業者の対応も変わってきており、顧客側から取引履歴の開示を求められた場合、すぐに取引当初からの正確な取引履歴を開示してくる貸金業者も増えてきています。
他方で、一部の貸金業者はこの「最高裁判所判決」を無視して全取引履歴の開示を拒否し続けるているところもあり、一部の貸金業者に対する過払い金の返還請求の場合には、依然として必ずしも油断はできない状況が続いています。
4. 過払い金の返還請求の手続の流れ・期間
過払い金の返還請求については、貸金業者が抵抗することもなく取引当初からの正確な取引履歴(依頼者と貸金業者との間の取引経過の記録)を速やかに開示してきた場合には、特段の事情がない限り、返還する金額について「交渉」を重ねて和解をすることによって決着が付けられるのが通常です。
他方で、貸金業者が取引当初からの正確な取引履歴を開示してこなかったり、返還する金額について折り合いが合わず「交渉」が決裂した場合には、「訴訟」を提起して決着を付けることになります。
従って、過払い金の返還請求について決着が付くまでに要する期間については、貸金業者が徹底抗戦をしてきた場合には「訴訟」を提起して請求をすることになり、また、「訴訟」が長引くこともありえますから、必ずしも一概に判断することはできません。
但し、貸金業者が抵抗することもなく順調に手続が進んだ場合には、依頼がなされてから「約2ヶ月間」で和解が成立して手続が終了することもあります。
① 受任通知の発送・取引履歴の開示請求
貸金業者に対して「借金の整理及び過払い金の返還請求の依頼を受けたこと」及び「今後、依頼者に対して直接的な取立行為を厳に慎むこと」を口頭及び書面で通知して、貸金業者の依頼者に対する取立行為を中止させる。
同時に、貸金業者に対して依頼者に関する取引履歴(依頼者と貸金業者との間の取引の経過の記録)を開示するように請求する。
② 正確な過払金の金額の確定
貸金業者から開示されてきた取引履歴の内容が正確であるかを検証し、正確なものと認められる場合には、依頼者と貸金業者との間の取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して元本充当計算を行い、正確な過払い金の金額を確定させる。
③ 和解交渉の開始または訴訟提起
確定させた過払い金の金額を貸金業者に対して請求し、過払い金の返還方法(返還される金額、返還される時期等)について「交渉」を開始する。
貸金業者が取引当初からの正確な取引履歴を開示してこなかったり、返還する金額について折り合いが合わず「交渉」が決裂した場合には「訴訟」を提起する。
返還する金額について折り合いが合った場合、貸金業者との間で和解契約書を作成する。
「訴訟」提起後も交渉が決裂した場合には、裁判所から「判決」が下されることによって決着が付けられる。
⑤ 過払金の返還
「勝訴」又は「和解」が成立した場合、依頼者側の指定する銀行口座に過払い金が貸金業者から振込送金される。
5. 過払い金の返還請求の現状
(1)取引履歴の開示状況について
専門家が過払い金の返還請求の依頼があると、依頼者が貸金業者に対して有する正確な過払い金の金額(依頼者と貸金業者との間の取引の経過を利息制限法の制限利率に引き直して算出した金額)を明らかにするために、貸金業者に対して依頼者に関する取引履歴(依頼者と貸金業者との間の取引経過の記録)を開示するように請求します。
ところが、これまでの貸金業者は、顧客側から取引履歴の開示を求められた場合、「利息制限法の制限利率(年率18%前後)」を超える利息を顧客から受領してきた事実を隠蔽しようと、取引当初からの取引履歴を開示しなかったり、また、借入額や返済額を改ざんした取引履歴を開示してくることが少なくありませんでした。
このため、貸金業者に取引当初からの正確な取引履歴を開示させるためには、監督官庁に「行政指導」や「行政処分」の要請をしたり、裁判所に「訴訟」を提起したりするなど、相当の時間と労力を費やすことを覚悟しなければなりませんでした。
しかし、平成17年7月19日に「貸金業者が保存してある全ての取引履歴を開示しない対応は違法であり不法行為を構成する。」と明確に判示し、全取引履歴を開示しなかった貸金業者に「慰謝料」の支払いを命じる「最高裁判所判決」が下されました。 (なお、この「最高裁判所判決」は、「最高裁判所のHPの裁判例情報」により参照できます。)
この「最高裁判所判決」が下されて以降は貸金業者の対応も変わってきており、顧客側から取引履歴の開示を求められた場合、すぐに取引当初からの正確な取引履歴を開示してくる貸金業者も増えてきています。
よって、現在は、以前と比べて遙かに依頼者が貸金業者に対して有する正確な過払い金の金額を明らかにすることができやすくなってきています。
(但し、一部の貸金業者は前記の「最高裁判所判決」を無視して全取引履歴の開示を拒否し続けるているところもあり、一部の貸金業者に対する過払い金の返還請求の場合には、依然として油断はできない状況が続いています。)
(2)過払い金の回収率について
貸金業者から正確な取引履歴が開示されたことなどによって正確な過払い金の金額を明らかにできたとしても、そのことから直ちに過払い金を絶対に回収できることになるわけではありません。
専門家は、正確な過払い金の金額が明らかとなった場合には、まずは、貸金業者に対して口頭又は書面を通して過払い金の返還を請求します。
次に、貸金業者が過払い金の返還を拒否した場合には、「訴訟」を提起することによって過払い金の返還を請求します。
そして、「訴訟」提起後においても貸金業者が徹底抗戦をしてきた場合には「判決」によって決着を図ることになります。
さらには、日本の裁判は「判決」が1回下されることによって完全に決着が付くわけでは必ずしもなく、当事者が徹底的に争った場合には、控訴審の「判決」を経て、上告審で最終的な裁判が下されることによって完全に決着が付くことになります。
つまり、貸金業者が過払い金の返還について徹底抗戦をしてきた場合には、相当な時間と労力を消耗させられることになります。
そして、過払い金の返還については、貸金業者にみなし弁済規定の適用を否定する最高裁判所判決が相次いで下されたことから認められやすくなってきていますが、他方で、「消滅時効」の問題があるなど「訴訟」を提起しても100%の確率で認められるわけではありません。
(そもそも「訴訟」というものは勝負の世界であって、絶対に勝てる保証はどこにもなく、油断したら確実に負けることになります。)
また、当然のことながら、貸金業者は過払い金の返還に簡単に応じるわけではなく、とくに、正確な過払金の金額の100%の返還にはなかなか応じてこないのが通常です。
以上のことから、過払い金の返還請求については、総合的な観点から「費用対効果」を考慮し、お互いが譲歩して返還する金額に折り合いを付けて和解をすることによって決着を付けるのが通常です。
では、過払い金の返還請求の「現場」では、通常、どの程度まで返還する金額を譲歩・減額して和解をしているのでしょうか。
この点について結論を先に述べますと、一概にいうことができず、専門家によって大きく異なることになります。
1円でも多く過払い金を回収しようと時間と労力を惜しまずに粘り強く貸金業者と交渉をしたり、また、「訴訟」を提起することに全く躊躇をせずに「判決」によって解決を図ろうと努力をする専門家もいれば、他方で、安易に妥協して低額な金額で和解をすることによって決着を付けようとする専門家がいるのも事実です。
また、各貸金業者は、各専門家の「能力」や「実績」を見ながら、各専門家ごとに対応を変えて返還する金額を決めたりしているのが現実です。
従って、貸金業者から正確な取引履歴が開示されたことなどによって正確な過払い金の金額を明らかにできたとしても、実際に過払い金がどのくらい回収できるかについては、依頼した専門家の「熱意」や「能力」や「実績」などによって大きく異なってきます。 (もちろん、説明するまでもないことですが、依頼者自身のやる気と努力によっても大きく異なってきます。)
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